三重/津生協病院 地域医療の担い手は地域で育てる
津生協病院のある津市は、三重県中部、伊勢平野のほぼ中心部に位置します。古く平安京のころから重要な港・安濃津として栄え、港という意味の「津」と呼ばれるようになったと言われています。
約500年前の東海地震と津波で港は崩壊し、当時の面影はありません。津生協病院は、そんな港があった場所と言われる地域、海水浴や潮干狩りでにぎわう 御殿場海岸やヨットハーバーのある地域にあります。
地域の人々の運動によって誕生
1953年の台風13号によって市内中心部全域が浸水する被害を 受け、このときの支援の医師や看護師の献身的な救護活動に接した地域の人々により、「津にも民主診療所をつくろう」の運動がすすめられ、1955年に柳山 診療所が開所されました。1979年に病院化、現在の津生協病院が誕生しました。
現在は149床の急性期一般病棟・障害者病棟・医療療養病棟のケアミックス型病院として、プライマリーケアを中心に1次・2次医療を行っています。地域 の要求に応え、診療報酬化される以前から在宅医療や訪問看護にとりくんできた精神は今も引き継がれ、健診から救急医療・慢性疾患管理・手術・リハビリテー ション・療養的ケア・在宅医療・介護事業まで、地域の人々が「安心して暮らし続けられる」ことをめざし、切れ目のない医療にとりくんでいます。
地域のネットワークのなかで
病院化当初から、「地域医療の担い手は地域で育てる」ことにこだ わり、診療所医療も担える総合的力量とサブスペシャリティーをもつ医師養成にとりくんできました。基幹型臨床研修病院としても、自院での診療科・専門指導 医の少なさを逆手に、県下・近隣の基幹型・協力型臨床研修病院のネットワークのなかで、「地域の病院群ネットワークで医師を育てる」プログラムとし、研修 医の班会参加など生協組織の力も組み込んだ、独自のカリキュラムを築いています。
また、中小病院と診療所群をフィールドとした後期研修・家庭医プログラムにもとりくみ始めました。ここでも「地域で医師を育てる」として、皮膚科・耳鼻 咽喉科・小児科などの地域開業医に医療活動・専門性を学ぶプログラムを組み込んでいます。
毎年初期研修医の受け入れは1人ですが、指導医と初期研修医・後期研修医が集団となり、さまざまなとりくみに参加するなかで、地域の医療福祉生協活動・病院内が活気づいてきました。
地域の医療福祉生協活動、医療・介護事業、そして地域の病院・開業医のネットワークのなかで、いつまでも「地域医療の担い手は地域で育てる」を貫いていきたいと頑張っています。
(津生協病院 事務長 蒲 信一)
「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2014年9月号.No.505より