Dr.小池の世直し奮戦記 沖縄の深い怒りと悲しみ 政府は党派超えた民意に向き合え
沖縄県の翁長雄志知事が、前知事がおこなった名護市辺野古の米軍基地建設のための「埋め立て承認」を取り消しました。沖縄では昨年来、名護市長選挙、県知事選挙、総選挙で「新基地建設反対」の圧倒的な民意が示されており、翁長知事の決断は揺るぎない沖縄の民意にこたえるものです。
無条件撤去こそ解決策
政府はあの手この手で抵抗していますが、地元紙「沖縄タイムス」などの世論調査では、知事の決断を「支持する」と答えた人は実に七九%にのぼります。政府が辺野古新基地建設を「普天間基地の危険性除去の唯一の解決策」とする限り、解決の道はありません。
そもそも普天間基地は、米軍が住民を収容所に入れている間に土地を強奪し、市街地のど真ん中に造った基地です。それが六〇年たって「世界で一番危険になったから、代わりの基地を差し出せ」という。あまりにも理不尽です。
しかも、辺野古の海を埋め立てて新たに造る基地は、普天間とは比べ物にならないほど巨大な最新鋭基地です。普天間では一本だった滑走路が二本に。オスプレイ一〇〇機を配備でき、強襲揚陸艦も接岸できる。そして耐用年数は二〇〇年。こんなものを断じて認めるわけにいきません。
新基地建設を断念し、基地のたらい回しをやめ、普天間の無条件撤去に向けてアメリカと本腰を入れた交渉にとりくむ。それこそが、唯一の解決策でしょう。
「負担軽減」はゴマカシ
政府は「沖縄の負担軽減」という言葉を繰り返し使います。しかし、これほど県民の感情を逆なでする言い方はありません。私は一〇月半ばに沖縄を訪問して、そのことを痛感しました。
米側は嘉手納飛行場以南の基地を返還するといいますが、その時期はいつになるのかわかりません。国土面積のわずか〇・六%の沖縄に七三・八%の米軍基地が集中していますが、返還されても七三・一%と〇・七%しか減りません。全部、県内移設だからです。
山口県の岩国基地に「移した」はずの空中給油機(KC─130)も、普天間基地で私の目の前を飛んでいました。東村高江では、オスプレイパッド(着陸帯)の建設が強行されています。
実際におこなわれていることは、負担の「軽減」どころか「押しつけ」の連続です。県民を愚弄するやり方に怒りが広がっているのです。
「イデオロギーよりアイデンティティー」
沖縄滞在中に「対馬丸記念館」も訪問しました。
対馬丸事件とは、学童疎開船対馬丸が一九四四年に米軍に撃沈され、八〇〇人近い学童含む一五〇〇人が犠牲になった事件です。正確な数はいまだ不明。記念館の壁いっぱいに掲げられた乗船者の顔写真に、胸が締めつけられる思いでした。
翁長知事は、新基地建設反対を「イデオロギーよりアイデンティティー」だと語っています。その根底にあるのは、沖縄の人々の中に党派を超えて深く広がる怒りと悲しみなのでしょう。日米両政府はそのことを肝に銘じるべきです。
いつでも元気 2015.12 No.290
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