Dr.小池の世直し奮戦記 実は2倍だった消費税負担 庶民の暮らしに“無関心”な政府
二〇一六年の年明けとともに、通常国会が始まりました。私は一月一八、一九日の参議院予算委員会で、来年四月に迫った消費税一〇%への増税を中止するよう、安倍晋三首相に迫りました。この質問で、一〇%への増税による家計負担増が、これまでの政府の説明の二倍近くになることが判明し、マスコミも大きく取り上げました。
国会質問で答弁不能に
一九日の質問で、麻生太郎財務大臣が消費税を一〇%に引き上げた場合、食料品や新聞の税率を八%に据え置いても、「一世帯当たり年間六万二〇〇〇円の負担増」になると答弁したのです。これまでの説明は「三万五〇〇〇円」でしたから、二倍に近い衝撃的な数字です。
ことの発端は「軽減税率」です。一八日の質問で安倍首相は「(軽減税率による)一人当たりの軽減額は四八〇〇円」と答弁しました。四八〇〇円に日本の人口一億二〇〇〇万人をかけても、六〇〇〇億円余りにしかなりません。政府はこれまで軽減税率による減収額を「一兆円」と説明してきたのです。
私は不思議に思い、「差額の四〇〇〇億円はいったいどこに行ったのですか」と質問しました。すると、誰も答えられなくなってしまったのです。
不正確な調査
政府は一九日、改めて「一兆円は、財務省の消費税収をもとに試算した」と説明。「四八〇〇円は総務省の家計調査をもとに試算したもの」で、「家計調査は消費支出の六割程度しか把握できないので不正確であり、税収から計算した一兆円の方が正しい」と言い出したのです。
しかし、政府が今まで消費税の負担を示す際には、いつも「家計調査」を使っていました。それが不正確だったとするなら、今までの答弁の数字はすべて不正確だったことになります。
そこで、「本当の負担増は、正確にはいくらになるのか」と質問したところ、今までの二倍近い数字を示したというわけです。
貧困を加速する消費税増税
一世帯当たりの負担増が「三万五〇〇〇円」なのか、それとも「六万二〇〇〇円」なのかでは、暮らしへの重みはまるで違います。それなのに数字をごまかしてきたのですから、あまりに無責任と言わざるをえません。「一円でも安いものを」と必死に節約している国民の暮らしの実態にたいして、安倍政権があまりに無関心であることも、明らかになったと思います。
日本の“貧困率”(所得が一二二万円=国民の平均値の半分=に満たない人の比率)は年々上昇を続け、ついに一六・三%になりました。六人に一人が貧困ライン以下の暮らしを送っています。母子家庭などひとり親世帯の貧困率は五〇%を超え、世界の先進国で最悪です。
ところが、私が安倍首相に「日本が世界有数の貧困大国になったという認識はあるか」と聞いたところ、「一人あたりのGDPでいえば日本はかなり裕福な国」という、とんちんかんな答弁が返ってきました。GDPが大きいにもかかわらず、貧困世帯が増え続けていることが問題なのに、まったくそうした視点がないのでしょうか。
貧困が広がっている時に消費税を一〇%に増税するなど、断じて許せません。増税ストップの声を政府に突きつけましょう。
いつでも元気 2016.3 No.293
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