• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

ニュース・プレスリリース

第41期第1回評議員会方針

2014年8月24日 全日本民医連第41期第1回評議員会

はじめに

I.総会後の情勢と私たちの運動
〈1〉民意からも国際世論からも孤立する安倍政権の大暴走と拡大する矛盾
〈2〉原発ゼロの日本をめざして
〈3〉辺野古新基地建設を許さず、建白書の実現へ向けたオール沖縄、日本のたたかいを
〈4〉新自由主義的な国づくりに対抗し、新しい福祉国家を展望する共同の前進を

II.総会後のとりくみの特徴
〈1〉総会方針学習月間
〈2〉民医連の「提言」シンポ
〈3〉地域包括ケア時代における民医連病院の変革と創造
〈4〉診療報酬改定の特徴と消費税引き上げの影響、経営課題
〈5〉原発事故被災者への支援など
〈6〉国際活動

III.第2回評議員会へ向け、学習を強め、総会方針の実践を
〈1〉憲法、平和と人権を守り抜く運動をさらに前進させよう
〈2〉学習を強め、職員・共同組織に依拠し、運動の飛躍を
〈3〉飛躍が求められる4つの課題の前進へ向けて

おわりに

はじめに

 今、戦争か平和か、戦後最大の岐路を迎えています。七月一日、安倍内閣は閣議決定で憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認し、日本を戦争する国に 作り変えようと暴走しています。一方、世論は、集団的自衛権行使容認反対、解釈改憲反対が多数を占め、原発再稼働、消費税増税など主要な政策でも反対が上 回り、平和と民主主義を守る国民の大きなエネルギーが示されています。四月二四日には、四人の呼びかけ人によるヒューマンチェーンがとりくまれ、全国から 五〇〇〇人を超える医療・介護の仲間が国会を取り囲み、医療・介護総合法案を廃案まであと一歩のところまで追い込みました。
 総会方針は、「『激突』の時代とは、戦争をしようとする国に向かってすすもうとしている厳しさはあるが、国民は望んでおらず、力を寄せ集めることができ るなら前進の可能性を持った時代である」と提起しました。いのちの平等を何より大切にする民医連の存在意義が輝く時です。すべての県連、法人、事業所が時 代の流れに確信を持ち、架け橋の役割を発揮し、平和と人権の輝く時代を切り開いていきましょう。
 第四一回定期総会から半年、新入医師一二七人をはじめ、新しい仲間が民医連に参加し、また全国で総会方針の学習が活発にすすんでいます。第一回評議員会 の目的は、(1)総会後の半年間の活動を振り返り、情勢認識を共有し、総会方針の具体化へ向け、第二回評議員会までの重点課題を確認すること、(2)二〇 一四年上半期決算の承認、(3)四一期選挙管理委員の承認です。

I.総会後の情勢と私たちの運動

 総会から六カ月、暴走政治と国民との矛盾は拡大し、安倍政権打倒の運動が、広がりはじめています。安倍内閣のめざす、日本を戦争する国にし、平和と人 権、いのちをないがしろにする社会にするのか、多くの国民が望むいのちの平等を守り抜き、平和と人権の輝く国にするのか、この対決がより鮮明になった半年 間でした。
 原発再稼働・輸出、消費税増税、社会保障解体など国民多数が反対している政策を強行してきた安倍内閣の支持率は、集団的自衛権行使容認の閣議決定後、急 落しています。不支持率は第二次安倍内閣発足以来、初めて四〇%台に上昇しました。国会を解散して信を問う必要があるとの回答は六八%に及んでいます(七 月一~二日 共同通信)。滋賀県知事選挙では、自民・公明が推した与党候補が敗北に追い込まれました。
 私たちは、「いのち」、「憲法」、「綱領」の三つのものさしで時代を見つめ、歴史を前にすすめていきます。

〈1〉民意からも国際世論からも孤立する安倍政権の大暴走と拡大する矛盾

(1)戦争する国づくりへ向かう大暴走と国民の反撃

 安倍内閣は、集団的自衛権行使容認を柱とした「閣議決定」を行い、海外で戦争する国へ道をひらく歴史的暴挙に出ました。「武力行使をしてはならない」 「戦闘地域へ行ってはならない」という歯止めをなくし、自衛隊を戦地に派兵すること、憲法九条のもとで許されない集団的自衛権を自国を守るための措置と し、無制限に海外で武力行使が可能となる重大な内容です。しかも、国会にも国民にもはからず、一片の閣議決定で強行したやり方は許されません。
 自衛隊は、憲法九条の「海外で武力行使はしてはならない」という歯止めのもと、六〇年間、他国の人をひとりも殺さず、ひとりの戦死者も出すことはありま せんでした。今、安倍内閣は先人が世界とアジア、日本で何千万人が殺された戦争の反省の上に守ってきた戦後日本の在り方を否定し、「殺し、殺される」国に し、軍国主義復活の道を暴走しています。世界一危険な欠陥機オスプレイの飛行訓練の全国展開が強行されました。アメリカと一体に他国を侵略するためのもの です。戦争する国づくりを許さない運動と一体に全機の国外撤去を求めます。
 安倍内閣の暴走は世界から孤立し、とりわけアジアの国々からは「戦争国家宣言、侵略DNA復活」など強い批判と不安が拡大しています。国内でも憲法九条 を改定すべきでないとの世論は、過半数を超え、改定すべきとの世論を大きく引き離しています。国会周辺は連日、抗議のデモと行動が続いています。特に一〇 代、二〇代の若者がツイッター、フェイスブックで行動を知り、駆けつけています。札幌で行われた閣議決定に抗議する行動では、沿道から次々と中高生など若 者が参加し四〇〇人で出発したパレードは一〇〇〇人にふくれあがりました。憲法と平和の危機に多くの著名人や弁護士、保守層の方々が公然と怒りの声をあげ ています。
 「震災と原子力災害でいのちを救ってくれた自衛隊員が海外で武力行使することは容認できない」(福島県南相馬市議会)など二〇〇を超える地方議会で自民 党会派も加わり、集団的自衛権行使容認に対して反対、慎重にとの意見書が上げられています。
 閣議決定は強行されましたが、憲法を超えられるものではありません。また、自衛隊法、PKO法など一〇数本の法律を変えなければ自衛隊を動かすことはで きません。これからの運動にかかっています。「海外で戦争する国づくりを許さない」の一点で空前の国民的共同を全国津々浦々で起こし、安倍内閣の企みを打 ち砕きましょう。

(2)医療・介護・社会保障をはじめとした主要な政策での国民との矛盾

 国民を医療から追い出し、介護を奪う医療・介護総合法が多くの国民の反対の声を無視し、自民党、公明党の与党単独で強行成立しました。異なる一九もの法 案をひとくくりにし、短時間の審議で強行するなど断じて許されるものではありません。全日本民医連から参議院厚生労働委員会公聴会に山田智副会長が公述人 参加し、法案への強い反対の意見を述べました。二〇一四年度診療報酬改定はマイナス改定であるとともに医療・介護総合法の先取りで、すでに入院、在宅難民 を各地で生み出しています。二〇二五年医療・介護提供体制改革の本格的な一歩、医療機関再編の新たな枠組みづくりが開始されました。来春に向けて、国保都 道府県単位化を軸としたさらなる医療費抑制の仕組みづくり、混合診療など営利化・成長産業化など社会保障制度改革推進法とプログラム法にもとづく社会保障 解体攻撃が一層強まろうとしています。医療・介護総合法の具体化として一〇月から病床機能報告制度の運用開始、地域医療ビジョンのガイドラインの検討が始 まり、医療提供体制の再編成が開始されます。
hyogi141120_01  六月二四日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂二〇一四、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一四」は、「医療・介護を中心に社会保障給付の自然増も含 めて聖域なく見直す」としました。そして、二〇一五年通常国会に入院時食事療養・生活療養費の負担増、大病院外来定額自己負担の法案提出を打ちだす一方 で、法人税を来年度から三五%から二〇%台に引下げることを明記。大企業への大減税で失われる税収は、たとえば六%の引き下げで三兆円にもなります。ま た、成長戦略は軍需産業を位置づけていることも重大です。六月一三日の規制改革会議も国会に混合診療を拡大する「患者申し出療養」創設のための法案提出を 決め、保険外併用療養制度の大幅な拡大、評価療養・選定療養の対象の拡大とあわせ、大幅な患者負担増と保険給付の縮小、国民皆保険制度の空洞化が狙われて います。これらは、二〇二五年へ向け、二〇一八年の診療報酬・介護報酬同時改定を節とした社会保障解体、非営利ホールディングカンパニーによる医療提供体 制の確立など医療・介護の市場化の狙いと一体であり、TPP参加によりいっそう強まります。
 こうした攻撃は、混合診療解禁に対してオール医療界の反対、地方自治体、患者・利用者からの強い反対が表明されているように、一直線にすすむものではあ りません。人権としての医療、介護を守り、営利化を許さず、国民医療を守れの運動を巻き起こしていきましょう。

(3)いっそう広がる格差と貧困、すすまない被災地の復興

 二〇一三年の子どもの貧困率は、過去最悪の一六・三%に至ったことが厚生労働省の調査で明らかになりました。生活が大変苦しい、やや苦しいと答えた世帯 は、子どものいる世帯で六五・九%、母子世帯で八四・八%となっています。老老介護の世帯は五一・二%と過半数を超え過去最高となりました。国民所得は連 続してマイナスとなり、生活保護受給人数は過去最高を更新、国保料減額世帯は過去最多の四割に及ぶなど、国民生活にはいっそうの格差と貧困が拡大していま す。その上、四月から消費税が八%に引き上げられ、八兆円の負担増が暮らしを直撃しています。増税は社会保障のためとの大キャンペーンを張り、国家あげて ウソをつき貧困に苦しむ国民生活をささえる社会保障を破壊しています。来年の消費税一〇%への引き上げは中止しかありません。
 二〇一三年国保等経済的事由による手遅れ死亡事例調査では、二二県から五六の事例が寄せられましたが、六五歳以下の働く年齢層で無保険もしくは資格証明 書が五六%、無職か非正規雇用が八〇%など、格差と貧困の拡大がいのちを奪う現実が突きつけられました。調査開始から八年、把握されただけで三九〇人が経 済的理由で十分な医療を受けられずいのちを落としています。生活保護の引き下げが強行される中、長野県民医連が独自にとりくんだ生活保護実態調査では、二 二四人の調査協力が得られ、三二%が食事一日二回、三六%が入浴週二回など本当に厳しい実態が報告されています。
 大震災から三年を過ぎた今も、二五万人が避難生活を余儀なくされ、うち二三万四〇〇〇人が仮設住宅等で暮らさざるを得ない現実は看過できません。長引く 仮設住宅での生活は被災者の心身に影響を与え、被災地での震災関連自殺も増えています。沿岸部では被災の程度による経済格差が生まれ、子どもの学力格差や 健康格差が危惧されています。これが、安倍政権の“自己責任による社会保障”の実態です。憲法二五条のある日本で許されるものではありません。
 医療・介護総合法案廃止へ向け、全国の介護の仲間が調査した要支援一・二の利用者の訪問介護、通所介護利用の実態調査などを国会議員と世論に届け、国会 の審議を変えてきました。私たちには、現場から事実を調査し、まとめ、告発し、世論を動かす力があります。一層力を発揮し、格差と貧困の拡大を許さない運 動を広げていきましょう。
 長崎・五島ふれあい診療所が無料低額診療事業の届け出を行い、受理される見込みです。診療所は「生保及び減免者の延数が取扱い患者の総延数の一〇%以 上」という無低診事業実施の基準とされている数には届いていませんが、生活保護実態調査などを示すとともに「困っている人に平等に医療をというのが私たち の立場」と民医連綱領を説明し受理されています。北海道の東神楽町では、共同組織と地域の運動の力で全国で五番目の保険薬局負担金への助成制度を実現しま した。各地でさらに挑戦をすすめましょう。

〈2〉原発ゼロの日本をめざして

 原発はエネルギーの問題でも経済の問題でもなく、人間のいのちの問題です。五月二一日、大飯原発再稼働差し止め訴訟で福井地裁は、国民の運動が反映した 画期的判決を下しました。主な点は、(1)ひとりひとりが生存し生活し幸福を追求する権利である人格権が、すべての法において最高の価値を持ち、原発の稼 働は経済活動に過ぎず、憲法上は人格権より劣位におかれること、(2)いったん事故が発生すると拡大していくという他の技術と違った「原子力発電に内在す る本質的な危険」、(3)原発の停止が国富の喪失につながるという推進派の主張に対して「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富で あり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」と指摘、(4)原発から二五〇キロメートル圏内に居住する人との関係で原発を稼働しては ならないとしました。
 日本で原発から二五〇キロメートル圏内に入らないのは北海道の一部と沖縄だけで、国内の原発はすべて再稼働してはならないということです。こうした判決 を引き出したのは、何より原告が福島の現実を法廷で伝え続けてきたこと、三・一一以後の国民的なねばり強い運動の力です。
 全国で一基の原発も動いていない夏を迎えました。しかも電力の予備率は三%を超え、エネルギーは足りています。脱原発の世論は八〇%を下回りません。原 発ゼロの日本を実現していくために、再稼働を許さず、エネルギー政策の転換をめざす国民運動をすすめていきましょう。
 アメリカでは避難計画が作れない原発は廃炉が常識です。しかし日本は、避難計画すら立たない川内原発の再稼働を優先させようとしており、論外です。再稼働が予定されているすべての地域で共同の運動をすすめましょう。

〈3〉辺野古新基地建設を許さず、建白書の実現へ向けたオール沖縄、日本のたたかいを

 昨年一二月の沖縄県知事による辺野古新基地建設の容認を受け、安倍政権は七月一日から辺野古での工事を強行しています。しかし五月五日付の世論調査でも 沖縄県民の七三・六%が普天間基地の県内移設に反対しており、民意は新基地建設ノーであり、ゆるぎはありません。今回の民意を押し潰すやり方は、さらに大 きな怒りと抵抗を広げるだけです。一月に再選された稲嶺進名護市長は、アメリカを訪問し、ニューヨークとワシントンでこの民意を伝えてきました。安倍内閣 の新基地建設強行は、「戦争する国づくり」と一体の暴走です。絶対に認めるわけにはいきません。
 六月の第三二次全日本民医連辺野古支援・連帯行動は、五五人の参加で成功しました。猛暑の中、一日中、辺野古の浜に座り込んだ青年職員は、「海上に出 て、辺野古の海が破壊され、人殺しの基地になると想像したら、怒り、悲しみ、言葉にならない感情が湧き出た。県に帰ると沖縄が遠くなるが、いつも目を向け て、おじい、おばあに教わったあきらめない心を大切に支援していきたい」「雨の日も、寒い日も座り込み、その大変さを知ることができて本当によかった。遠 くてできないではなく、遠くてもできる支援を考えていく」と決意を述べました。
 一一月一六日投票の沖縄県知事選挙で建白書(※)の立場に立つ知事を実現することは、辺野古の新基地建設中止の最大の力です。また、暴走する安倍内閣を 挫折させ、潮目を変えることができる全国的な課題です。沖縄民医連からの支援要請を受け、理事会は全力支援を決定しました。力を尽くしてとりくみをすすめ ていきます。知事選挙勝利へ向け、九月に予定されている名護市議会議員選挙で稲嶺進市長をささえる与党の過半数維持は特別に重要です。稲嶺市長をささえる 人々とともに辺野古新基地を許さない運動を広げていきます。

※「建白書」…沖縄の県議会各会派代表、全四一市町村長・議長らが押印した上で名前を連ね、安倍首相にあてて手渡した(二〇一三年一月二八日)。(1)オスプレイの配備、および配備計画の撤回、(2)米軍普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設の断念を求める内容

〈4〉新自由主義的な国づくりに対抗し、新しい福祉国家を展望する共同の前進を

 韓国セウォル号事件が示したものは、非正規の船長、外部委託された救助員など、安全より市場優先、利益優先の社会の姿です。TPP交渉は、緊迫した状況 が続き、国内ではJA解体の流れなどが作られようとしています。非営利の組織と運動が国際的にもますます重要となっています。一部の自治体では国保や戸籍 を扱う業務の外部委託、地域包括ケア計画作成の全面外部委託など自治体業務のアウトソーシングなど、株式会社化ともとれる事態がすすんでいます。いのちよ り経済・儲けを優先する新自由主義的な国、自治体づくりの流れを許さない運動がますます大切です。国内外の団体、個人との共同を積極的にすすめていきま す。
 人権、いのちが大切にされるもうひとつの日本を提起した「人権としての医療・介護保障めざす提言」が輝くときです。学習を強め、シンポジウム、他団体との懇談を全県で実施し、展望を広げましよう。

II.総会後のとりくみの特徴

〈1〉総会方針学習月間

 総会方針の定着へ向けて学習・教育月間にとりくんできました。六月末現在で、三〇三一回、三万三二二五人の参加で学習会がすすめられています。時代認識を共有し、民医連の果たしている役割への確信、全国の仲間の様々な実践への共感が学習の中で広がっています。
 総会方針DVDは総会方針実践の具体的なとりくみが数多く紹介されており、方針を現場に引き寄せて考える絶好の教材としても好評です。 『看護10ス トーリーズ』は七〇〇〇部を超える普及となっています。これらを大いに活用し、民医連への確信を広げていきましょう。

〈2〉民医連の「提言」シンポ

 六月二一日に「人権としての医療・介護保障めざす提言」をテーマにシンポジウムを開催しました。全国から日本弁護士連合会、医学生など外部の参加者も含 め三〇〇人で成功しました。直前に成立した医療・介護総合法が患者、利用者、医療介護従事者の希望を奪うものであり、私たちはそれに対抗し人権としての医 療・介護を実現するもうひとつの道があることを示し、参加者から大きな共感が寄せられました。健康格差社会の診断と処方、内部留保の活用は可能、人として の尊厳を守る社会を、との三人のシンポジストの訴えは提言と響きあいました。

〈3〉地域包括ケア時代における民医連病院の変革と創造

 地域包括ケア時代における民医連病院の変革と創造をテーマに「診療報酬改定病院・院長検討会」を開催し、院長・総師長・事務長など病院のトップ幹部が四二県連から三二七人参加しました。
 今回の院長検討会で深められた主な課題は、次の三点です。第一は、中長期計画を策定するにあたってトップがリーダーシップを発揮することです。今年四月 単月で民医連病院の大幅な経営悪化は、従来の延長線上では打開できないことを示しています。第二は、自院における地域包括ケア病棟(病床)の位置づけを明 確にし、質の高い高齢者の医療やケアの内容を深めることです。第三は、実践を通して制度の矛盾を明らかにし改善を求めていく運動をすすめることです。

〈4〉診療報酬改定の特徴と消費税引き上げの影響、経営課題

 今回の診療報酬改定は、病棟機能の再編とあわせ、在宅復帰率の設定拡大、DPCの見直し、人頭割につながる地域包括診療料、医療の質評価、保険外し、皆 保険制度の破壊などの特徴があります。また、薬価改定の財源を診療報酬の財源に充ててきたルールが破られました。改定の全体像をよく分析して、「とりあえ ず算定できるものを取る」という従来型の対応から抜け出すことが必要です。
 二〇一三年度経営実態調査(医科法人)では、六三%の法人が経営悪化、経常利益は前年から六四億円減少、税引前純利益で七七億円減少し▲一二億円と深刻 な状況となりました。小泉構造改革で〇二年から四回連続の診療報酬マイナス改定で打撃を受けた〇八年度の経営水準まで落ち込んでいます。短期指標、中期指 標該当法人が増加、事業キャッシュフローは〇八年度水準まで低下しています。病院も三年間黒字を維持してきましたが、二〇一三年度は▲四一億円(利益率▲ 一・〇%)となりました。診療所もこれまでのような利益が確保できない状況になっています。
 さらにモニター三〇法人二〇一四年度の第一四半期の経営は、七割の法人が赤字、七割が経営悪化、費用の伸びが収益の伸びを上回っています。モニター病院 の六五%が赤字で、入院件数の減少、病床稼働率が低下していること等が要因です。DPC病院の経営悪化が顕著です。近接診を除く無床診療所も経常利益率 一・四%で前期(三・六%)から大きく低下しました。
 消費税増税の影響を受け、控除対象外消費税の額は前年の一・五倍になり、事業収益に占める割合は、前年の一・四%から二・二%にまで増加しています。
 県連は経営リスクを抱えている法人を迅速に把握し、時期を逸せず対策を講じましょう。
 一〇月から病床機能報告制度が始まります。地域になくてはならない存在として経営を守り抜き、民医連運動の真価が試される重大な局面にあります。徹底的 な経営分析を組織的・集団的に行い、中長期の戦略に基づく経営計画の確立など、総会方針実践をスピード感を持ってすすめていきましょう。
 民医連のみならず全国の中小病院の経営悪化は、地域医療を危機に陥れます。また、控除対象外消費税が医療経営の悪化、経営破綻に拍車をかけることは明ら かです。幅広い団体との共同で、診療報酬の再改定、医療・介護の改悪、増税をストップさせるたたかいを強めましょう。
 県連・地協の経営委員会の役割は極めて重要です。「県連及び地協の経営委員会ミニマム」を徹底し、全日本民医連とともに知恵を出し合い、必要な援助や全国的な経験や教訓を活かし、総力をあげます。
 当面、地域の医療機関を訪問し、地域医療を守るためにそれぞれの役割は何かなど、一緒に議論していくこと、県連・地協全体としてどのような戦略を描いて いくのか、民医連病院をどのように展開していくのかを、しっかり議論していくこと、「医療・介護サービスの提供体制改革のための新たな財政支援制度」新基 金に対して、県連・法人で要求を出していくことなどにとりくみます。
 病院リニューアル等の大型投資にあたり、今まで以上にしっかりした経営見通しが必要であることを確認してきました。総会後、いくつかの県連、法人の要請 で建設計画について懇談、検討会を行いました。投資限度額を超えた計画、建設後の経営見通しが不十分なまま、建設が実行ないし計画されている法人も見受け られました。現状でも厳しい経営状況の中での計画であるのに加えて、建設コストの高騰や消費税増税など、今までにも増して困難をともなう情勢です。中長期 の医療構想とそれに基づく経営計画の作成は当然ですが、経営力量を踏まえた実現可能な計画を職員、共同組織の力を集め練り上げることが必要です。医療構想 では医師の確保と養成計画をしっかり医師集団と検討し、合意を作り上げることを重視しましょう。また、県連・地協の総力をあげたとりくみとなるよう、十分 な論議や知恵の結集が求められます。
 全日本民医連高知医療生協経営対策委員会を設置以降、一年半のとりくみを通じ、高知医療生協は、当面の資金危機を脱するとともに大幅な経営改善を実現し ました。全日本民医連第六回理事会で対策委員会のまとめを受け、任務終了を確認しました。
 高知医療生協は二〇一四年二月理事会で「経営再建に向けたとりくみの教訓と課題」を確認し、六月の高知医療生協総代会では中長期経営計画を決定し、その具体化をすすめています。
 高知医療生協の直面した危機とその打開のとりくみには、他の加盟事業所・法人にも共通する教訓が含まれています。経営環境が厳しい中、経営危機と再建の教訓を学び、生かしていきましょう。

〈5〉原発事故被災者への支援など

 双葉町から委託された三九歳以下の甲状腺エコー検診は、二〇一四年度も継続して契約を結びました。さらに浪江町からの要請も受け、委託契約を結びまし た。原発事故発生以来、放射能汚染被害と正面から向き合い、被害者の立場で実践している民医連への信頼と期待の広がりです。
 日本原水協の要請に基づき、水爆実験が行われたロンゲラップ島の住民健診に協力してきました。

〈6〉国際活動

 国連経済社会理事会(ECOSOC)のNGO協議資格取得の申請を五月三〇日に行い、受理されました。審査を経て二〇一五年七月には結果が出ます。積極的に国連の場で提言が行えるよう運動を蓄積しています。
 また、HPH国際カンファレンスがバルセロナで開催され、民医連加盟事業所は過去最高の参加者と演題の発表(二九人、二〇演題)を行い、住民主体のヘルスプロモーションを発信し国際交流を深めました。

III.第2回評議員会へ向け、学習を強め、総会方針の実践を

 第二回評議員会までの半年間は、平和と人権、憲法を巡り、安倍政権との激突の中、国民の運動が大きく高揚する時期になります。また一〇月に病床区分の届 出などが実施されます。二〇一五年四月からの要支援者サービスの一部を市町村へ移行、特養入所者制限など医療・介護総合法の具体化があります。中長期の事 業所の展望、計画の策定も本格的な討議と判断が必要となります。
 運動を強め、平和憲法のもと、戦争しない国の歴史を守り抜くという、四一期総会方針の実践の上で大切な時期です。幹部が学習と運動の先頭に立ち、全職員、共同組織の力を引き出していきましょう。

〈1〉憲法、平和と人権を守り抜く運動をさらに前進させよう

(1)平和憲法を守り、活かすことを最重点課題に

 平和憲法を守り、活かす、「地域」から平和と人権を守る大運動をすべての県連で最重点課題としてとりくみます。
 県連会長、事務局長が責任者となるなど幹部が先頭に立って運動をすすめましょう。憲法を守る運動は、ゆるぎない改憲反対の多数派が作れるかどうかにか かっています。この時期、全職員・共同組織の大学習運動を通じて憲法に不動の確信を持つ集団に成長しましょう。「民医連憲法手帳」の積極的な活用を呼び掛 けます。九条の会をすべての職場、共同組織の班、共同組織のある地域に結成しましょう。「九条の会・医療者の会」を活性化させ、医療者の立場から憲法を守 り、知らせ、活かすために、呼びかけや共同、アピールをすすめていきます。九月末には臨時国会が召集される見込みです。九条の会が呼びかけた全国統一行動 月間(一〇月)を全力で成功させ、運動を大きく広げましょう。
 来年は、被爆七〇年の節目です。二〇一四年原水爆禁止世界大会は一五〇〇人を超える民医連関係者も参加し成功しました。ひき続き被爆の実相を学び、核兵器廃絶の世論を広げていきましょう。
 今、世界の圧倒的多くの国々が核兵器廃絶の実現をめざしている中、核の傘にしがみつく日本政府の態度を何としても変えさせなくてはなりません。二〇一五 年のNPT再検討会議を核廃絶への画期として成功させましょう。三〇〇万の署名目標を達成し、前回を大きく上回る代表を国連へ送りましょう。
 新たな原爆症認定訴訟(ノーモア・ヒバクシャ訴訟)の支援、ノーモア・ミナマタ第二次国賠訴訟を支える水俣病検診を全国の力で成功させましょう。

(2)福島支援連帯、原発ゼロの運動に大きくとりくみ、再稼働を許さない世論を広げよう

 全国から福島県民医連への医師等の支援は三年目を迎え、現地への激励となっています。原発事故被害者の健康と生活を守るとりくみ、全国のすべての避難 者、被災者に寄り添う活動を各県でさらに強めていきます。双葉町、浪江町の委託検診、福島県民医連への連帯・支援、原発労働者の健康管理、相談活動、現状 把握、様々なとりくみを通じて被ばく問題に関わる医師の養成を意識的に追求していきます。マスコミが意図して報道しなくなる中、放置すれば民医連の中でも 原発事故に対する意識は薄れます。鍵は、福島の現実を私たちが見続ける事です。東京民医連、沖縄民医連等が現地に赴き意識的に現地を自分の目でみること、 そして発信することを継続しています。全日本民医連として福島県民医連と協力して、現地視察、職員・共同組織、被害者との交流・連帯などにとりくみます。
 原発再稼働を許さないたたかいは、正念場を迎えます。すべての原発の再稼働、新設を許さない運動をしっかりすすめていきましょう。大飯原発の福井地裁判決を学び、確信と運動を広げる力としていきましょう。

(3)医療・介護総合法の実施中止、人権が保障される医療・介護・社会保障を守り抜く運動を地域から強めよう

 医療・介護総合法の成立によって医療難民、介護難民など深刻な事態が広がることが予測されます。改悪内容をしっかり学び、入院給食の負担増など患者負担 のさらなる引き上げや、介護保険の改悪がこのまま実施されれば利用者・家族にどのような困難が生じるか、具体的な事例に基づいて明らかにし発信し、地域に 知らせ、制度改悪の実施中止を求める声を大きく広げていきましょう。二〇一四年国保等経済的事由による手遅れ死亡事例調査は全県集約をめざし準備しましょ う。
 第一回評議員会を受けて、県連社保委員長会議と介護分野のたたかいを意思統一する全国会議を開催し、全面的な方針を意思統一します。評議員会では運動の 基本方向を提起します。医療費抑制の仕組みづくりである国保の都道府県化や病床機能報告制度、地域医療ビジョン作成、「改正」介護保険法を具体的に推進す るのは自治体であり、国へ向けた運動とともに、自治体や地域が「主戦場」になります。県連を軸に、これまでの連携をさらに広げ、他の医療・介護の団体と共 同し「介護保険の改悪実施中止を求める〇〇県民の会」、「医療・介護の充実を求める〇○府民の会」なども立ち上げ運動を強めていきましょう。
 医療・介護総合法と診療報酬の改定では、史上初めて病棟の看護基準が実質的に引き下げられ、看護体制が医療提供体制縮小の道具とされました。断じて許さ れません。慢性期でも、高度急性期でも国の責任で看護体制を手厚くすることが必要です。国民のいのちを守るため、看護を良くする国民的な運動があらためて 求められます。
 介護の分野では、「改正」介護保険法施行へ向けて、政省令の策定や予算編成など具体的な準備が政府の手ですすめられています。すでに厚労省のモデル事業 を受けている自治体の中には、「地域ケア会議」という仕組みを通して要支援者に介護認定を受けさせない「水際作戦」を推進するなど制度改悪の内容を先行実 施しているところもあります。「改正」法の実施中止を重ねて求めるとともに、参院厚労委員会での「附帯決議」などを足がかりにしながら、国に対して、制度 の適切な運用や改善、必要な財政保障を求めるなど、利用者・高齢者の実態に即した内容に変えさせるとりくみが必要です。
 来春に向けて、各自治体の第六期介護保険事業計画の策定が本格化します。政府は通常の三カ年の計画にとどめずに、二〇二五年に向けた「地域包括ケア計 画」として策定するように指導しています。地域社保協とも連携しながら、地域の実態や要求を計画に反映するよう自治体に求めていきます。
 介護報酬二〇一五年改定、介護職員の処遇改善が今後の介護ウエーブの大きなテーマとなります。介護報酬の大幅な引き上げとともに、介護報酬の改定を待つことなく、国の責任による介護職員の処遇改善策を求めます。
 七月から、改悪生活保護法が施行されました。保護申請手続きの厳格化、親族の扶養義務の強化など生存権を侵害する仕組みが盛り込まれています。運動の広 がりの中、厚生労働省は、「運用はこれまでと変わらない」と述べました。しかし大阪や香川など少なくない自治体で資産調査の強要や打ち切りなど懸念された 水際作戦が発生していることは重大です。水際作戦を許さない現場の運動を強め、生活保護法制度を拡充する運動をすすめていきます。
 医療の市場化をめざす混合診療解禁の流れに対し、国民皆保険制度を守り抜く一点での医療界の共同を広げていきます。医療機関にも患者にも消費税の負担をかけない運動を強めていきます。
 一〇月二三日には、医団連、中央社保協、四・二四ヒューマンチェーン呼びかけ人の方々などが呼びかけ「いのちを守る・憲法をいかす国民大集会」が予定されています。過去にない規模で成功させましょう。
 一〇~一一月にとりくむ今年の共同組織拡大強化月間は特別に重要です。たたかう月間として成功させましよう。月間目標は、構成員八万、『いつでも元気』は五〇〇〇部の純増です。
 来春には統一地方選挙が実施されます。安倍政権の暴走ストップと無差別平等の地域包括ケア、まちづくりの課題を大きな争点に押しあげ、いのちと人権が輝く地域づくりの要求実現のため全力でたたかいましょう。

(4)「人権としての医療・介護保障めざす提言」を力に

 「提言」は、四〇〇〇部を超える普及となり、山梨などいくつかの県ではすでにシンポジウムが具体化されています。岡山では県の訪問看護ステーション協議会の全会員に配布し、好評です。普及を強めるため、簡易版を一万部作成しました。
 「提言」を携え、地域の様ざまな団体・個人との懇談や、提言をもとに「いのちの格差を是正するシンポジウム」を行い、「必要充足」「応能負担」の原則を 貫いた「人権としての医療・介護保障」を求める声と共同を地域に大きく広げていきましょう。

〈2〉学習を強め、職員・共同組織に依拠し、運動の飛躍を

 「激突の時代、今こそしっかり民医連の運動を伝え、命の平等、弱者を増やさない、弱者に気づいたら手を差し伸べる、たくさんの壁にぶち当たることもある だろう、しかし、人を守るためには、誰もが安心して暮らせる地域包括ケアをすすめていくべきだ(二年目職員)」、総会方針を学んだ職員、共同組織からこん な感想が寄せられています。第二回評議員会までの重点課題の前提として、すべての職員、共同組織の仲間が現在の情勢認識を共有し、時代を見る視点をつちか う事、民医連らしさにこだわった医療、介護の実践、職員養成など今後二年間の方針を全職員、共同組織のものとすることが力を発揮していくうえでなにより大 切であり、総会方針学習月間の実践はそれを教えています。月間の到達を県連、法人、事業所で分析し、諸課題の前進と一体にすすめていきましょう。
 大阪のある病院では集団的自衛権行使容認の閣議決定に際し、職員に緊急アンケートを取りました。三分の二は「反対」、しかし三分の一は「分からない」と 回答し、二〇代では四割が分からないと回答しています。疑問は、学び合うことで解決し、運動の力になります。放置すれば、組織は後退します。「総会方 針」、「提言」、「憲法」の学習を全職員、共同組織の規模でとりくみ、飛躍を作り出していきましょう。

〈3〉飛躍が求められる4つの課題の前進へ向けて

 今期、大きな「飛躍」が求められる課題として、(1)民医連運動を担う医師の確保と養成、(2)四〇期に開催された全国会議や交流集会が明らかにした情 勢の変化や教訓を力にして、法人、事業所が中長期の事業・経営計画を検討、作成すること、(3)共同組織の今日的な発展方向を探求し、新しい担い手づくり や職員参加の画期とすること、(4)人間的な発達ができる組織にふさわしく幹部養成、中間管理職、職員の養成をはかる、の四つを提起しました。
 これらは、今後、民医連運動を前進させるうえで、先送りできるものではなく、四一期の折り返しとなる第二回評議員会までにどのように前進させていくの か、画期となるような時期にしなくてはなりません。総会方針を受け、全国で積極的な討議と実践が始まっています。評議員会で、全国的な到達点や前進面を確 認しつつ、四課題実践のために何をなすべきか、克服していく課題は何か、討議しましょう。

(1)民医連運動を担う医師の確保と養成

 二〇一四年四月に初期研修を開始した医師は、全日本民医連全体で一二七人の到達でした。また初期研修を終了し後期研修を全日本民医連で開始した医師は八 四人となりました。引き続き全職員や共同組織の力を結集し、民医連での初期研修の魅力を伝え二〇一五年卒医師確保に全力を尽くすと共に、マッチング結果を 受けてこの間のとりくみを振り返って教訓を導き、二〇一六年卒医学生への働きかけを早急に強めましょう。
 民医連の医師の確保と養成をすすめる基本路線は、無差別・平等の活動をすすめる民医連の医療を担い創造する医師を養成することであり、すべての医師が互 いに協力し合って、地域やそれぞれの働く場面で求められる役割に応えてチームの一員として進化(深化)していくことです。国の医療・介護政策(市場化と地 域包括ケア、新専門医制度など)が変化していく中で、地域社会から求められる医師像とは何か、貧困と格差、超高齢社会に立ち向かって健康権実現をめざす民 医連の医療を創造、発展させる医師養成とは何か、このことを議論し、交流する場として医師養成集会を一一月に開催します。
 二〇一七年から開始される「新専門医制度」については、上記の基本路線を堅持しつつ、民医連の医師養成を更に飛躍させていく見地で臨みます。この制度 は、乱立した学会認定医、専門医を整理し、専門医の役割や質を国民により明確に示すという点では、一定の合理性を持っています。また医学が専門分化する中 で、「総合診療専門医」を一九番目の基本領域に位置付けたことは評価できるものです。しかし、安上がりな制度の「ゲートキーパー」として総合診療医を利用 したり、専門医定数の設定による医療提供体制の官僚的統制など、現在国がすすめる効率一辺倒の医療・介護推進の梃子に利用される危険も大いに孕んでいま す。
 民医連は、このような「新専門医制度」への批判や改善提案をすすめます。私たちがめざす医療にとって必要な専門医資格については、その取得・維持が可能 になるような具体的とりくみを「オール民医連」の力ですすめます。

(2)中長期の事業計画の検討・作成

 二〇二五年へ向け本格的に構想を検討、策定していく時期になります。国民の願いである無差別平等の「地域包括ケア」の実現、対応だけでなく、それぞれの 事業所がどのようにその機能を発揮していくのか問われています。無差別平等の医療をめざし、その役目を担っていくという決意をしっかり固めながら全職員、 共同組織を巻き込んで討議をすすめていきましょう。自治体による第六期介護保険事業計画策定(地域包括ケア計画)がすすめられる時期です。法人の中長期計 画を練り上げる上で、自治体との関係づくりを今まで以上に重視し、地域要求を踏まえた、時機を逸しない検討・対応が求められます。「新しい総合事業」への 対応や見守り・助け合いなどの生活支援サービスの強化は検討すべき重要なテーマであり、共同組織と連携しながらとりくみます。県内各市町村の動向を把握 し、情報提供や必要な課題を各法人に提起する県連の役割が重要です。
 「介護の市場化・営利化」がすすむ中、住まいづくりや保険外サービスの展開を軸にした営利事業者の参入が目立っています。「非営利・協同」の事業体とし ての存在意義、役割を発揮し、市場化・営利化によって切り捨てられる高齢者を守り、あるべき介護のあり方を実践的に地域に示していくことが必要です。利用 者の確保・拡大が困難になっている実態もあり、地域に選ばれる事業所となれるよう、法人・事業所の強みを生かした事業活動を追求します。法的整備を含め、 介護報酬改定に向けた準備をすすめます。

(3)共同組織のとりくみ

 地域から共同を広げ、安心して住み続けられるまちづくりをすすめるためには、共同組織の量・質ともの発展が不可欠であり、共同組織の今日的な発展方向を 探求し、新しい担い手づくりや職員の積極的な参加ができる画期をつくることなど提起してきました。「健康権」「健康の社会的決定要因」などの学習も始まっ ています。
 誰もが健康で安心して住み続けられる地域をつくるため、現在の豊かな活動の上に共同組織が無差別・平等の「地域包括ケア」実現をめざし、ヘルスプロモー ション活動や地域のささえ合いとしての役割を担いながら、地域の中で、連携や共同を広げ、活動に参加する人を増やし、量質ともに「飛躍」すること。職員は そうした視点を共同組織の仲間と共有し、一体となって実践や運動をすすめることなどを提起しました。これらは、二〇二五年を展望した事業所の中長期計画づ くりとも不可分のものです。
 九月七~八日に兵庫で開催される第一二回全日本民医連共同組織活動交流集会は、そうした活動を持ち寄り、交流し、学び合う機会です。多くの職員が参加し、画期を作り出していく機会としましょう。

(4)職員養成

 総会方針は、民医連運動の総合的で創造的な発展を推進するトップ幹部の育成、綱領を身につけ実践する職員養成と職場づくり、「自己責任」論を乗り越え、 青年職員の自信とやりがいを育てようと提起してきました。福岡では、事務幹部養成を独自に企画し、地協への参加も呼びかけ、とりくみが始まっています。長 野では生活保護実態調査を職員の自己責任論を乗り越える教育として位置づけるなど総会方針の実践が始まっています。全日本民医連としてトップ管理者研修、 第一二回看護介護活動研究交流集会など成功させ、民医連らしい職員養成をすすめていきます。第三六回全国青年ジャンボリー実行委員会がスタートします。す べての県連、地協でとりくみを強め成功させていきましょう。県連事務局長研修会を開催します。

おわりに

 「沖縄戦の実相に触れるたびに、戦争というのはこれほど残忍で、これほど汚辱にまみれたものはないと思うのです。この生々しい体験のまえではいかなる人 でも戦争を肯定し、美化することはできないはずです。戦争を起こすのは確かに人間です。しかし、それ以上に戦争を許さない努力をできるのも私たち人間では ないでしょうか。戦後このかた、私たちはあらゆる戦争を憎み、平和の島を建設せねばと思いつづけてきました。これがあまりにも大き過ぎた代償を払って得た 譲ることのできない、私たちの信条なのです」―。沖縄県平和祈念資料館展示の結びの言葉です。
 戦争はいのちの対極、医療は平和でなければ、成り立ちません。いのちの平等を貫いてきた民医連の存在意義を存分に発揮し、戦争しない国の歴史を守り抜 き、人権の輝く日本へ大きく踏み出す半年間としましょう。