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ニュース・プレスリリース

第37期第1回評議員会決定

2006年8月20日
全日本民医連第37期第1回評議員会

はじめに

 第37回定期総会から5ヶ月半が経過しました。6月25日、45番目の県連、宮崎県民医連が誕生しました。
 日本の平和・安全と国民生活に耐え難い困難をもたらし、「医療崩壊」を招いた小泉政治を、満身の怒りをこめて糾弾するものです。
 評議員会は、第37回総会方針を踏まえ、(1)激変の情勢認識を一致させること、(2)総会後のとりくみを振り返り経験や教訓を交流し学び合うこと、 (3)折り返し点となる第2回評議員会までの活動の重点課題について意思統一すること、を目的とします。評議員会では情勢を深める学習講演を行います。

I、情勢

1)「小泉構造改革」は国民に何をもたらしたか
 小泉内閣は、憲法と人権を踏みにじる戦後最悪の内閣でした。
 平和憲法のもとで初めて自衛隊を戦場に送り出しました。“自民党をぶっ潰す”、“痛みの先には、明るい未来がある”と豪語した政権がつぶしたのは、間違 いなく「国民の生活」です。更に「憲法改悪」に固執し、アジアからの孤立を深めました。小泉首相は8月15日、内外の世論を無視して過去の侵略戦争を肯 定・美化する靖国神社参拝を強行しました。国政の最高責任者による明らかな憲法違反の行為であり断じて容認出来ません。
 この5年間、「痛み」の押し付けに始まり、「いじめ」に終始し、「政治が人を殺す」事態を生み出しました。後継首相が取りざたされていますが、マスコミを使った演出で、悪政の矛盾から目をそらそうとしています。
 自殺者が8年連続3万人を超える事態は、世界でも突出する異常さです。国民の約半数が加入する国民健康保険は、滞納者が2割・1000万人に達し、短期 保険証、資格証明書発行などの制裁措置により全日本民医連の調査では、00年度以降少なくとも21人が受診控えで「死亡」が確認される事態です(朝日新聞 06年7月4日一面トップ)。生活保護への受給制限がいっそう厳しくなり、生活保護を絶たれ、誰にも看取られることなく孤独死する事例が増えています。年 収1000万円以上の高額世帯が増える一方、年収300万円未満の低所得層が増加し、「生活が苦しい」と応える世帯は56.2%と過去最高に達しています (05年度厚生労働省国民生活基礎調査)。
 介護保険法改悪により、軽度者が予防給付に判定され、訪問介護、福祉用具の利用が制限、打切りとなり、今までの生活の継続が困難となる深刻な事態が各地 に広がっています。ベッドの「貸しはがし」ともいうべき人権侵害が行政によって進められています。制度改善、見直しを求める運動が重要です。
 公的年金控除縮小、老齢者控除廃止、高齢者非課税限度額廃止、定率減税半減により、6月はじめ届いた住民税納税通知書をみて、“なぜこんなに住民税があ がったのか”と各地の市町村民税課に抗議が殺到しています。連動して、国保料、介護保険料も大幅にあがるという、極めて深刻な事態が生まれています。なん と「人にやさしくない」国になりつつあるのでしょうか。医療改悪により、“こんなことを誰が決めた”と会計で絶句する高齢者の姿が目に浮かびます。
 青森では、15歳から39歳の男性就業者の4割がフリーターという実態が報告されています。地域格差、地域の崩壊も深刻です。
 一方、小泉内閣は、日米支配層の要望にそって様々な規制緩和政策をすすめ、中小零細企業や地方を切り捨て、日本経済の構造を大転換しました。「金儲けの ためにはなんでもあり」「金儲けのどこが悪い」という拝金主義の象徴である村上ファンドの生みの親は、規制改革推進会議議長であるオリックス宮内氏であ り、日銀総裁までが「濡れ手に粟」で不当利益を上げる始末です。モラルなき社会は凶悪な犯罪を生む社会につながります。ゼロ金利による国民の困難を尻目 に、銀行や消費者金融は過去最高の利益を上げています。耐震偽装問題、BSE問題も規制緩和の象徴です。変えていないのは官製談合による癒着構造や高速道 路建設など大型公共事業です。
 医療機関が存亡の危機に直面しているかたわらで、製薬メーカーは史上最高の利益を上げています。
 米軍再編のために3兆円もの税金投入する道を選ぶのか、3兆円を医療や社会保障、教育のために使う福祉国家の道をすすむのかが問われています。例えば、 3兆円は看護師60万人の人件費に匹敵します。多くの国民は福祉国家の道を求めています。
 この政治をなんとしても転換させねば、という声が渦巻いています。滋賀知事選挙、東大阪市長選挙の結果は、国民の小泉政治への痛烈な批判の表れです。多 くの人びとが声を上げ始め、小泉政治の転換を求める動きが始まっています。平和と人権が大切にされる「もう一つの日本」をめざし、政治や社会保障を転換す る「力」を事業所、職場、地域に蓄えていきましょう。“民医連ここにあり”の真価を大いに発揮しようではありませんか。来年は一斉地方選挙、参議院選挙が 行われます。国民の声を反映させる絶好のチャンスです。

2)憲法・教育基本法をめぐる情勢
 北朝鮮によるミサイル発射は、アジアと世界の平和を願う世論への挑戦であり、断じて許すことは出来ません。同時に、これを利用した「先制攻撃論」を主張 する安倍官房長官ら政府首脳の立場が、国際社会の中で、いかに突出した異常なものであるかをつかむことが重要です。非核・平和の北東アジアづくりや中東な どにおける国際紛争を解決する上で、唯一の被爆国であり、憲法9条を持つ日本が国際社会で果たさなければならない役割は重要です。
 憲法「改正」手続きを定める国民投票法、教育基本法改悪案が、戦後初めて国会に上程されました。憲法改悪策動が、新たな段階に入ったことを意味します。 「九条の会」の運動の広がりなかで、「九条を守れ」という世論が確実に増えています。国民を大切にしない人たちに“愛国心”を強要されるいわれはありませ ん。国民投票法や教育基本法改悪強行の動きは、改憲勢力にとって両刃の剣です
 今、すざまじい勢いで米軍の再編強化、自衛隊との一体化がすすんでおり、周辺住民の安全、環境、生活を脅かしています。米軍再編強化の動きは、岩国、座 間、名護はじめ各地で、大きな怒りを呼び起こしています。科学技術の軍事利用の動きも見過ごすことは出来ません。
 一連のねらいが国民に知れ渡れば、大きな変化が生まれる情勢です。総会方針で確認したように平和、憲法を守るたたかいを“民医連運動の第一義的課題”として、ねばり強く運動を広げましょう。

3)医療・社会保障をめぐる情勢
 2000万筆署名や運動を無視して医療改悪法が強行成立させられました。21項目もの付帯決議がつく欠陥法です。改悪法は、第一に、年間2900億円も の負担を高齢者に押しつけ、他方年間2500億円もの国庫負担を削減する許し難い内容です。第二に、今後6年間で38万床ある療養病床を15万床に減ら し、行き場のない「介護難民」、「医療難民」を大量に生み出すものです。第三に、混合診療は、保険のきかない医療行為を大幅に拡大し、国民皆保険制度を形 骸化させるものです。第四に、絶対的に少ない医師、看護師体制を増員することなく、医療機関同士の競争を煽り、いっそう地域医療の崩壊、医療崩壊を招くも のです。
 更に、見逃せないのは法案成立を受け、与党は、今後5年間で社会保障費1兆6千億円削減を打ち出し、「保険免責制」、「混合診療拡大」、「後期高齢者の 負担引き上げ」、「介護保険利用料引き上げ」、「生活保護の削減」、「消費税増税」などを策していることです。「米国企業も医療改革の議論に積極的に関与 できることを期待している」。これは6月29日の日米首脳会議に合わせて発表された「2006年日米投資イニシアティブ報告書」の一文であり、日本に対し 一層、医療分野における市場拡大を米国政府が迫る姿を示したものです。これらの動きと軌を一にしてアリコ、アフラックなどの民間医療保険が攻勢を強め、す でに3千万人が加入していると言われています。国民皆保険制度を解体させる動きになんとしてもストップをかけねばなりません。たたかうことなくして、国民 皆保険制度、患者、利用者の権利を守ることが出来ないギリギリのところにきています。

4)医療事故問題をめぐって(警察介入批判)
 福島県立大野病院の産婦人科医師が医療事故で逮捕されるという事態は、医療界に大きな衝撃を与えました。全日本民医連は、この問題で「医療事故の原因究 明と再発防止になじまないばかりか、医療に携わる者を無用に萎縮させるもので、根本的な解決につながらない」を趣旨とする見解を発表しました。事件以後、 日本の医療界では、産科の縮小やリスクのある医療を避ける傾向が生まれています。日本産科婦人科学会、日本医師会はじめ100以上の医療関係団体、学会が 一斉に声明や見解を出しました。一方、福島県警は、産婦人科医師を逮捕した所轄署を県警本部長表彰するという異常事態です。医療事故問題を刑事事件として 裁こうとする動きが強まっており、世界的にみても異常です。
 昨年秋に始まった厚生労働省による「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」は、現在、東京、大阪、愛知、茨城、新潟、神戸市の6都府県市で行わ れています。第3者機関につながるものとして期待されていましたが、貧弱な予算、体制であることと、患者からの申し出が出来ないこと、警察の関与が強まっ ていることなど、問題点が浮かび上がっています。
 医療事故問題の解決のためには、なによりも医療機関側の努力が必要なことはいうまでもありません。医療機関側の対応の不十分さが医療不信を生み出す要因 になっています。医療機関によっては、患者参加の医療を追及するあたらしい動きも始まっています。医療機関側からも患者・家族側からも相談を受け付ける相 談窓口と、公正中立な事故調査、裁判外での紛争処理を行う第3者機関の設置と被害者救済制度の確立が急務です。全日本民医連は関係団体にも呼びかけ実現に むけて全力を尽くす決意です。来年2月に、実現へのステップとなる集会を企画中です。

5)「病床が多すぎるので医師・看護師が足りない」との論を批判する
 「日本は欧米に比べて病床が多すぎる。病床を3分の1に減らせば、今の医師、看護師養成数でも足りる」と厚生労働省幹部や一部学者が主張しています。事 実、厚生労働省医師需給検討会は「医師の生産性向上や病院を効率化すれば医師数は充足」との報告をまとめています。受け皿のないまま強引に、地域の医療事 情や歴史を無視した乱暴な医療機関つぶし、病床削減をすすめることは、医療崩壊にいっそう拍車をかけるものです。
 医療改悪の進行のもとで、全国の約1割の病院が経営危機に直面していると報道され(四病協が発表した「診療報酬改訂に関する緊急アンケート」によると 1400病院中1割が経営困難と回答)、病棟閉鎖や閉院も各地で伝えられています。「生き残り」をかけた看護師獲得競争が激化しています。
 WHOは日本の健康達成度世界1位、平等度3位、GDP比医療費18位という統計を発表し、日本の医療制度を高く評価しています。実現した力は、国民皆 保険制度の実現、フリーアクセス、地域医療を担う医療機関や医師、医療従事者の献身的な奮闘によるものです。しかも世界的にみて貧弱な医療費、医師、看護 師体制のもとで、実現してきたのです。
 「燃え尽きて医師や看護師が辞めていく」事態は深刻です。一度低下した士気を取り戻すのは容易ではありません。問題はベッドが多いからでも、地域偏在で もありません。国際的にみてもあまりにも医療や福祉にお金を使ってこなかった結果であり、医師、看護師の絶対的な不足にこそあります。大阪府医師会の調査 では勤務医の3割が過労死基準を超えているとの実態があります。少なくとも人口10万人当たり医師数でOECD加盟国の平均とする必要があり、そのために は12万人の増員が必要です。
 「一番近いお産が出来る医療機関まで数十キロ」といった事態を放置することは許されません。地域の医療機関、病床は地域の共通の財産です。「生き残り」 論に陥ることなく「いつでも・どこでも・だれでも」という日本の医療の良さを守るたたかいの共同を広げ、強めていきましょう。全日本民医連として「医療機 関の縮減で医師・看護師は足りる」論への理論的批判を研究者などと共同して加える作業を行います。

II、総会以後の活動の特徴と教訓、第2回評議員会までの重点

1)平和を守り 憲法を生かす
 秋の国会では国民投票法案や教育基本法「改正」案の審議に入ります。憲法改悪と一体のものであり、絶対に廃案にしなければなりません。全ての民医連事業 所が、この秋、「学び、行動し、また学ぶ」ことを基本に、国民多数派結集をめざして“平和の風”を地域、職場に大きく吹かせましょう。引き続き全事業所、 共同組織支部に「九条の会」をつくり、その際、仲間内だけでなく、意見を異にする人とも対話する勇気をふるい、創意的なとりくみをすすめましょう。
 医師・医学者の会も12道府県に結成され、賛同者も5千人近くになりました。大学教授や学長、著名人など「9条を守れ」、戦争政策反対の一点で賛同が広 がっているのが特徴です。「会」は9月25日、読売新聞に会の意見広告を掲載します。民医連の医師の「会」への賛同は864人に留まっています。全ての県 に「会」の結成めざして粘り強く奮闘するとともに、改めて民医連医師の賛同と運動への主体的参加を呼びかけます。
 全ての県連で「平和アクションプラン」を作成し、原水禁世界大会、1PPNW世界大会(ヘルシンキ)、米軍再編反対などのとりくみを強めましょう。全日 本民医連として「平和・憲法交流集会」を企画します。たたかいの中で、意識的に職員の成長をめざしましょう。

2)「医療を守る・地域を守る・患者・利用者の権利を守る」共同組織月間に全力を
 原爆症集団訴訟で大阪地裁が画期的な判決を下しました。さらに8月4日には、広島地裁で41名全員を原爆症と認定する全面勝訴判決を勝ち取りました。遠 距離被ばく、入市被ばく低線量被ばくや内部被ばくを認めるなど、これまでの政府見解や判決を大きく超える判断を行い、今後の裁判や被爆者救済に道を開きま した。民医連医師団による統一意見書が大きな役割を果たしました。しかし、国は控訴しました。ただちに控訴を取りやめ、審査基準の見直しを行うことを求め ます。すべての県連で第2次提訴などの運動への援助を強めましょう。
 水俣病、薬害肝炎訴訟、B型肝炎訴訟、アスベスト被害など国民のいのちと健康をないがしろにしてきた企業と行政の社会的責任が厳しく問われています。民 医連への期待が強い分野です。アスベスト問題では、全国交流集会を踏まえて、「すべての県連でとりくみを強めよう」とアピールを出しました。総会方針で提 起した医療活動の視点を踏まえ、全ての県連・事業所でとりくみを強めましょう。
 医療改悪反対のたたかいで、全日本民医連は125万筆の署名を国会に届けました。東京民医連による40日間800人の国会座り込み行動、医師会、老人 会、社保協共同による住民決起集会(大阪)の開催はじめ各地で多彩な宣伝、申し入れ行動が繰り広げられました。テレビでの全日本民医連意見広告は21都府 県で放映され大きな反響を呼びました。また、全国約9千の病院へ療養病床削減反対の共同をよびかけ、懇談を行いました。300を超える病院から「民医連の 意見に大賛成、一緒にたたかいいましょう」など賛同があり、これらを元に厚労省交渉、議員要請行動を行い、衆議院厚労委員会(鈴木篤副会長)、参議院地方 公聴会(堀毛清史理事)で意見陳述しました。日本療養病床協会との懇談では、今後、地域医療を守るために協力しあうことを確認し、民医連への期待が述べら れました。この間、多くのマスコミから取材を受け、テレビ、雑誌、新聞などで民医連のとりくみが報道されました。
 たたかいは、教育学習月間と一体のものとして進められ、多くの職員、共同組織の仲間が参加しました。一方、署名は、常勤職員1人あたり平均26筆で82 筆集めた滋賀民医連から4.3筆に留まった県連など差がありました。また共同組織1あたり平均0.39筆であり、1.47筆の福岡から0.05筆まで差が みられました。「全職員参加の運動」、あるいは「共同組織とともに」の視点からみれば、力を発揮しきったとは言えない状況です。経験や教訓を深め、秋の月 間や運動につなげましょう。
 地域には、病気になっても「患者になれない」資格証明書や短期保険証、生活保護を断られた人、孤独死と隣り合わせの人が少なくありません。いっそう矛盾 が激化する時期です。事業所の中、診察室のなかにいるだけでは見えてこない現実があります。今こそ、地域に打って出、人権のアンテナを張り巡らしましょ う。具体的な課題で、自治体にむけたとりくみを重視しましょう。

 〈重点〉
1.「地域医療を守る」を主テーマに、地域の全ての病院、医療機関、福祉関係者との対話運動を行いましょう。積極的に条件を作り、シンポジウムなどを開催しましょう。自治体キャラバンや請願、交渉をすすめましょう。
2.困難な人たちへの相談窓口を思い切って広げ、寄り添い、「一職場一事例運動」など具体的な受療権を守る運動を全ての事業所、職場で取り組み、報告会、 交流会を行いましょう。そのことが、民医連事業所としての信頼を高め、必ず、患者増、利用者増につながります。
3.共同組織月間(10~11月)では、すべての組織が、仲間ふやし、支部・班づくり、活動家づくり、増資などの具体的な目標をもち、必ず実現させましょ う。そして06年度中に全国的に330万を実現させましょう。月間では、8割以上を目標とします。患者・利用者・家族を共同組織に意識的に迎え入れましょ う。「いつでも元気」の純増2000部を実現しましょう。
4.高齢者の生活・医療・介護は今、矛盾の焦点です。月間の一環として、全職員・共同組織の運動として2万人の「高齢者生活・医療・介護実態調査」にとりくみます。大きく成功させましょう。

3)ナースウェーブ、ドクターウェーブの大きなうねりを創る
 看護署名は、8月現時点で60万筆を超え、第一回評議員会までに100万筆めざして、全国各地で創意あふれる運動が展開されています。2月の看護師独自 の国会行動では、看護現場の実態をリアルに訴え、厚労省技官に「率直にいって予想以上」と言わせ、参加者も「現場の困難を発信しなければ看護改善は出来な い」と確信を深める場ともなりました。5月に開催した拡大看護委員長会議では、この間のとりくみを経験交流し、改めて決意を固めあいました。
 前進を生み出している要因として、(1)管理部を先頭に「構え」をつくったこと、(2)総会方針学習と連動して、あきらめない看護の実践報告や民医連看 護へのこだわりを語り合い、学びながら、それを力に現場の看護師が主体者となって運動をすすめていること、(3)新卒看護師研修への援助や支え合う職場づ くりがすすんでいること、(4)医労連や看護をよくする会などとの共同がすすみだしていること、が上げられます。看護改善運動は、医療改善運動の重要な部 分を占めます。さらに運動を強め、秋には請願を行います。8月首都圏を中心に全日本民医連として「看護師増やせ」のテレビコマーシャルを行います。
 看護師確保は熾烈を極めますが、民医連医療、看護の魅力を最大限押し出し、しっかりと体制もとり、看護実習受け入れや奨学生対策などを通じて、確実に確保につなげましょう。
 7月に5年ぶりに開催した医師委員長会議は、民医連の医師が発信源になって「医師を増やせ」のドクターウェーブを起こそうと固く意思統一しました。会議 では「OECD平均の65%(1000人当たり63位)しかいない日本の医師が3.5倍の外来患者を診ている現実を変え、まともな医療と私たち医師の未来 のために、日本の医者を増やす運動を呼びかけます」とのアピールを採択しました。医師委員長会議の問題提起は、過酷な勤務のもとで働いている医師を支え、 民医連医師として育ちあうこと、新卒医師の確保、奨学生の確保と成長に全力を上げ、仲間から退職を出さない集団として前進しようと呼びかけています。全て の県連で、民医連医師集団の存在意義を発揮させる議論とドクターウェーブの運動、医師政策づくりを開始しようではありませんか。

4)「学び・成長し・行動する」民医連職員に
 (1)職責者が方針を学び、自分の言葉で語る、(2)全職員の総会方針と民医連運動への確信を深める、(3)職員の中での「いつでも元気」の普及、を目 的にとりくんできました。前回と比べても職責者の読了、職員の学習会への参加などの指標で超えています。また、職責者や総会代議員が先頭に立って講師活動 を行っている経験や身近な事例を通じて学習の工夫している経験(「生存権を守る事例運動交流集会」「人権のアンテナの感度を高める交流会」)、など創意的 です。「日常の忙しさでアンテナの感度が鈍っている。今何が求められているか、自分の言葉で語っていきたい。」など感想にあるように、学習が、職場の実践 や運動を推進する力になっています。全国的には8月現在、職責者の75%が読了しました。8割以上の職責者が終了したのは25県連(岩手、山梨、福井、熊 本、鹿児島、宮崎が100%達成)、50%以上が40県連、50%以下が5県連となっています。月間中の学習会は3,625回、参加者は35,946人を 超え常勤職員の75%が参加する大きな運動となりました。約3割を占める職責者が全国方針を学び、民医連運動への確信を深め、職場運営に生かすことが重要 です。我流で前進出来る状況にはありません。民医連運動の推進する力は全職員の民医連運動への確信にこそあります。医師集団での学習も重視しましょう。今 回、職員のなかでの「いつでも元気」の読者比率調査を行いました。集計では常勤職員平均で35.8%であり、県連別最高は77.9%、最小は7.2%とい う状況です。常勤職員比最高の県連では、非常勤職員も41.2%でした。引き続き意識的なとりくみをすすめましょう。

5)民医連経営を守る
 医療経営をめぐる情勢は、一変しています。医療機関つぶしのターゲットは中小病院に当てられ、地域で最も身近で利便性の高い中小病院がつぶされようとし ています。民医連経営も対応を間違うと重大な危機に直面しかねません。
 全日本民医連は、史上最悪のマイナス改訂となった診療報酬改訂にあたり、民医連経営を守りぬく決意を固めること、同時に、困難は運動と連帯の力で跳ね返 そうとの立場で「たたかいと対応」をすすめてきました。今回の改訂は、事前調査の結果、病院で4.6%、薬価で7.73%、歯科で7%以上のマイナスでし た。中でも、療養病床の多い病院では、松江生協リハ病院の▲33.3%をはじめ、20%以上の減収病院が続出するなど、病院の存続と地域住民の受療権に関 わる深刻なものでした。モニター22法人の4月結果集計では、前年比事業収益で▲5.1億円となり、これまで比較的安定していた無床診療所や薬局でも赤字 を出す事業所が目立つなど、厳しい経営結果です。更に7月からの医療区分の実施は、困難な状況に拍車をかけるものになります。
 全日本民医連は、いち早く再改訂を求める要望書を提出し、厚労省交渉や療養病床削減に反対する共同を呼びかけきました。歯科では独自署名をつくり運動を 強めています。東京大学名誉教授の多田氏を中心にリハビリ医療の日数制限は不当として独自の署名運動を強め44万筆集めています。4病院団体協議会が緊急 要望書を提出するなど医療関係団体も動きを強めています。再改訂を求める運動の強化や付帯決議に盛られた対策を確実に実施させる運動を強めましょう。
 同時に、どんな困難があっても民医連経営を守りぬかねばなりません。全日本民医連は、4月医科、5月歯科の対応交流会を開催しました。医科では療養病床 の選択肢、急性期・一般病院の方向、在宅支援診療所を主テーマに交流しました。取得可能な届け出や点数を遅滞なく漏れなく算定することが重要です。同時 に、現状の医療活動を正確に把握することを踏まえ総会方針が提起したポジショニングの議論と結びつけ深めていきましょう。厳しいときだからこそ、「苦悩 し、苦闘し」、全職員と共同組織の仲間の中で、現状認識と経営目標を一致させ、患者・利用者増の追求や経費節減、人員配置の見直し、増資などに英知を結集 しましょう。健診・保健予防分野では、07年度から手上げが始まり、08年度から健診・保健指導が保険者からアウトソーシングされます。受託基準にそった 整備が必要です。
 11月に「民医連病院経営管理者交流集会」を開催します。目的は、(1)病院をめぐる激変の情勢の共有、(2)今後の病院の戦略や改善の方向を学び交流 する、(3)地域医療の崩壊に立ち向かう民医連病院の方向と展望を提起する、です。155の民医連の病院の、それぞれの役割と展望を確かなものにする作業 に全力を上げなければなりません。全日本民医連は必要な経営情報を全国にむけて発信します。県連、全日本民医連への結集をよびかけます。全日本民医連は徳 島健康生協対策委員会を設置し、再生のための援助を開始しています。

6)全日本民医連共済の組織整備
 昨年の保険業法の「改正」に伴って、職員の「助け合い」「互助」を目的とした全日本民医連共済などの自主共済が「保険業」と認定される事態が生まれてい ます。現在のままでは、法令違反であるとの認定がされかねない事態です。この背景にも日米金融資本による市場拡大の狙いがあります。全日本民医連は民医連 共済とともに、金融庁に対し、適用除外を求めるとともに、県連、法人と密接に連絡をとり、必要な法的整備をすすめます。全日本民医連共済組合は9月の臨時 総代会でその方向を確認します。

おわりに~平和・人権・医療・経営を守るために~民医連職員の総決起を呼びかける

 今、日本の社会のあり方も、医療・社会保障をめぐって転換期にあります。軍事力や金の力を最優先させる価値観や路線が長く続く道理はありませんし、そうさせてはなりません。
 この秋、全職員が、民医連運動への確信を強めることを通じて、共同組織の仲間を増やしながら、職場から、地域から、「平和・人権・医療・経営を守る」創 意あふれるたたかいをつくりあげようではありませんか。目の前の患者さん、利用者さんにとことんこだわりつつ、明日を見つめ粘り強く奮闘しあいましょう。