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ニュース・プレスリリース

第38期第2回評議員会決定

2009年2月22日
全日本民医連第38期第2回評議員会

はじめに

 「大企業・財界のための経済・政治」か「国民の幸せのための経済・政治」かが、鋭く問われています。年末から年明けにかけて実施された、職を奪わ れた人たちを支援する「年越し派遣村」の動きは、確実に政府や自治体を動かしつつあります。連帯と団結の力です。民医連の医師、看護師をはじめ多くの仲間 が自主的にこの活動に参加しました。
 一月六日には、国民大運動実行委員会として舛添厚生労働大臣に直接会い、緊急対策を申し入れました。「民主団体、民医連ここにあり」ともいうべき素早い行動が、年初から始まっています。
 国民生活のあらゆる分野で大きな「ひずみ」が生じ、時代を映す鏡ともいえる二〇〇八年度流行語大賞に「後期高齢者」「蟹工船」「名ばかり管理職」、二〇〇八年を表す漢字に「変」が選ばれました。二〇〇九年は「変革の年」にしなければなりません。
 私たち民医連は、「いのちは平等」の立場から、一つひとつの事例をていねいに取り上げ、地域の医療・介護の実態を調査し、日本社会に対して告発するな ど、「事実」にもとづく多くの「問題提起」をし、患者・利用者・地域住民の権利を守る活動、実践を行ってきました。国民的な怒りがわき上がり、医師増員を はじめ、参議院での後期高齢者医療制度廃止法案の可決など、具体的な成果を生み出し、「政治を動かすことができる」と実感した一年でした。民医連の平和・ 医療・介護の活動が社会から大きな注目を集めました。
 新自由主義思想にもとづく経済政策が世界を支配し、「金儲け、株主のためなら何でもあり」という資本主義の本質が剥(む)き出しに発現された結果、百年 に一度という経済危機が発生し、その先頭を走っていたアメリカ経済が破綻し、日本をはじめ、世界各国に波及しています。
 日本の大企業はトヨタ、キャノンなどが率先して、改悪された労働者派遣法を最大限に活用し、「首切り」「雇い止め」を強行し、この数カ月だけでも一〇万人近くの労働者が職と住む場所を失い、生きるか死ぬかというギリギリの状況に追い込まれています。
 一方、大企業は自動車会社だけで、二〇〇八年四月からわずか半年間で、二五三八億円もの内部留保を増やしています。トヨタは二〇〇八年九月末、現在一 三・八兆円もの内部留保があります。自分たちだけ生きのびようとする大企業を許すわけにはいきません。マスコミも大企業や経団連批判を行い、連日、労働者 や国民の運動を伝えています。
 大企業の身勝手さを容認し、財政支援までして助けようとする自民・公明政治と国民生活との間には深刻な「矛盾」が生まれています。二〇〇九年度の政府予算案では、二〇〇八年度の三倍に当たる六八九億円もの在日米軍再編予算を計上しました。
 税金の使い方がまったく逆方向です。
 いま私たちは、「歴史の転換の時期」を迎えています。
 「首切りを許さない」と大企業を相手に労働組合を結成し、立ち上がった人、残業代を求めて裁判を起こして勝利した管理職、「姥(うば)捨て山に行けというのか」と立ち上がった高齢者、多くの人びとが当たり前の「権利」を守るために立ち上がっています。
 「全日本民医連の医療・介護再生プラン案」には、新しい福祉国家づくりの処方せんとして共感が大きく広がっています。民医連綱領改定議論は、あらためてこうした時代に「民医連は何をめざすのか」を確認し合い、内外に宣言する機会です。
 「平和と人権」「いのちの平等」を大切にする「もう一つの日本」を創り出すために奮闘しましょう。
 第二回評議員会は、期の中間点にあたり、総会方針に照らし、(1)到達点を確認し情勢認識を一致させること、(2)今後一年間のすすむべき方向、とりわ け第三回評議員会までの重点を確認し合う場となります。また、(3)予算・決算も確定させる評議員会です。多くの仲間の中で積極的な議論をお願い致しま す。

Ⅰ章 第38期中間点~この1年間を振り返って

1.総会方針がめざしたもの

 私たちはこの一年間、第三八回総会方針で打ち出した「あらゆる活動を共同組織とともに」「困難はたたかいと連帯・団結の力で切り開く」「“まっす ぐな人権意識”を貫き、患者・利用者を守るとともに、医療・社会保障の民主的変革のために地域から発信する」「再生プラン案を持って『共同』を広げ、提言 を行う」ことに全力を注いできました。

2.運動で前進した大きな成果!

 この運動は、前年対六九三人増員で、過去最高の医学部定員増(八四八六人定員)、二〇〇九年度介護報酬の三%引き上げ、中学生以下の子どもへの資格証明書発行中止など多くの具体的な成果となって現れました。私たちの提起や運動が「発火点」の一つとなりました。
 医療・介護再生を求めるドクターウエーブ、ナースウエーブ、介護ウエーブの運動は、全国各地で多くの医療機関、医師会をはじめ看護協会など職能団体、介 護事業所、自治会などにかつてない規模で「連帯と共同」を広げました。近年、これほど大きな広がりを経験したことはありません。東京・足立区では、ほかの 民間病院と共同して「看護師確保と定着に関する要望書」を提出し、区と交渉しています。兵庫をはじめ、各地で対県交渉などがすすめられました。長野では六 〇〇人を超える介護シンポが開催されました。民医連内外の共同で介護署名は四〇万筆を超えました。
 「10・19集会」には、前「連合」会長や全国医師連盟代表など幅広い人びとが、思想・信条や立場の違いを超えて「医療を守れ、『いのち』を守れ」の一 致点で参加し、民医連参加者は昨年より八〇〇人増えました。医師は全体で二五〇人を超えました。富山では医師会などと共同して六〇〇人以上の大集会が開催 されました。本田宏医師(済生会栗橋病院副院長)らが呼びかけた医師増員を求める署名は、各地の医師会や大学医局あげてのとりくみとして広がるところもで てきており、また日野原重明氏、李啓充氏など著名な医師の賛同を得て一万七四七一筆(二月末)を超えました。北海道、群馬、神奈川、京都、島根、徳島、宮 崎などで、県レベルの署名をすすめる会が結成され、一二月二三日、京都に呼びかけ人が集まり、全国交流集会を開催し、総選挙後の国会に請願署名を提出する ことが決まりました。

3.医療・介護再生プラン案の提案と運動の広がり

 全日本民医連が提案した「医療・介護再生プラン案」「7・19シンポジウム」は、今後の日本の医療や介護、社会保障のあり方や財源を指し示し、医 療界やマスコミはじめ、各界から注目を集め、賛同が広がりました。一二月に近畿地協が京都で開催した「再生プラン」シンポジウムは一〇二四人参加という盛 況でした。全日本民医連・歯科部でも歯科再生プラン案を作成し「保険でよい歯科医療を」の運動をすすめました。
 後期高齢者医療制度廃止を求めて全国でたたかいを広げました。全日本民医連が行った実施後影響調査(約七〇〇〇件)は、マスコミでも大きく報道され「七 割の人の保険料が下がる」とした政府の論拠を打ち砕きました。共同組織、年金者組合の仲間などがとりくんだ不服審査請求は一万人を超えました。こうしたた たかいが参議院で野党共同による廃止法案可決という画期的な成果を生みました。衆議院で可決されればこの悪法が廃止となります。
 民医連「介護一〇〇〇事例調査」は、公的介護から排除されている深刻な事例を告発し、大きな注目を集めマスコミからも取材がきています。
 京都市では、国保料の値下げや介護保険財政の「黒字」取り崩しによる介護保険料引き下げ(二〇〇九年度から)の成果を上げています。運動の高まりととも に、京都市議会補欠選挙で元民医連SW・友の会副会長が当選し、与野党逆転したことで「後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書」が採択され、大きな影響 を与えています。後期高齢者医療制度に対する怒りの中で行われた沖縄県議選挙では、二六年ぶりに与野党が逆転し、後期高齢者医療制度の廃止を求める意見 書、辺(へ)野(の)古(こ)移転計画撤回の意見書を採択させる力になりました。県老人クラブ連合会との共同がすすみました。東京では三月、一二月と二度 にわたり、後期高齢者医療制度廃止を求める大集会が開催されました。東京都・日の出町では二〇〇九年度より、七五歳以上医療費自己負担が無料となります。 社保協や友の会の運動が影響を与えています。

4.各地で受療権を守る無料低額診療事業への挑戦

 第三八回総会で提起した「第二種社会福祉事業」にもとづく無料低額診療事業の届け出は、北海道勤医協、道北勤医協、山形・健友会、庄内医療生協、 尼崎医療生協、大田病院、京都・太子道診療所などで、行政から受理され、さらに多くの法人が取得をめざしています。無料低額診療制度の「必要性は薄らい だ」と、抑制方針をとってきた政府、厚生労働省、自治体に対し、小池晃参議院議員(日本共産党)は民医連が行った厚労省交渉の内容を踏まえ、首相宛質問主 意書を提出、「申請は受理されるべき」との閣議決定を得ました。その後、自治体の対応に変化が生まれています。
 北海道では、無料低額診療事業が地元のマスコミでも大きく報道され、実際に何人も助かったケースが生まれ、注目を集めています。
 一二月一七日付「北海道新聞」読者欄に次のような投書が掲載されました。「無保険の子どもへ救済法が成立した。しかし、病院に行きたくても行けない人が 多いことを考えると、これだけでは物足りない。そんな中、旭川市内にある勤医協一条通病院が…『無料低額診療事業』を始めたという。…この英断は行政の対 応を超えるものであり、真に病める人を思う経営理念の発露として感動した」。北海道勤医協から始まった「いのちを守る」シールを共同組織や事業所、会員宅 に貼り、困難な人びとへメッセージを送る運動が福井、京都、大阪などに広がっています。

5.「生活と労働」の視点で病気をとらえ、“その人らしく”をささえる実践と困難な立場の人たちに寄り添う活動

 東京、大阪、兵庫、静岡など各地で、ホームレス支援・健診やネットカフェ健康調査が開催されています。年末から年始にかけた「年越し派遣村」のと りくみに協力し、相談活動や支援活動も行い、一日で一三〇人を超える受診があるなど、厳しい実態が明らかになっています。解雇され、寮を追い出された人や 職を失い健康を害した人たちが民医連の事業所に助けを求めてくるケースも増えています。「医」「職(食)」「住」が深刻化しています。この問題は緊急課題 であり、大企業に社会的責任を果たさせるとともに、国の責任で緊急に雇用や住居・生活確保の緊急対策を実施させなければなりません。
 二〇〇八年一二月に開催した社保委員長会議では、二万人総対話運動(北海道)、未収金患者総訪問活動(福岡)など各地の先進的なとりくみが報告されまし た。会議では、事業所の中だけにいたのでは本当に困難な状況はわからないこと、あらためて積極的に“地域に打って出る”ことの重要性を確認し合いました。
 原爆症集団訴訟では、判決が出された一三カ所の裁判すべてで、原告が勝利判決を勝ち取りました。判決は、二〇〇八年四月から認定に「新しい審査の基準」 を採用させるという成果を生み出しましたが、これは被爆者に「新たな線引き」を設けるという大きな問題をもっています。提訴から六年が経過し、原告や被爆 者の高齢化がすすんでおり、早期解決を急がねばなりません。
 医師団を中心にアスベスト被害者の掘り起こしや再読影運動、救済のとりくみがすすめられています。東京で「気管支ぜんそく」患者の自己負担無料制度が、 二〇〇八年八月一日から開始されました。東京大気汚染公害裁判原告団や東京民医連などの粘り強い運動の成果で、全都民が対象です。東京の経験に学んで大阪 で始まっている「青空プロジェクト」のように、全国に広げる運動をすすめなければなりません。
 水俣病も熊本、新潟で、新しい動きが生まれています。掘り起し検診など、被害者救済にむけ、重要な年にしなければなりません。薬害肝炎問題は、まだ終 わっていません。C型肝炎患者も血液製剤投与が証明できる一部の患者の救済に留まっています。インターフェロン療法は高額負担が強いられます。すべての薬 害を救済する肝炎対策基本法を制定させる運動への支援を強めなければなりません。
 生活保護老齢加算・母子加算廃止の撤回を求める生存権裁判で東京、広島地裁が不当判決を出しました。民医連の医師による意見書提出、SWによる裁判での 証言が準備されています。「人間の尊厳を問う」たたかいとして全国一〇地裁で行われている裁判の支援を強めなければなりません。

6.医療の安全、質の向上めざした活動

 第三回顧問弁護士・管理者交流集会では、この数年の民医連の医療安全のとりくみが現場際で積極的に受け止められ、大きく前進していることを示しま した。また安全文化の醸成にむけた活動に医師集団が主体的に参加することを呼びかけました。すべての県連、事業所でこれらの問題提起や各地の活動に学び、 日常的に顧問弁護士との協力・協働の関係を強めるなど、生かしていくことが重要です。
 これまでの運動を反映し、「医療事故を取り扱う第三者機関」の設置にむけた国レベルでのとりくみが具体化されつつあります。よりよい制度にむけて全日本民医連は提案を行っています。
 福島県立大野病院事件では、医師を無罪とし、医師の過酷な勤務条件を早急に解決すべきとの画期的な判決が出されました。産科の出産事例を扱う産科医療補 償制度が二〇〇九年一月より開始されます。制度運営や保険料算定について問題をはらんだままのスタートであり、よりよい公的な制度として拡充させる運動が 必要です。
 運動を反映して、ようやく細菌性髄膜炎予防のヒブ(インフルエンザ桿菌b型)ワクチン接種が一二月から始まりました。しかし自己負担が約三万円と高額で あり、一日も早く、定期接種化し、対象乳幼児全員に無料で行えるようにしていくことが重要です。この分野でのとりくみを強めます。

7.民医連の平和活動

 二〇〇八年度の「反核医師の会」で医学生部会が生まれました。奨学生が多く参加しています。医療者九条の会は医師・医学者会員が五〇〇〇人とな り、さらなる飛躍が期待されます。三重をはじめ、各地で自転車平和リレーや九条の会の活動が地道にとりくまれ、広がっています。今年度も多くの民医連、共 同組織の仲間が原水爆禁止世界大会に参加しています。鹿児島民医連からは指導医二人と一年目の研修医全員が、医局や職員にささえられ参加し、「いのちを守 る医師として、平和運動にとりくむ」決意を語り、大きな拍手につつまれました。海難事故の教訓を踏まえ、辺野古支援連帯行動を再開しました。

8.医師・医学生・看護師・看護学生対策

 二〇〇九年度に民医連の病院で初期研修を始める研修医は一六二人となりました。新制度発足以来六年間で一〇六八人を受け入れました。長崎・上戸町 病院が二〇〇九年度より臨床研修病院の許可を受け三人が研修を開始します。フルマッチを続けている病院がある一方で、二〇〇九年度は五六管理型病院中、一 〇病院が受け入れゼロと苦戦しています。年ねん、民医連の後期研修にすすむ割合が低くなっています。民医連の使命や特徴を押し出した後期研修を充実させる 必要があります。
 医学生対策では、長らく受け入れゼロだった東大から、今年七人のマッチング者を生み出しました。全日本民医連として重点大学と位置づけたこと、地元の東 京民医連が中長期的方針を持ち、自主ゼミへの援助やさまざまな民医連企画などの粘り強いとりくみを続けてきたことが教訓です。
 医学生運動との協力共同では、すべての医学部で医学生が医師増員署名にとりくめるよう援助を強めてきました。大阪や鹿児島では新しい県連医師政策が決定 されました。今期の医師委員長会議の提起に応えて、多くの県連で医師政策づくりに向けて論議が始まっています。東海・北陸地協では、地協医師委員長会議で 政策づくりの議論・交流をしました。
 二〇〇九年新卒看護師入職予定者は八一八人(二〇〇八年一一月現在)となり、昨年を上回りました。なお一〇〇〇人以上の受け入れめざして奮闘中です。前 年度のきびしい結果を受け、七月と一二月、二回の受け入れ担当者会議を開催しました。この間、一日看護師体験や看護実習などの受け入れ数を六年ぶりに前年 より伸ばし、再就職セミナーなども開催されました。「看護師獲得競争」といわれる状況の中にあっても、すでに目標を達成した県連も少なからず生まれていま す。
 国民医療研究所と共同で行った民医連病院看護実態調査には、一万一〇〇〇人を超える協力がありました。六割の仲間が民医連での看護のやりがいを感じてい る一方、「まったく、やりがいがない」「あまりない」との回答も三割ありました。そこには、理念に共感するものの、現実とのギャップや人間関係などでの苦 悩が表れています。統計では、民医連の看護師として働き続けるための要因は「やりがい」「人間関係」「疲労解消」の順で、ここに力を入れることで解決の方 向も見えてきます。

9.全国集会での交流

 過去最高の参加者だった歯科学術運動交流集会、第九回看護介護研究交流集会、青年医師交流集会、民医連の医学生のつどい、第六回トップ幹部研修会など、いずれも「民医連の実践の交流」「民医連を学び討論する」機会として成功しています。
 次期の全国青年ジャンボリー(JB)実行委員会が立ち上がり、また各地で地協や県連単位の青年JBが開催されています。これらの交流は、視野を広げ、仲間の連帯を感じる機会となっています。

10.地域の医療、くらしを守る運動と共同組織の役割

 一〇~一一月にとりくんだ共同組織月間では、四万二〇五二の仲間が増え、一一月末で三三三・八万の到達です。『いつでも元気』誌は、五万四七六四 部の到達です。過去最高の到達ですが目標にはいたっていません。県や地協レベルで活発に共同組織活動交流が行われています。一二月には大阪民医連の一五の 医療生協、六つの友の会が集まって共同組織活動交流集会を開催し、六〇〇人がつどいました。各地で、二〇〇九年六月に長崎で開催される第一〇回全国集会に むけて準備が始まっています。
 『共同組織の日常活動』を発刊しました。班会などでの交流、学習、健康づくり、食事会、送迎など地域での助け合い、平和や社会保障を守る運動、出資金や 協同基金、医学生や看護学生、職員を育てる活動、利用委員会など事業所をささえる活動などが多彩にとりくまれています。鳥取医療生協では新病院建設運動の 中で看護師などの紹介運動にとりくみ、二年間で三九人もの入職につなげています。
 公的病院をはじめ、医療崩壊に立ち向かう住民運動に民医連の事業所や共同組織、社保協などが積極的に加わり役割を担っています。

11.教育学習運動のとりくみ

 第三八回総会方針学習運動や社保テキストの学習運動が、旺盛にとりくまれました。DVDを使った活動は、学習会参加者を広げ、民医連方針を身近に 感じる機会と好評です。石川・城北病院の患者に寄りそう医療活動を扱ったドキュメンタリー番組「笑って死ねる病院」が民医連の内外で反響を呼んでいます。 全国各地の事業所、共同組織の中でも上映運動が行われ、民医連の医療や看護について確信を深める機会となっています。「一職場一事例」運動も多くの県連、 事業所でとりくまれています。社保テキスト学習運動は、「権利としての社会保障」を学ぶ機会として力になっています。
 こうした意識的なとりくみは、業務の多忙さや経営困難、体制不足から目の前のことに追われ「展望を見い出せない」「やりがいが見い出せない」などの状況 を乗り越える活動として重要です。民医連で働くことの意味、自らの「立ち位置」を確認する機会です。『民医連医療』誌や非営利・協同研究所の発行の『いの ちとくらし』で「室料差額を考える」紙上討論が行われています。北海道や関東甲信越JBは「民医連綱領」を主題に開催しました。京都や岡山民医連などで 「綱領草案」学習討論運動が始まっています。一二月に行われた共同組織活動交流全国集会連絡会でも活発な議論が行われました。

12.“大きな変化”を生み出した民医連の運動と実践、キラッと輝く「職場づくり」

 総会決定にもとづく活動は、「団結してたたかえば、政治も医療・福祉も変えることができる」こと、患者、地域から信頼され社会的にも注目を集めることで、新たな確信を生んでいます。
 一方、医療・介護の現場は困難さを増しています。目の前の困難を乗り越え、どうしたら、もっと生き生きと業務ができるか、民医連運動に確信を持って働きつづけることができるか、いっそうの工夫と努力が必要です。

13.08年度民医連モニター法人から見えてくる経営困難の拡大

 民医連の経営はこれまでにない厳しさがあります。
 二〇〇八年度モニター法人(二五法人)の第III四半期までの経営結果は、一○~一二月の第3四半期だけでみると経常利益で一五・八億円の黒字となって いますが、通期では▲(マイナス)三・八億円の赤字であり、上半期の大きな赤字を克服するには至らず、前年同期に比べ約二三億円の悪化という結果でした。 第III四半期の改善は、積極的な法人内外の連携による病床利用率向上で入院収益が増加したことをはじめ、第II四半期に比べ保健予防活動収益が約一・五 倍(九・四億円増)になったことなどによるものです。しかし、経営に厳しさは近年にない傾向であり、年度末さらには二〇〇九年度予算作成に当たり、特段の 力を集中しなければなりません。黒字法人は一四カ所、赤字法人は一一カ所で前年同期より四カ所減りました。
 経営悪化の要因には、二〇〇八年度の診療報酬の大幅な引き下げと改悪、健診制度の改悪、受診困難による患者の減少があげられます。また医師・看護師不足 による診療単位や病床縮小、長期投与などによる患者減少、地域の医療事情の変化と医療構想・ポジショニングとのミスマッチ、健診や介護事業などの対応の遅 れなども要因です。「7対1看護」やリハ拡大などのために先行して人員を増やしたことや、定年退職者の増加に伴う退職引き当ての増加などが人件費増加の要 因となっています。物価高騰による経費の増加も目立っています。
 法人専務・県連事務局長・経営委員長会議では、こうした事態を正面から受け止め、経営困難の最大の要因である医療費抑制政策を打ち破り、診療報酬や介護 報酬の大幅な引き上げを求める運動を強めることを確認しました。そして、実務力量を高め資金管理を強めること、経営の事態を直視し「知恵と力」を引き出す こと、県連や地協への結集、全国的連帯を強めることなどを提起しました。
 会議では、組合員による無料個別送迎で受診患者増(岐阜・しずさと診療所)、組合員の紹介運動、年間一〇〇回以上の地域出張健診などで大幅に健診患者増 (収益比一二%)を実現(大阪・かわち野)、医療生協として無料低額診療に挑戦している尼崎医療生協、県連経営委員会の役割発揮(青森)などのすすんだ経 験が出されました。経営再建中の川崎医療生協、徳島健康生協は全国的な支援や内部の奮闘で黒字基調を確保しています。まだまだやれること、やるべきことが たくさんあることを確認し合いました。
 理由のない「赤字・黒字」はありません。「無差別・平等の医療・福祉」をめざしている民医連の事業所、経営を守り抜くことはそれ自体「たたかい」であり、まったなしの課題です。

14.民医連急性期病院の重視すべき今後の課題―「病院訪問調査」などの教訓

 全日本民医連病院委員会は、坂総合病院と立川相互病院の「病院訪問調査」を実施するとともに、「民医連急性期病院(DPC病院)研修交流会」などを開催しました。
 この間のとりくみで明らかになった教訓は、第一は、民医連急性期病院の戦略を確立し、医療構想とポジショニングを内外に示し、成果を上げていくことで す。とくに、急性期医療機能と医療・福祉の地域連携の強化、そして何よりも医師・看護師などの確保と養成が、医療の質の向上や経営改善など急性期病院の戦 略の要です。第二は、民医連急性期病院の黒字化には、材料費などの費用管理と合わせて、手術・病棟部門の安定した収益構造を確保するための入院件数と病床 利用率の設定や、日常的な病床管理と総合的な医療・福祉連携が不可欠です。第三は、現場にわかりやすい経営指標と情報の提供(可視化)などの経営管理や病 院管理・組織を構築していくうえで事務部門の機能・役割が極めて重要であることです。
 いま、急性期病床・医療の集中と再編が急速にすすめられようとしています。「DPC」は、その大きな柱として位置づけられています。今日、DPC病床は 四六万床になり、一般病床の過半数(「10対1」以上の病床数では、九割)を占めています。民医連の病院、とりわけ急性期機能を持った病院では必要な対応 が求められ、民医連DPC病院は、一七対象病院と一六準備病院になっています。「民医連急性期病院(DPC病院)研修交流会」では、この間の実践と議論を 踏まえ、「DPCの二つの側面(医療費抑制の手段と医療の質の向上の手法)」を深くつかみ、参加・改善などの「たたかいと対応」のスタンスを強化していく こと、その際の今日的な「四つの留意点」を提起しています。今回の「問題提起」や先進の実践を学び、法人・病院全体で意思統一すべきで、小手先で対応でき る課題ではありません。
 とくに、(1)自己完結ではなく「切れ目ない」「隙間をつくらない」ために法人内ネットワークの強化を軸に地域連携を大胆にすすめること、(2)県連と しても「DPCの二つの側面」や医師養成政策の課題などについて議論し、県連的な位置づけを明確にすること、(3)DPCのツールを活用した「ベンチマー ク分析」で「四疾患五事業」への挑戦など病院の役割・機能(ポジショニング)を強めること、(4)診療情報管理士の資格を積極的に取得し、適正なコーディ ング力とDPCの分析・活用の水準を引き上げるとともに、各職種の専門性の向上や民医連がこれまで培ってきた民主的集団医療体制を強め、医療の質を向上さ せることなどが重要です。「問題提起」や交流会の到達点を踏まえたとりくみが必要です。

第Ⅱ章 情勢の特徴と展望

 「いのちを奪うような社会」に対し、「いのちを守る」目線とたたかいが重要です。憲法は「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免 れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(前文)と宣言し、戦争放棄と基本的人権は、「現在および将来の国民に対し侵すことのできない永久 の権利」とうたっています。いまほど、憲法の理念を生かした政治が求められているときはありません。憲法九七条が「基本的人権は、人類の多年にわたる自由 獲得の努力の成果」とうたうように「権利は与えられるものではなく、たたかいとるもの」です。
 私たち民医連は、第三八回総会で提起した「民医連綱領改定草案」の中で「わたしたちは、日本国憲法の理念を高く掲げ、すべての国民がひとしく人間として 尊重される社会の実現をめざします。そのため、日本社会の中で、もっとも困難な状態におかれている人びとの命と人権を守る立場から、医療・社会保障の民主 的改革をめざします」と立場を明確に表明しました。この立場から現在起こっている情勢をみることが重要です。

1節 国民生活の現状

1.金融危機を口実にした大「リストラ」を断じて許さない

 トヨタ、いすゞ、日産などの日本のすべての自動車産業、キヤノン、ソニーなど名だたる大企業が短期間の間に一〇万人以上にもおよぶ正規、非正規労 働者の「首切り」「雇い止め」「内定取り消し」を行っています。リーダー企業が先陣をきりました。あまりに身勝手な対応で、企業の社会的責任が鋭く問われ ています。下請け企業にも大きな影響が出ています。非正規労働者はこの一〇年で一・五倍、五七四万人増え、二〇代では全労働者の四五%となっています。正 規労働者も「物」のように扱われ、酷使されているのが現状です。
 一方、日本の大企業は二〇〇七年度、三二兆円を超える莫大な利益を上げ、これはバブル絶頂期の一九九〇年の一・五倍となっています。輸出減による「業績 悪化」といわれますが、上場企業の株主配当は、二〇〇二年度の約二・五兆円から二〇〇七年度の六・七兆円へと二・五倍も増えています。大量解雇の理由は まったくありません。下請け企業への単価切り下げ、発注打ち切り、中小零細企業への貸し渋り、貸しはがしもすすんでおり、「まちの工場」「まちの商店」が 立ちゆかなくなっています。失業、倒産が連鎖的に起こっており、ますます景気が落ち込むという「悪循環」に陥っています。これに対し、政治は大企業を守る ことこそすれ、国民生活を守ることには無策です。

2.地方の暮らし切り捨ての政治の継続

 地方自治体への国庫補助負担金、地方交付金のカットにつぐカットで、地方経済や自治体が疲弊し、自治業務の大幅な後退や、赤字となっている公的病院の廃止・縮小・民営化・集約化が打ち出されており、地域住民にとって「住み続けることが困難」な状況が現出しています。
 地域経済の落ち込みによって、自衛隊員の退職が減り、高校生が自衛隊から内定を取り消されるという事態も生まれています。アメリカの貧困家庭がイラク戦争に駆り出されるのと同じような状況が現出しています。

3.「舵取り不能」「末期」状態の自民・公明政治と社会保障削減路線の固執

 自民党・公明党政治は「舵取り」不能な末期状態にあります。安倍、福田と二代続けて政権を投げ出す異常な事態を生み、麻生政権の支持率は二割を切るという末期状態です。
 一方、政府は、選挙目当ての二兆円の定額給付金とセットで、三年後の消費税増税、法人税減税を明言しました。定額給付金には七割の国民が反対しているに もかかわらず、衆議院で強行採決しました。首相の諮問機関である社会保障国民会議の最終答申は、近い将来、社会保障の財源として消費税を、現在の五%から 三・三%~一一%の幅で引き上げることを提起し、財政制度等審議会は引き続き社会保障費の削減方針を提言しています。社会保障費はこの五年間で三・一兆円 も減らされ、今後二〇一二年まで毎年二二〇〇億円を削減する方針(合計一二・一兆円の削減)は撤回されていません。
 二〇〇九年度政府予算案では引き続き医療・介護サービスの抑制、生活保護母子加算廃止、国民・厚生年金保険料引き上げなどを打ち出しています。
 公的医療費や社会保障費の引き上げの財源に消費税をあてるべきとの意見があります。しかし、消費税は赤ちゃんからお年寄りにも、麻生首相や経団連会長と 同じ負担を強いる課税制度です。これだけの雇用が失われ、現在と将来に対する不安が増大している中で、消費税増税は、いっそうの景気悪化を招くものです。 巨大な無駄使いにメスを入れるべきです。
 定額給付金を社会保障に回させることや思いきって消費税を下げることなど、世界第五位の軍事費、年間二五〇〇億円を超す在日米軍への思いやり予算、ほか の先進国と比べてもあまりにも少ない企業の「税+社会保険料」負担、株の売買益や配当に一〇%しか課税されないなどの不公正税制を正すことこそ求められま す。
 医療事業は消費税非課税となっていますので、経費支出や材料費購入にかかわる消費税は医療機関の負担となっています。年間収益五〇億円規模の中規模病院 で一億円の消費税負担となっています。もしこの状態で増税となれば、日本の多くの医療機関の経営は立ちゆかなくなります。トヨタは年間二八六九億円(二〇 〇六年度)もの消費税を戻してもらっており、まったく消費税を支払っていません。莫大な利益を上げる大企業にではなく、むしろ医療機関にこそ「ゼロ税率」 を適用すべきです。消費税増税の不当性を国民の中に明らかにし、打ち破っていく運動を強めなければなりません。

4.国際的に見て異常な食糧自給率、暮らし破壊、社会不安の増大

 いま世界で毎日三・五万人(年間一〇〇〇万人)の子どもが「餓死」しており、九・六億人もが食糧危機にあえいでいます。日本は自給能力がありなが ら減反政策をとり続け、食糧自給率は三九%に落ち込んでいます。オーストラリアの三二七%、フランス一三六%、ドイツ九七%などと比べてもいかに低い水準 にあるかがわかります。アメリカとの約束で毎年ミニマムアクセス米として七〇万トンもの米を輸入し、「汚染米(事故米)」を大量に持ち込み「事件」を引き 起こしました。輸入食品の汚染問題も「売れれば何でもいい」との考えが生み出したものです。
 世界貿易機関(WTO)は日本にさらなる規制緩和を求めており、日本の食と農業は「危機的状況」にあります。農民連との懇談で農民の健康状態が悪化して おり、保健予防活動への期待が高いことがわかりました。民商共済会のデータでも中小零細業者の暮らし破壊、健康破壊は深刻です。
 「貧困と格差」を拡大する政治の「劣化」状況が、孤独死や介護殺人、自殺、無差別殺人など凶悪犯罪も生んでいます。企業の「偽装」に見られるモラルの低下を招いています。「孤立と分断」「自己責任」政策に対置する「共同と連帯」「社会的責任」運動が重要です。

5.平和を守る運動の広がりと見過ごすことができない改憲・“靖国派”の動き

 自衛隊最高幹部が「過去の戦争は侵略戦争でなく、自衛戦争だった」と論文を書き、更迭されても七〇〇〇万円の退職金を受け取り、その後も繰り返し 同様の発言を行っています。改憲を狙う「靖国派」の動向を端的に示すものです。憲法を守るべき国家公務員が憲法違反の論文を書き、批判されても止めないと いう事態を断じて容認できません。東京都知事や大阪府知事などによる人権を侵害する発言の数かず、ビラ配布活動への不当な判決、日の丸、君が代斉唱の強要 や従わない教師に対する処罰など、戦前のように表現の自由が侵害され、「ものが言えない」社会に逆行する動きも目立っています。また、政府首脳の集団的自 衛権を容認する発言や在日米軍再編強化、日米一体となった軍事訓練の常態化など、憲法を骨抜きにする動きや「解釈改憲」の動きが強まっています。群馬・前 橋では中学生に対し、五日間の自衛隊「職場」体験が実施されており、大問題となっています。沖縄では演習による山火事、住宅地に銃弾が撃ち込まれる事態が 頻発しています。
 一方、名古屋高等裁判所は自衛隊イラク派兵に違憲判決を出しました。大江健三郎氏を相手に、当時の隊長らが起こした裁判では、一審、二審とも「渡嘉敷島での七〇〇人もの集団死には軍の強制があった」とし、原告側の訴えを退けました。
 この四年間で全国に七〇〇〇を超える「九条の会」が生まれました。「九条の会・医療者の会」には吉永小百合さん、海老名香葉子さんはじめ、多くの知識人 からメッセージが寄せられています。二〇〇八年五月の憲法記念日に行った「朝日新聞」世論調査では九条改憲に対し、反対六六%、賛成二三%という結果でし た。国民の草の根からの運動が改憲派を少数に追い込んでいる表れです。憲法を地域、職場にさらに根づかせる活動が重要です。

2節 医療・介護「崩壊」と立ち向かう

1.連続的な大幅な負担増~「患者になれない病人・利用者になれない人」が続出

 二〇〇八年一二月一日付の朝日新聞は、独自調査として「後期高齢者の五%が保険料滞納を余儀なくされ、二〇〇九年度には保険証が取り上げられる」と報道しました。推計八〇万人の保険証が取り上げられることになります。
 この一〇年、患者・利用者負担が増え続けています。一九九七年、サラリーマン本人の自己負担は一割、七〇歳以上は外来月一〇二〇円を上限、入院一日七一 〇円だったのが、いまは本人三割負担、七〇歳以上は一割~二割、三割負担です。あまりにも高い負担のために病気になっても受診を控える人が急増していま す。国民健康保険証は二割の世帯で滞納、三三万世帯が保険証を取り上げられています。非正規雇用労働者では保険に加入できない「無保険」者が急増していま す。
 昨年七月に発表された厚生労働省「医療機関の未収金問題検討会報告書案」では、三二七〇病院で一年間に二一九億円もの未収金が発生」し、最大の理由が 「患者が医療費を支払うだけの資力がないほど生活が困窮している」としています。病院の数は全国で約八八〇〇あり、診療所を入れると一年間に発生する未収 金は一〇〇〇億円近いものと思われます。
 民医連は「保険証」を取り上げられた子どもの問題をいち早く社会問題として提起してきました。この問題が社会的にクローズアップされる中で、厚生労働省 は中学生以下の子どもで無保険が三万二九〇三人いることを明らかにしました。国民健康保険法はその目的を「社会保障及び国民保健向上に寄与する」とうたっ ています(一条)。この点から見て「保険証の取り上げ」は明らかに国保法違反であり、憲法一一条、二五条に定める「基本的人権」に対する違反です。国会で は、全会一致で中学生以下の子どもへの資格証明書発行中止・短期保険証発行を義務づける法改正が決まりました。世論の反映です。しかし、これに留まらず全 世帯への資格証明書、短期保険証発行を中止させること、負担能力をはるかに超えた国保料を引き下げさせること、減免制度拡大や生活保護受給要件の拡大を緊 急に行わなければなければなりません。政治の責任です。
 介護保険制度が始まる以前よりも、介護自殺、無理心中が増加しています。
 民医連の「介護一〇〇〇事例調査」では五人の方が介護保険料を滞納し、償還払いや七割給付に引き下げられている実態が明らかになりました。この方がたは 介護保険当初から国保滞納者です。当初、介護保険がめざした「介護の社会化」とかけ離れている実態、「保険あって介護なし」というべき深刻な事態が広がっ ています。
 二〇〇九年介護報酬改定で「三%引き上げ」が実施されます。この間の運動の成果であり、有資格者の配置への評価など、私たちの要求も一部反映されていま すが、三%程度の引き上げでは、介護保険創設時の水準には遠く及ばず、現状の矛盾を根本的に解決するものではありません。さらに、基本報酬の底上げではな く加算中心の組み立ては、事業所の「選別化」をもたらしかねません。三%引き上げが、経済対策の一つ三年後の消費税引き上げを前提としていることも重大な 問題です。また、この四月から実施予定の介護認定制度の改悪や利用者限度額が不変のため、報酬引上げがサービス利用量の増加につながらない問題がありま す。
 二〇〇六年度から始まった障害者自立支援法も、「自立」の名のもとに、応能負担原則を応益負担に変え、障害者の自立をより困難なものにしています。

2.「医療・介護の破壊」の実態

 この一〇年以上にわたって強引にすすめられた医療・社会保障分野での構造改革は「空前の危機」を生み出しました。『東洋経済』の特集では「医療崩 壊」という表現を「医療破壊」という言葉に置き換えました。医療供給体制の縮小はかつてない速さと規模ですすんでいます。病院の倒産は二〇〇七年度、二〇 〇一年に比べ六倍にも増加しています。銚子市立総合病院に見られる自治体病院・公的病院の閉鎖、診療縮小、民営化が加速度的にすすんでいます。お産ができ る病院がわずか数年で半分以下に激減しました。小児科も同様です。日本外科学会の調査では、外科医の七割が当直明けに手術を余儀なくされ、一週間の平均勤 務時間は七〇時間を超えると報告されました。他科も同様です。過労死基準を超えて働かざるを得ない異常な事態が、いまの医師をとりまく環境です。その結 果、全国各地で救急受け入れ困難という事態を生んでいます。大病院が林立する東京で、救急車が受け入れ先病院に着くまで四五分と、都道府県の中で最長で す。高齢化などで出動は増えているにもかかわらず、人員や救急車は増えていません。
 多くのマスコミは病院の「受け入れ『拒否』」と伝えていますが、実態は「拒否」ではなく、「受け入れ『不能』」の状態です。
 徹底的な給付抑制と負担増のもとで介護事業所の倒産・閉鎖
があい次いでおり、「特養を建てたものの職員を確保できずにオープンできない」「新規の利用者を受け入れられない」など地域の介護基盤が大きく揺らいでいます。

3.医療機関の経営への影響

 医療機関の経営も深刻です。二〇〇八年度六月の断面調査では、独立行政法人・国立大学病院の六割、自治体病院も七割以上が赤字経営です。民間病院 の経営も同様です。今後、景気悪化に伴って貸し渋り、貸しはがしなどもあって民間病院の倒産(自主閉鎖など含む)が一気にすすむ可能性があります。
 世界各国が医療の進歩や高齢化などに伴って、人口当たり医師数を増やす政策をとり続ける中、日本だけは四半世紀にわたり医師養成数を減らし続けてきまし た。その結果、世界経済開発協力機構(OECD)加盟三〇カ国中、二七位で先進国の中では最低です(ちなみに人口千人当たり日本二人、キューバ六・五 人)。看護師も同様の傾向です。
 診療報酬は四回連続マイナス改定で、引き下げ率は合計七・七三%にも及んでいます。介護報酬も二回連続、合計五%の引き下げです。中でも、二〇〇八年の 診療報酬引き下げは、後期高齢者へ報酬で医療差別を持ち込んだほか、回復期リハへの成果主義の導入、入院時医学管理料と混合診療である選定医療をリンクさ せたことなど、診療報酬制度の根幹に関わる変更を行いました。
 入院時医学管理料の要件変更で、年間数千件の救急車を受け入れ地域の第一線で救急・急性期医療を担ってきた病院が算定できなくなりました。「地域医療を 守る」ことを柱に掲げた診療報酬改定が、逆に第一線の医療機関の困難を拡大しています。遠く離れた大病院への「一極集中化」と「診療所」だけで地域住民の 健康を守ることはできません。必要なのは、あらゆる点で「連携」の要となる地域の中小病院の総合力を発揮させることです。民医連の病院は地域の連携の 「要」となる病院そのものです。
 政府が意図した療養病床削減計画は実態を無視したものです。保団連の調査では、急性期病院の九割が「退院後の連携先が無くなり『医療難民』が発生する」 として療養病床削減に反対しています。各県では行政担当者自身が「達成困難」とし、計画そのものが開始早そうで頓挫しています。

4.医師不足問題と新医師臨床研修制度の改変でのせめぎ合い

 新医師臨床研修制度発足の目的は、それまでの日本の医師養成システムへの反省から地域の医療をささえる総合性と専門性を兼ね備えた医師を育てるこ とでした。しかし、医療崩壊を前に舛添厚労大臣は、医師不足の要因を新医師臨床研修制度に押しつけ、「研修を一年にすれば八〇〇〇人の医師が増える」、 「地方勤務を『必修化』すべき」などと発言し、医師不足に直面している少なくない関係者からも同趣旨の発言が行われています。地域医療を担う総合的な臨床 能力をもった医師養成をめざして新制度が始まったばかりなのに、安易に研修期間だけ短縮するような改変は、ご都合主義といわざるを得ません。全日本民医連 が研修医と指導医を対象として行った緊急アンケート(二〇〇八年一一月実施)でも、研修期間の短縮について八四%の医師が「初期研修の目的達成困難」と し、六八%の医師が「医療過誤を招くおそれがある」と答え、その内容をマスコミも報道しました。多くの共感が寄せられています。医学連もアンケートを実施 し、「医師不足と医師養成を考える」パンフレットを発行するなど自らの問題としてとりくんでいます。
 いま政府がやるべきことは、地方交付金、大学病院補助金減らしや、「公立病院ガイドライン」などを押しつける政策を直ちに中止して、医療再生を担う医師養成をすすめることです。

5.看護をめぐる動き

 看護の問題でも、四年制大学化や大学院化の加速で「医師の仕事を分担すべき」などの意見が出されており、厚労大臣の諮問機関である「看護の質の向 上と確保に関する検討会」では医師・看護師の役割分担や看護教育のあり方について二〇〇九年一月をめどにまとめたいとしています。しかし、多くの患者に接 し寄り添って看護しているのは圧倒的に地域の病院や診療所です。「そこが看護師を募集しても来ない」「大きな病院に引き抜かれる」という状況を見過ごすこ とはできません。いま必要なのは、各都道府県「第六次看護需給計画」の見直しであり、第七次計画で大幅増員を実現させる運動と二〇一〇年診療報酬大幅引き 上げの運動が重要です。

3節 新たな「展望」もとめて~国民本位の政治・医療・社会保障制度構築を

1.ルールなき資本主義=新自由主義的路線の破綻

 一九八〇年代以降に始まり、小泉政権以来さらに強められてきた新自由主義路線の破綻が誰の目にも明らかになってきています。「ホリエモン」や「村 上ファンド」がもてはやされていた数年前と「隔世の感」があります。ルールなき資本主義(=新自由主義)は、人、貨幣、土地を「金融商品」としました。そ のため物を製造し、売買する価格(実体経済)の四倍もの余剰「マネー」が「儲け」を求めて世界中を飛び回っています。原油高騰の異常な値上げも「投機」の 対象にされた結果です。国民生活はズタズタにされました。そのバブルが、アメリカ・サブプライムローン破綻で、はじけて表面化し、一気に加速しました。
 アフガニスタン・イラク戦争は泥沼化しています。アメリカの起こした戦争が間違いだったことが明らかになっています。しかし、自民・公明政権は新テロ特 措法(給油法案延長)を強行成立させました。「テロ撲滅」という名の戦争は、多くの民間人を犠牲にして「憎しみ」を増幅させ、インド、タイなどで新たな 「テロ」行為を拡大させています。
 一九九七年の京都議定書では、地球温暖化対策として世界の温室効果ガス排出量の削減を一九九〇年比で二〇一二年までに六%削減することを先進国に義務づ けていますが、二〇〇七年までの実績では、ドイツはマイナス一八・五%、イギリスはマイナス一五・九%、スウェーデンはマイナス八・九%などに対し、日本 は八・七%増やしています。環境対策も大変遅れています。「大量生産・大量消費・大量廃棄社会」のあり方を見直す絶好の機会です。
 平和憲法をもつ国として平和的手段で国際貢献できるよう、いまこそ政治的イニシアチブの発揮が求められています。二〇一〇年に開催されるNPT再検討会議にむけて、核廃絶の国際的な世論づくりがいっそう重要です。

2.新しい政治を求める国際的な流れ

 「チェンジ」を求めるアメリカではオバマ民主党政権が誕生しました。この政権はイラクからの段階的撤退や核兵器廃絶、公的医療保険制度導入を公約 にするなど注目される政策を掲げています。これらの政策を実現させるカギは、オバマ大統領ではなくアメリカ国民の運動こそが握っているといわれています。 在日米軍の再編をすすめる動きが強まる中で、日米軍事同盟強化に歯止めをかけ基地のない日本をつくる国民の運動がいっそう重要です。
 中南米に見られる新自由主義から決別する大きな流れや、北欧など欧州では資本主義への民主的規制で所得再配分機能を高め、貧困の克服、医療、社会保障の 拡充をすすめる動きが強まっています。昨年のキューバ大使との懇談では、大使が日本の民主的医療運動への共感を示し、「キューバは貧しい国であるが、国づ くりの基本を『教育・いのち・健康』においている。人はキューバの最大の財産である」と発言されたのが印象的です。二〇〇九年一月に行われたキューバ視察 の成果が報告されました。

3.国民生活を守る「内需拡大」「社会的共通資本への公的資金の投入」こそ、暮らしを守る道、政策の転換を!

 「雇用拡大」「内需」を拡大し、個人消費を高めることや社会的共通資本への公的資金投入こそ、求められています。
 緊急に必要なのは労働者派遣法が大幅に緩和された一九九九年以前に戻し、正規雇用に切り替えることや社会保障の拡充などをきめ細かく、かつ底上げする施 策の実施です。経済危機の原因をつくったのは国民ではありません。「つけ」を国民や中小企業に転嫁させず、企業の社会的責任と国の責任を果たさせることが 求められています。
 イギリスはじめEUは、内需を拡大し、国民の暮らしを守るために、労働者の所得税減税や消費税引き下げを打ち出し、企業や富裕層への課税強化を打ち出し ました。ドイツでは政府が主導して、操業短縮の場合も通常給与の九〇%が保障される制度が確立されています。日本政府とはまったく逆の対応です。
 農業と街の中小零細企業の活性化は、循環型の地域経済再生の力となります。医療、介護、福祉分野の雇用拡大は、政府自身が「道路を造るよりもはるかに経済波及効果が高い」と認めているように、高齢化などに伴い、需要も充分あり、もっとも有効な「内需拡大」策の一つです。
 全日本民医連が提起した医療・介護再生プラン案では、日本の公的医療費(医療費・介護給付費)を少なくともドイツ、フランス並みの対GDP比一一%に引 き上げることを提起しました。いまより一三兆円以上、公的医療費を増やす提言です。一一%を確保しているフランスやドイツなどでは入院・外来・在宅・介護 など一切の自己負担がなく、日本と比べものにならない医療・福祉、教育制度を実現しています。
 この提言を実現させるためにさらに大きな共同を広げなくてはなりません。

4.要求を持ち寄り、ゆがんだ政治に選挙で審判を下そう

 二〇〇九年秋までには確実に総選挙が行われます。政権交代を望む声が大きくなっています。問われているのは「政治の中身」であり、単なる政権交代 では国民生活を守ることはできません。政権転換をめざす民主党は、核武装論者など自民党より「右派」といわれる部分を抱え、「国連が承認すれば紛争地域へ の自衛隊派遣を容認」し、大企業からの献金を容認、法人税減税などを打ち出しています。消費税増税を主張する議員も少なくありません。国民の運動が弱まれ ば自民党との「大連立」など「右傾化」する可能性があります。二〇一〇年には憲法を変えることを問う国民投票の実施が可能となる情勢です。
 今度の総選挙を国民が主人公となる民主的な政権をつくる第一歩としなければなりません。また、七月に行われる東京都議会議員選挙は全国的に大きな影響を与える選挙で、全日本民医連として全国的な位置づけで臨みます。

5.民医連攻撃への警戒を

 一方、民医連と国民を分断させることを狙い、民医連の事業所に対する「攻撃」も現れています。自民党議員がNHKに出た民医連事業所を攻撃した り、長野中央病院に対する保健所の指導に名を借りた民医連活動への締め付け(「『守ろう憲法九条、生かそう憲法二五条』の横断幕が医療法の広告の範囲をこ え違反である」とした改善命令)が行われています。医療事故問題を通じた警察の動きなどに対する警戒が必要です。

Ⅲ章 第39期に向かって重点課題・方針

1節 今後1年間を貫く基本的な立場と課題

 この間、私たちは「いのちと人権」を守る主戦場は「地域」であると位置づけてきました。ゆがみきった政治の「矛盾」は地域に「縮図」となって現れ てきています。医療崩壊や受療権の侵害、大量首切りなど急速な社会矛盾の拡大に対し、憲法の理念を生かし生存権を守る運動と政治の実現がいまほど、痛切に 求められている時期はありません。これから一年間のとりくみは決定的です。思い切って地域に打って出る活動を強めましょう。共同組織の仲間とともに民医連 の事業所、職場の存在意義を大いに発揮させましょう。反貧困をかかげてたたかっている仲間や医療、福祉関係者はじめ地域のさまざまな関係者との「連携」や 「共同」を強めましょう。二〇〇九年、「出番」の情勢にふさわしいとりくみをすすめましょう。

  • 民医連運動を推進する力は、主体的に民医連運動を担う職員集団と共同組織の仲間です。綱領草案の討議、日常の実践を通じて「民医連を学び」「新しい綱領」をつくりだす運動を重視します。

  • 平和を守り、医療・社会保障政策の大転換をはかることを第一義的な課題とし運動を強めましょう。資格証明書・短期保険証発行の中止、国保減免制度や生活保 護制度の緊急拡充、公的病院を守ることなど地域での「共同」を強めましょう。三割負担を緊急に二割負担とさせましょう。二〇〇九年九月までに行われる総選 挙、七月の東京都議選などを通じて要求実現のために、全力を尽くしましょう。

  • 共同組織の仲間とともに地域に出かける活動を重視し、「相談活動」をはじめ「もっとも困難な人びとの“最後のよりどころ”」としての役割を発揮しましょう。無料低額診療事業に自らが挑戦するとともに、ほかの医療機関・福祉施設へ拡大させましょう。

  • 医療・介護の安全・質の向上をめざしましょう。「民主的集団医療」や「共同の営み」、民医連の理念にもとづき、慢性疾患医療、アスベスト問題など医療活動 を強化し、「連携」をキーワードに地域の中での事業所の役割を定め、強化をはかりましょう。健診・保健予防活動をいっそう強化しましょう。

  • 経営困難は、粘り強く全国の経験に学び、職員や共同組織の仲間の知恵を出し合い、乗り越えましょう。予算づくりを全職員の参加で成功させましょう。

  • 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、他職種の確保と養成に全力を尽くしましょう。事務幹部養成に全日本民医連として本格的にとりくみます。職員の健康管理にいっそう留意しましょう。

  • 「あらゆる活動を共同組織とともに」を貫き、結節点としての第一〇回共同組織活動交流集会(長崎)を成功させること、四〇〇万共同組織、一〇万『いつでも元気』めざし奮闘しましょう。

  • あらためて県連、地協、全国的な連帯と団結と機能強化を呼びかけます。

2節 各分野の具体的課題・方針

1.全日本民医連綱領改定草案「学習・討論運動」を旺盛にすすめよう

 第三八回総会で綱領改定案を提起しました。幾多の先輩たちが築き上げてきた「いのちの平等」の歴史に学び、今後の民医連運動を創造的に発展させることを目的としています。
 「綱領草案」の「学習・討論」運動を二〇〇九年八月の第三回評議員会までとりくみます。この運動は、(1)討論運動を通じてあらためて「民医連の歴史と 運動、使命」について学習し、深めることで、民医連への確信を深めること、(2)自らの手で新しい民医連綱領をつくり出す運動に主体的に参加すること、を 目標にかかげています。県連理事会で時間を取って議論し県連での計画を持ちましょう。管理部、医師集団はじめ非正規職員を含む全職員と共同組織の中で旺盛 な議論を行いましょう。各地の歴史を学び、掘り起こしましょう。幹部自らが「民医連運動のロマン」「私と民医連」を語り、講師役を果たしましょう。全日本 民医連『五〇年史』発行を急ぎます。
 三月二一日、全国活動交流を目的に討論集会を開催します。各県連や法人・事業所、青年JBの議論を持ち寄りましょう。全日本民医連理事会は討議状況や出された意見を踏まえ、草案を深め、第三回評議員会をめどに必要な加筆・修正提案を行います。

2.平和なくして人権なし、「民医連運動の第一義的課題として」平和・憲法九条を守る運動を重視しよう

 平和・憲法を守る活動を重視します。すべての県連でこの一年間の「平和アクションプラン」を作成し具体化しましょう。沖縄・辺野古連帯支援行動を 三~四カ月間に一度、開催する予定です。積極的に参加を組織しましょう。二〇一〇年春にニューヨークで開催されるNPT再検討会議にむけ署名一二〇万筆を 達成すること、代表団一〇〇人の派遣にとりくみます。二〇〇九年原水禁世界大会はその節目となります。

3.たたかいは民医連の“たましい”。連帯を強め、医療・社会保障改善の運動を大きく前進させよう!

 「再生プラン案」を広げ、後期高齢者医療制度廃止を必ず実現させましょう。廃止が実現できれば医療・社会保障「構造改革」路線に大きな「風穴」を 開けることができます。緊急生活支援策として医療費自己負担三割から二割負担への引き下げを実現させましょう。二二〇〇億円の社会保障費削減政策を廃止さ せ、診療報酬一〇%・介護報酬五%引き上げをめざして運動を広げます。国保の資格証明書・短期保険証発行を中止させましょう。障害者自立支援法の応益負担 撤廃をめざします。
 自治体に対し、地域ケア整備計画の見直し、健診・保健予防事業の拡充(住民健診、特定健診、がん検診)と、高齢者、慢性疾患をもつ成人への肺炎球菌ワク チンの拡充と、乳幼児へのヒブワクチンの公的助成、定期接種の実現、中学生以下の医療費無料化、国保料引き下げや国保法四四条に基づく減免制度(全国一八 〇〇余の自治体中、国保減免制度のない自治体は約八〇〇カ所存在し、あっても極めて不十分な制度であると国自身が認めている)や、生活保護制度の適用拡 大、難病、障害者などへの県単独助成事業の拡充など、自治体の実態や状況をよくつかみ、改善を迫る運動を社保協などに結集し、すすめましょう。
 すべての薬害肝炎被害者の救済や原爆被害者全員救済を求める運動、水俣病のたたかい、生存権裁判勝利、反貧困のたたかい(ホームレス健診、相談活動など)の前進のために奮闘を呼びかけます。
 ドクターウエーブ、ナースウエーブ、介護ウエーブをいっそう広げましょう。全日本民医連として、三つのウエーブ、診療報酬・介護報酬引き上げなどに関して、各省庁交渉など統一行動を三月の予定で行います。
 全日本民医連として、医療事故を扱う公正・中立な第三者機関の設置にむけ、各界に働きかけを強めます。

4.安心して住み続けられるまちの必要条件である地域医療を守る運動を共同の力で広げよう!

 国からの「公立病院ガイドライン」「地方財政健全化法」の押しつけや「社会保険病院、厚生年金病院解体」など「上から」の地域医療供給体制再編の 動きに対置する「民主的な地域医療づくり」の運動が重要です。各地で広がる運動に積極的に参加しましょう。同時に、「今ある危機」にどう立ち向かうか、医 師養成、医師確保、医療連携など地域の事情をつかみ、何ができるかを検討し、具体化しましょう。全国的な結集や交流の機会を、社保協などと共同し具体化を めざします。

5.民医連の特徴を生かした保健予防・医療・介護活動をすすめよう

 治療よりも「まず生活」といった実態が広がり、受療権を侵害された人びとが増加しています。身近なところで「孤独死」「国保死亡事例」が発生して います。「待っている」のでは、「患者・利用者になれない人」の権利を守ることができません。福岡・千鳥橋病院で未収金患者の訪問調査を行ったところ、実 際に支払いが可能な方は一〇%にも満たなかったと報告されています。
 日生協医療部会の提起(三〇〇万人対話運動)とも呼応して、「気になる患者訪問」「国保中断患者訪問」「共同組織会員訪問」「班会への参加」など目的意 識的に「地域に打って出る活動」を強めましょう。中でも、無保険者への健康診断や相談活動、青空健康チェックの活動、共同組織健診や健康づくりなどを強め ること、さらに「特定健診・保健指導」制度や自治体が実施する市民・がん検診の改善と実施、「協会けんぽ(旧政府管掌健保)生活習慣病予防健診実施医療機 関」の取得など、保健予防活動を旺盛にすすめましょう。
 「首切り」「リストラ」を撤回させる運動に積極的に参加するとともに、全日本民医連緊急アピールなどを踏まえ、他団体と共同して生活や健康相談・生活相談活動を強めましょう。
 入院、外来、施設、在宅分野で連携を強め、医療や福祉の安全、質向上、健康増進や健康管理のために知恵を出し合いすすめましょう。
 困難な人びとの「最後のよりどころ」の事業所として、すべての事業所が無料低額診療事業の取得をすすめましょう。無料低額診療がきっかけとなって、国保 減免や生活保護受給につながる場合がほとんどです。民医連の存在意義を高め、憲法二五条の実現を迫るとりくみです。無料低額診療実施医療機関は、全国の医 療機関で三〇〇足らずであり、一つもない県(青森、秋田、山梨、岐阜、高知、沖縄)もあります。すべての国民の医療・福祉を受ける権利を守るためには、国 と自治体に制度の徹底と適用拡大(無料低額診療事業の届け出『受理』や国保法四四条制度の拡充など)を行わせ、自治体病院をはじめ多くの医療機関でも広く 実施されるよう運動しましょう。各医療機関の持ち出しとならないためにも、実施機関への税制上の優遇措置を拡大させていく運動を国と自治体にむけて強めま す。
 石川・輪島健康友の会などが行っている助け合い基金などの経験をさらに広げましょう(『いつでも元気』還元金月一部一〇〇円をプールしての「支払い困難 な人」への助け合い基金)。「いのちを守る」シールの全国的な普及をはかるなど、「困ったらあの事業所、共同組織へ」という役割を果たせるようとりくみを 強めましょう。
 中断患者の訪問活動、「気になる患者」訪問などを意識的に強めることを呼びかけます。とくに、困難な患者・利用者・事例を見逃さない「目と構え」を事業 所、職場として確立し、SWや管理部、生健会などと連携し、減免制度などあらゆる社会資源を活用し、事例をもとに自治体交渉など権利を守り抜くとりくみを 強めましょう。一つひとつの事例を全体で共有化し(「一職場一事例」検討会など)、人権意識を高めましょう。
 全日本民医連として、この冬に行う「寒冷地患者生活実態調査」、「二〇〇八年国保死亡事例調査」の結果を早急にまとめ政策提言します。必要に応じ緊急実態調査を提起します。
〈民医連の介護活動の前進のために〉
 介護報酬の引き上げ・改善を重ねて求めていくと同時に、保険給付を抑制し、「自己責任」や「家族介護」を強要している国の政策を転換し、「介護の社会 化」にふさわしい制度にむけて奮闘しましょう。二〇〇九年度、各自治体では第四期の事業計画がスタートします。二月に行う介護・福祉事業責任者会議の提起 をもとに、地域の実態・要求をふまえて運動し、内容の充実、基盤整備などを確実にすすめましょう。
 「介護一〇〇〇事例調査」は、「住み慣れた地域で暮らし続けること」そのものに深刻な困難が、広く生じている実態を明らかにしました。制度改善を求める たたかいとともに、事業・実践を通して利用者・高齢者の現実の困難にどう応えていくかがあらためて問われています。「地域と利用者を見る“視点”」をより 確かなものにし、在宅生活をささえる拠点づくり、医療との連携を強化し、共同組織の仲間とともに地域での助け合いの活動をいっそう強めましょう。高齢者の 「住まい」「居場所」づくりは重要なテーマです。運動と事業の両面で位置づけ挑戦しましょう。
 改定される介護報酬への対応を確実にすすめ、事業基盤の強化をはかります。法的整備をいっそう重視し、内部監査や相互点検のしくみづくりなどレベルアップを追求しましょう。

6.民医連経営を守り抜く決意を固め、経営改善のとりくみを前進させよう

 「経営改善」は緊急課題です。法人専務会議などの問題提起や討議の到達点を踏まえ、何としても二〇〇八年度決算の改善、二〇〇九年以降の展望をつ くりあげましょう。とくに全職員参加型の予算づくりと大型設備投資について集団的・多角的に検討し、資金の流れ、見通しを共通認識にし、具体的な対策を講 じましょう。その際、民医連統一会計基準にもとづく正確で迅速な経営情報や医療統計、地域の情勢分析などができる実務・管理力量を高めることが重要です。 自らの組織の「強み」「弱み」「情勢」をきちんと分析し、医療構想と経営構想、医師養成などを一体的に捉えて政策化する管理部の深い討議と意思統一、具体 的な提起が重要です。公益法人、医療法人制度改革、生協法改定が行われ、対応が求められています。制度の中身をしっかりとつかみ、公益法人では公益認定を 受けること、医療法人では社会医療法人への移行を検討しましょう。
 医薬品は、薬価引き下げのもと、事業協同組合のとりくみが重要です。安全性への考慮、患者負担軽減、経営効果など総合的に検討する薬事委員会の機能を法 人や県連的レベルで確立し強めましょう。材料費に占める医療材料比率は医薬品比率を上回っています。医療材料は医薬品に比べ管理が十分とは言えません。医 薬品のとりくみに学び、県連レベルでの共同購入の追求や、医材委員会を確立するなど、管理を強めましょう。

7.後継者養成の前進のために

〈転換期にふさわしい医学対と初期・後期研修に〉

 医師増員という四半世紀ぶりの政策転換が現実のものとなりつつあります。今後は、どんな医師養成をすすめ、どのようにして全国に配置してゆくのかが政策 的な焦点となります。すでに厚労省は臨床研修、専門医制度の改変に向け、検討会や研究班を設置し、議論を急いでいます。二〇〇八年度に始まった強引な医療 供給体制改変はそのままにして、医師養成制度だけ変更してつじつまを合わせるような対応に終わらせず、今後長期にわたって国民の安心につながるような医療 体制構築に向かうよう要求しなければなりません。まさに地域医療を担ってきた民医連事業所と医師集団の出番であり、社会的アピールを強めなければなりませ ん。広範な医師・医学生と結びついて、医師増員署名と再生プランで大きな運動をすすめましょう。そして医学生や研修医が、確信を持って民医連に参加できる よう、総合的な力量を持った医師養成をめざす民医連医師政策づくりと医学対強化をすすめましょう。これらのとりくみを深みのあるものとするためにも、新綱 領草案の議論を医師集団が率先してすすめましょう。
 医学生対策では、奨学生や実習生が患者、住民のために奮闘する民医連に魅力を感じ、「地域や職員にささえられてこそ医師が育つ」と実感できるとりくみを すすめましょう。高校生対策や中学生対策で新しい経験も生まれています。担当者や先輩医師の“民医連の魅力を語る”力をいっそう高めましょう。共同組織の 存在は医学生を育てる大きな力となっています。経験に学び活動を強めましょう。
 二〇〇九年「民医連医学生のつどい」の準備が始まっています。奨学生が大きく成長できる機会です。援助を強めましょう。激変する医師をめぐる情勢と民医 連医学生対策の役割を全医学対担当者がつかみ、実践できるよう地協レベルでの援助を強化します。二〇〇九年六月に医学対担当者ゼミナールを、五月に青年医 師ワークショップを開催します。
 医師研修では、初期・後期研修が連続して医学生に見え、確信になるものが必要になっています。初期研修については、民医連での研修の優位性がしっかり意識され、プログラム化されているかをもう一度見直しましょう。
 他職種との民主的集団医療体制の確立、患者を「生活と労働の視点」でとらえる診療スタイル、社会的困難も解決すべき問題としてとらえる姿勢、共同組織の 自主的な健康づくり運動との結合などの視点が貫かれていることが重要です。そして研修の過程で、院内における役割や社会的な活動も提起し、一人ひとりの思 いをつかみ、民医連医師としての成長を促すことが大切です。沖縄の臨床研修病院群プロジェクト「群(むり)星(ぶし)沖縄」で指導を続ける宮城征四郎医師 は「自分も県立中部病院で努力してきたが、民医連のチーム医療にはとてもかなわない」とのべ、また五年にわたって福岡民医連で研修指導を行っているピー ター・B・バーネット医師は、民医連の印象として「綱領の社会性、医療における集団性、地域密着性」を上げ、ともに大きく評価しています。これを確信にし なければなりません。
 後期研修は、本格的に総合的診療能力を身につけながら、一定の専門分野を選択してゆく時期になります。まず、各診療科別の後期研修実施にあたり、科ごと の技術研修を行う前提として、地域で求められる総合力をどう身につけるかという視点と「三年後、五年後に到達すべき医師像(アウトカム)」の明示を重視し なければなりません。日本総合診療医学会案として提案されている病院総合医後期研修プログラム(第一版)は、民医連が重視してきたものと重なるところが多 く、参考にする必要があります。ER(救急救命)と急性期、手術などの入院医療に特化されつつある大学や地域中核病院での後期研修と違う、地域に根ざした 包括性と継続性のある内容を豊かにしていきましょう。次に、後期研修プログラムの中に技術的な展望を明確にすることが大切です。「民医連の存在価値は理解 できるが、技術者としての展望が見えない。見えない中での多忙に耐え切れない」といった声が若手、中堅医師の中にもあります。医療専門職としての展望が不 鮮明なままで、がんばり続けることには限界があります。
 各県連の規模や病院のポジショニングと医療構想によって挑戦すべき専門医や施設認定も変わってきます。各県連の医師政策として、認定医、専門医取得や施 設認定などの展望を示し、必要な臓器別の専門医の分野について提案する必要があります。医療活動、医師養成という両面で地域での連携を広げ、質を高め専門 医取得も視野に入れるためにも、従来は外部研修としてきた部分も後期研修に組み込み、民医連病院を主体に大学、専門医療機関などとの相互連携でつくりあげ る研修プログラム(ハイブリット型研修)づくりも考えましょう。
 全日本民医連の医師養成委員会は、後期研修プログラムの発展にかかわる集会を予定しています。

〈歯科の前進のため〉

 一一月、歯科院所長・事務長会議を開催しました。会議では「保険でよい歯科の運動を強めること」「すべての事業所が二〇一一年度までに黒字化すること」 「地域における民医連歯科の役割を高めること」「歯科医師臨床研修の充実と集団化、歯学対の強化」を呼びかけました。受診抑制による患者減が続いていま す。東京・立川ではネットカフェ前での歯科健康相談などを実施しています。京都・待鳳歯科診療所では「無保険」で虫歯をガマンしていた子どもに気づいたこ とから、連携して生活保護受給につなげています。「食べられる」ことや「よい義歯の具合」が、認知症予防につながるとの報告があり、医科・歯科・在宅・地 域連携と保健予防活動を重視してきた民医連歯科の役割は高まっています。二〇〇九年度の診療所型歯科医師研修施設二三カ所中、六カ所が民医連です。この分 野での役割を強めましょう。

〈看護分野〉

 第六次看護需給計画が出された直後に、診療報酬で「7対1看護」が新設され、激しい「看護師獲得競争」が起こり、病院によっては病棟閉鎖なども起こりま した。都立墨東病院が救急受け入れ困難になった要因の一つが看護師不足でした。看護の現場は交代勤務などで過重労働を強いられています。そんな中で、「人 の役に立ちたい」との思い、初心を育むことができる看護の現場をつくっていかなければなりません。
 全日本民医連として看護師増員、診療報酬の大幅引き上げを求め運動をすすめます。厚労省「看護の質の向上と確保に関する検討会」報告について見解をまとめ、提言を準備します。
 看護学生対策、奨学生活動を強めましょう。看護実習、一日看護体験、奨学生運動などの経験や教訓が生まれています。全国の経験の普及に努めます。二〇一 〇年度は必ず、一〇〇〇人以上の受け入れを実現させましょう。あわせて既卒対策など民医連事業所への共感を広め強めましょう。民医連看護学校の交流の機会 を広げます。
 「働き続けられる」ことを目的に行った民医連看護実態調査の結果をまとめ、今後の職場運営や看護管理に生かしていきます。「看護管理者の今日的な役割」 について提起します。あらためて第三五期に提起した「看護が“輝く”ために看護問題を管理運営の第一級の課題に」をあらためて位置づけ、とりくみを強めま しょう。

〈薬剤師〉

 二〇一〇~一一年は薬剤師新卒空白期となります。医療活動への影響や、体制が困難なために応需ができない保険薬局も、生まれかねません。しっかり とした確保計画を持ってとりくみましょう。新卒空白期の対応として、民医連の薬剤師活動の魅力を打ち出し、あらゆる手だてをつくして薬剤師を確保しましょ う。また、奨学生対策を民医連運動の後継者対策として位置づけ、個別の事業所任せにせず、県連レベルでの交流や制度教育、人権意識の向上にむけたとりくみ を強めましょう。

8.いまこそ「出番」、“きらっと光る”民医連事務職員をめざして

 第三八期第一回評議員会では、「事務幹部の姿勢が運動や経営に大きな影響を与えます。職員や共同組織を激励し、運動でも経営でも大いに役割を発揮 しましょう」と呼びかけ、「全日本民医連として第二回評議員会までに、養成のための今日的な課題を整理し、事務政策に着手します。総会方針で決定した全日 本民医連の事務幹部養成を目的とした恒常的な「民医連事務幹部学校」(仮称)の開校を準備します」と提起しました。
 いまほど民医連の事務職員の果たす役割が大切で、「やりがい」を実感できる時はありません。なぜ未収金が発生しているのか、なぜ中断しているのか、患者 の背景をつかむために患者さん宅を訪問しようと職場ぐるみでとりくんでいる医事課では、問題意識が鮮明です。「まっすぐな人権意識」が醸成されています。
 医学生対策、看護学生対策は「民医連の魅力を語り、組織する」活動です。自らが「輝くこと」なくしてできない仕事です。組織担当者の仕事、経理や総務の仕事も同様です。
 人権感覚を磨き、受療権を守る活動を強めることや、医療事務への精通、診療情報管理士や統一会計推進士などキャリアアップへの挑戦は、自らの成長と存在意義を高めることにつながります。主体的な参加で「民医連事務職員の出番!」を創り出しましょう。
 全日本民医連として、二〇〇九年春から一年間、毎年五〇人を当面五カ年計画で実施します。この事務幹部養成学校を成功させましょう。
 現在、民医連に働く事務職員のうち二〇代は一一%に留まり、五〇歳以上は三割を占めます。長期の見通しに立った計画的な採用、教育、研修、運動、配置、評価のしくみをつくり上げましょう。
 全日本民医連の事務政策指針を作成してから一五年近く経(た)ち、医療をめぐる情勢も事務をめぐる情勢も大きく変化しています。全日本民医連として事務 養成委員会を発足させ、今日的な民医連の「事務政策」づくりに着手しました。各県連でも並行して見直し、点検し、今日の情勢を踏まえた検討と具体化をすす めましょう。

〈事務職場への派遣労働のあり方についての問題提起〉

 派遣労働者は、派遣対象業種が「原則自由化」された一九九九年以降急増し、二〇〇八年度三八四万人となっています。中でも圧倒的多数を占める登録 型派遣労働者は、不安定な雇用形態のもとで低賃金と無権利状態を強いられています。派遣労働は、労働者「収奪」の新たな手法であり、大きな問題を抱えてい ます。
 一方、民医連事業所内の派遣労働については、派遣費用は労務経費となり、人件費に反映されないため、導入実態が浮き彫りとなることはありませんでした。 今回、実施したモニター法人実態調査の結果、医事やクラーク、健診など広い業務に導入されていることがわかりました。医事を丸ごと業務委託(外注)してい る事業所も見られました。経営の厳しさから事務職員の採用を控え、派遣労働に切り替える傾向や医事業務そのものを委託するケースもありました。
 「貧困と格差」が大きな社会問題となっている中で、全日本民医連に加盟する法人・各事業所では、経営問題から安易な派遣労働の導入はすべきではないと考 えます。長期的に見た場合に事務系職員の計画的育成にはつながらず、民医連運動の担い手不足に直結します。現在、やむなく導入しているところでは段階的、 計画的解消にむけ、検討を開始しましょう。
 一生懸命に努力しても、まともな給与を払えないような現在の診療報酬・介護報酬を引き上げるために力を尽くすことが前提です。また、少なくとも原則自由化された労働者派遣法を一九九九年以前に戻させることが重要です。

9.「共同組織の仲間」を増やし、共同を大きく広げよう

 六月に第一〇回全国共同組織活動交流集会が長崎で開催されます。
 集会は、(1)一九九一年から隔年開催にし、今回が一〇回目の節目となる集会です。一五〇万から出発した共同組織が三三五万を超え、四〇〇万の共同組織 をめざし、さらに奮闘を確認し合う場、(2)「医療・介護再生プラン(案)」も示し、医療・介護崩壊に立ち向かう運動の高揚の中で開かれること、(3)核 兵器のない世界を求める運動の高まりのもと被爆地・長崎で開催され、被爆医師として、また民医連医師として役割を果たしてこられた肥田舜太郎顧問が講演す ること、(4)「民医連綱領改定草案」議論を呼びかけている中で開催されること、の意義があります。歴史に学び新しい綱領をつくる運動に共同組織が自ら関 わる集会になるでしょう。長崎集会に各地の共同組織の仲間、職員が積極的に参加することを呼びかけます。
 この間、「あらゆる活動を共同組織とともに貫く」ことを強調してきました。このことをスローガンに終わらせることなく、次期総会までの具体的な達成目標を持ち、実践課題として追求しましょう。

10.あらためて「県連機能」を強化しよう

 全日本民医連は民医連綱領・規約を承認した事業所で構成されています。同時に、事業所は法人に属し、さまざまな法人形態を取っています。法人の役 割は、事業所や職員の民医連運動を保障しているだけではなく、指導部が民医連運動の先頭に立ち、事業と運動を積極的に推進することにもあります。法人専務 はじめ指導部には意識的・自覚的に民医連運動に結集し、推進することが求められています。
 いくつかの県連では県連理事会や常任理事会に専務が積極的に参加したり、県連専務会議、理事長会議の定例化や、県連事務局長と法人専務との定期的な打ち 合わせなどを行っています。県連レベルでのこうした経験を学び普及するために、全日本民医連としても必要な情報の提供や会議などを積極的に開催していきま す。
 県連の役割が増しています。運動に留まらず、事業協同組合を通じた薬剤などの共同購入をはじめ、給食事業、職員育成事業などに広がっています。医科法 人、保険薬局、介護事業をはじめ、民医連運動が総合的になればなるほど、事業の展開の仕方や管理も複雑になってきます。それら全体を総合的に援助・指導す る県連の役割は重要性を増しています。
 あらためて県連機能についての見直しを行い、県連事務局長の役割強化や、地協レベルの県連事務局員研修交流会などの開催を呼びかけます。

おわりに

 二〇〇九年は、三月に医療安全交流集会、九月に民医連中小病院を対象にした全国会議を予定しています。診療所交流会は地協毎に開催します。一〇月 には学術運動交流集会を群馬で、全国青年JBを福岡で開催します。それぞれの集会を第三八期総会期の結節点として成功させましょう。新しく発足した厚生事 業協同組合の活動を飛躍させなければなりません。
 あらためて、全職員が『いつでも元気』誌を読むこと、新入職員を暖かく迎え入れ、民医連運動をすすめる仲間として成長を援助しましょう。
 第二回評議員会は折り返し地点です。日本経済もこれまでのやり方では立ちゆかず大きな変更を迫られています。「人を大切にしない社会」から「人を大切にする社会」へ転換をはかる大きな可能性を持った時代です。
 何よりも人を大切にする組織として、綱領改定議論や日常の活動を通じて職場も職員も“輝き”、いっそう前進しましょう。