第36期第1回評議員会決定
はじめに~評議員会の役割と課題認識、重点
第三六回総会から約六カ月が経過し、八月第一回評議員会を迎えました。この評議員会では総会方針に照らし て、(1)この間の実践と経験の交流を行い、学び合うこと、(2)参議院選挙の結果と今後の政府の平和・医療・福祉をめぐる政策動向を踏まえ、第二回評議 員会までの具体的なとりくみ上の課題を意志統一すること、を主目的に開催します。なお、本評議員会方針案は全面的な総括や展開を行うものではありません。
日本は今、歴史的な激動期にあります。ブッシュ米政権とそれに追随する政府・財界は、アジアと日本人二三 〇〇万人の犠牲の教訓から二度と戦争をしないこと、国と国との争いごとに一切武力を行使しないことを誓った憲法九条の放棄を主張し、自衛隊合憲、集団的自 衛権の行使を含む憲法改悪を二〇〇五年政治日程に乗せようとしています。また戦後の粘り強い運動によってつくりあげてきた人権思想の根拠、憲法二五条を切 り崩し、介護・生活保護・医療など社会保障分野における公的責任の後退・放棄、営利化を推しすすめようとしています。
第二〇回参議院選挙は、小泉政権がすすめてきた横暴な政治―年金改悪への怒り、平和への危機が国民の大き な世論となり、自民党は改選議席を獲得できず敗北し、公明党の協力で参院過半数を維持するにとどまりました。民主党が躍進し、護憲を掲げた共産・社民両党 はともに後退しましたが、国民は全体として小泉内閣の悪政に審判を下しました。それは、イラクへの米軍の出撃基地となっている沖縄で護憲・基地撤去をかか げる革新候補が圧勝したことや、この選挙前後の世論調査が示すように、国民は全体として「憲法九条を守れ」、「年金改悪ストップ」、「消費税増税反対」、 「医療・福祉の充実を」の明確な意志表示をしました。また民主党の躍進は、「自民か民主か」の選択という大きな流れがつくりだされたもとで選択したもので あり、必ずしもその政策に同意していたわけではありません。
私たち民医連の職員・共同組織の仲間は、政治のあるべき方向を探る学習と討論を行い、主権者としての選挙 権の行使・対話など国政に積極的に参加し、社会保障の充実・改憲阻止を掲げ、平和と人権を守る非営利・協同の組織の構成員として大いに奮闘しました。とり わけ若い職員の奮闘がありました。今後の国政選挙では「二大政党制」への動向が一層強まることが予測され、民医連としての選挙方針をよりわかりやすいもの にする必要があります。
今後、憲法九条改悪、消費税増税、介護保険改悪など日本の未来と国民生活に大きな影響を与える問題が政治 の舞台に登場してきます。年間三・四万人、毎日一〇〇人の国民が自ら「生命」を絶ち、その大きな理由が経済苦、病苦であるという、厳しく困難な状況が広 がっています。悪政がいのちを直撃するというまさに「政治が人を殺す」事態が進行しています。今ほど、「憲法九条を守り、平和と人権が輝く社会」への転換 を求めて、地域から、草の根から大きな共同を粘り強くひろげ、つくりあげていく重要な時はありません。大江健三郎氏や加藤周一氏など九氏が立ち上げた「九 条の会」のアピールへの賛同が急速に広がっています。ここに「平和と人権」を希求する草の根からの大きな潮流があります。民医連も積極的に支持し、五万七 〇〇〇人の職員、三〇〇万の共同組織の仲間から、大きな運動をつくり出していきましょう。水害で苦しんでいる新潟・福井の被災者への支援とカンパ、イラク 人道・医療支援募金を強めましょう。
総会後、私たち民医連が総力をあげてとりくんできた、自衛隊のイラク撤兵・人質救出運動、平和を守るとり くみ、年金改悪を許さない全国と地域でのとりくみ、六・五医療安全シンポジウム成功にむけた医療界・国民への働きかけと日々の医療・介護の営み、医師研修 成功にむけてのとりくみ等々…これら、すべてのとりくみが、「いのち」を何よりも大切にする社会づくりへの歩みにつながっていると確信します。
私たち民医連のすべての活動が、悪政にストップをかけ、平和と福祉の社会づくりの一助となることを願い、第三六回総会方針の全面的な実践、中でも以下の課題に全力でとりくみましょう。
1、「憲法を守る」創意的なとりくみを草の根から、 地域からまきおこそう
2、医療安全、医療と介護の質の向上にむけ、飛躍を かちとろう
3、10~11月「たたかいと運動、共同組織拡大」特別 強化月間にとりくみ前進しよう
4、2005年介護保険見直しにあたり、民医連と しての「たたかいと対応」を強めよう
以下、課題別の到達点と重点を提起します。
教育学習月間の前進をふまえ、引きつづき「教育・学習」活動を重視しよう
○学習を基礎に、「職場の教育力」(総会方針3つの教育力)を高めよう
○情勢学習、憲法学習を強め、「行動する職場」づくりをしよう
今年の教育学習月間は三~五月、全職員が「総会方針を自分のものとし、県連、法人、事業所、職場で具体化 させること」を目的にとりくみました。多くの県連で、創意的なとりくみが行われました。全国的には一八八六回、二万二八四六人が学習運動に参加しました。 今回重視したことは、職場づくりの「要」をなす職責者の読了と学習です。職責の「総会方針の理解と民医連運動への確信」の度合いが職場での様ざまな活動の 推進力を決めます。福岡県連では全職責が読了し、学習運動や民医連方針実践の先頭に立っています。総会後多くの県連が総会を開催し(三二県連)、全日本民 医連総会方針を踏まえた積極的な提起をしています。民医連運動への職員の主体的な参加を促すためにも、引き続き「学び」「成長」することを重視しましょ う。
全国青年JB実行委員会が発足し、北海道での次期JBにむけてとりくみを開始しました。全県連からの委員 の選出と、地協、県連、事業所レベルでのとりくみの援助を強めましょう。九月、福岡で第七回看護介護活動研究交流集会を開催します。一二月には看護委員 長・看護学生委員長会議を開催します。二〇〇五年一二月、第六次看護需給計画の見直しがすすめられる情勢のもと医療の現場から要求をあげていくことが重要 です。二〇〇四年度受け入れが九年ぶりに一〇〇〇人を割りました。二〇〇五年新卒受け入れの前進をめざして奮闘しましょう。
○すべての職場で具体的に受療権を守るとりくみをすすめよう
○毎月9日、 25日を 「平和と人権を守る行動デー」 としてとりくもう
「イラク・平和・年金・参議院選挙」のたたかいでは、全国各地で粘り強く奮闘しました。人質事件に際して は、医師をはじめ多くの職員が「いのちの大切さ」を訴え、各地で一気に運動を広げ、人質救出にむけて大きな力を発揮しました。その後も自転車平和リレー、 辺野古での基地建設反対のたたかい、劣化ウラン被害の学習とイラクへの人道支援募金のとりくみなど運動が広がっています。「平和といのち・人権を大切にす る連帯の輪」をいっそう広げていきましょう。
九月、北京でIPPNW総会が開催されます。一〇月には反核医師・医学者のつどいが北海道で開催されま す。積極的に位置づけ参加を組織しましょう。八月広島で開催された原水禁世界大会には多くの民医連職員、共同組織の仲間が参加しました。イラク人道・医療 支援募金のとりくみは約一〇〇〇万円(八月二〇日現在)となりました。多くの人びとへ広げ八月末までに二〇〇〇万円の目標を突破しましょう。来年は被爆六 〇周年を迎えます。「いま、核兵器の廃絶を~ヒロシマ・ナガサキをくりかえさないために」の国際署名を来年五月にニューヨークで開催されるNPT(核不拡 散)再検討会議および八月の原水禁世界大会にむけて一〇〇万筆めざして意識的にとりくみましょう。原爆症認定集団訴訟へ支援を強めましょう。
参議院選挙は二一世紀初頭の政治動向に大きな影響を与えるものでした。全日本民医連と各地の県連、事業所 は、この選挙の意義と争点を正面から訴え、民医連新聞号外一〇〇万枚を発行し、学習と対話をすすめました。中でも職員の「政治参加」を重視しました。今度 の参議院選挙で毎日新聞が行った全候補者アンケートでも、自民党、民主党などの少なくない候補者が「日本も核武装を」「憲法九条見直し」と回答していま す。平和と憲法を守るたたかいは、これからが正念場を迎えます。全日本民医連は、憲法手帳、パンフレットを発行し、学習運動を提起しました。今後、署名な ども提起していきます。憲法を守るために必要なことはすべて行う立場から創意を生かして大いにとりくみを強めましょう。
また全日本民医連は保団連など多くの医療関係者と共同して、先の九氏がよびかけた「九条の会」アピールを支持し、運動を広げるために、「『九条の会』アピールを支持する医師・医学者の会」はじめ各職能、地域での会の結成と運動強化のために力を尽くします。
年金法は審議、参議院選挙を通じて問題点がいっそう鮮明になりました。「一〇〇年不安」を続けるわけには いきません。秋からの臨時国会では、あきらめず、粘り強く「年金『改革』法の実施中止」、「自衛隊のイラクからの撤退」を求めるたたかいを強めましょう。 また、二〇〇五年介護保険法の改悪やさらなる医療改悪や消費税増税を許さないとりくみを強めていきます。
今後、全日本民医連として九条・二五条にちなんで毎月九日、二五日を平和と人権を守る行動デーとして位置づけ、全国的なとりくみをよびかけます。
受療権侵害がいっそうすすんでいる情勢のもと、人権侵害を許さない立場からも、すべての職場から受療権を守る具体的な行動を行いましょう。キーワードは「学習」「地域に打って出る」「共同を広げる」です。「人権輝く」「行動する」職場づくりをすすめましょう。
「月間」で共同組織の飛躍をはかり、安心して住み続けられるまちづくりのとりくみを前進させよう
○年度末までに310万共同組織、5・5万『いつでも元気』を実現しよう
○全職員と患者さん、共同組織の仲間に正面から『元気』購読を訴えよう
○健診、出資金、運動などの月間目標を定め、全職員のとりくみとしていこう
五月末現在、共同組織構成員は三〇一万五八一三で、ここがスタートラインです。二〇〇四年度末には三一〇 万共同組織を必ず実現しましょう。各県連の目標をたすと十分に達成可能です。一〇~一一月特別強化月間にとりくみます。共同組織の活動を質量とも強めるこ とは、健康づくり、まちづくり、医療と福祉の充実など「非営利・協同」の運動を地域ですすめる「担い手」を育てる壮大なとりくみでもあります。「月間」は 職員が意識的に「地域に打って出る」機会ともなります。大きく成功させましょう。
来年六月に岡山で開かれる「第八回全国共同組織活動交流集会」に向け、今期全国連絡会が三〇県連の委員でスタートしました。日常的な経験の交流と連帯が始まっています。全県連からの参加を追求しましょう。
『いつでも元気』は現在、五万四〇〇部の到達です。沖縄や鹿児島では新入職員に購読を正面から訴え、増誌 となっています。毎月五〇〇通以上の読者はがきが寄せられるなど、読者からは「勇気が湧く、元気が湧く雑誌」と大きな反響があります。共同組織の仲間、職 員と民医連をつなぐ雑誌です。『元気』をすべての職員に、共同組織の仲間に、そして患者さんやつながりある人には、購読の訴えを通じて、民医連への理解を 深め、共同組織の仲間増やしをすすめましょう。二〇〇四年度末、五万五〇〇〇部を必ず実現しましょう。
医療安全、医療の質向上にむけて とりくみを、いっそう強めよう
○医療安全、 質の向上にむけ、 各県連・各事業所の課題を明らかにして意識的にとりくみ、 第2回評議員会を迎えよう
○ 「なくそう医療事故、 高めよう患者の権利」 のシンポの成果を学び、 第三者機関設置にむけ、 全県連で懇談、 共同を広げよう
「なくそう医療事故、高めよう患者の権利」シンポジウムにむけて、全国九〇〇〇カ所の病院へシンポジウム の案内、全日本民医連の第三者機関設置要望書、『みんなでとりくむ注射事故予防』『みんなではじめる感染予防』『転倒・転落事故を予防するために』各パン フレットを送付し、また中央および各地の医療関係団体などに申し入れを行いました。送付を通じて九三病院から一九八五部(七月二五日現在)の注文が来てい ます。六月五日のシンポジウムには勝村久司氏、加藤良夫弁護士、森功氏という医療事故をなくすために力を尽くされている人たちの参加を得、また民医連内外 五一二人の参加で、内容的にも大きな成功を納めることができました。医療界と国民に正面から働きかけるこうしたとりくみは、民医連の歴史の中でも画期をな すものでした。
このシンポジウムでは、医療従事者側からも医療事故被害者側からも第三者機関の設置の必要性が出され、医 療事故問題の解決、被害者救済の上で、設置が強く求められていることがあらためて確認されました。同時にシンポジウムで被害者の方がたから一様に出された 医療界の自浄能力を求める声を、真摯に受け止めねばなりません。医療機関として事実に謙虚に向き合い、医療事故防止、医療安全向上へむけてのいっそうの意 識改革とシステムアップ、自己点検に力を注ぎましょう。また、医療安全の上で、欧米に比べても著しく少ない医師、看護師などの配置基準の改善にむけたとり くみが重要です。
第三者機関の設置にむけてイメージをより豊かに練り上げ、共同を広げ、さらに大きなうねりをつくっていきましょう。この分野で全日本民医連として大いにイニシアチブを発揮していきます。各地での共同と実践をひろげるとりくみを重視しましょう。
総会後に発生した「城北病院向精神薬盗難事件」は、システムや基準が現場で貫かれているかどうか、そのこ とを日常に点検しチェックするしくみがあるかどうか、さらには医療管理、人事管理、施設管理など、管理運営の水準をいっそう高めていかねばならないことを 示しました。全日本民医連はこの事件を通じて全事業所へ自己点検をよびかけました。
また医療安全向上の立場から「警鐘的事例」を通じて医療現場での具体的な点検と改善、フィブリノゲンの問 題で民医連の方針に基づく徹底をよびかけました。これらの提起に対し、県連、事業所の「受け止めと実践」において格差が生まれています。医療安全と質の確 保・向上の課題は、国民の切実な願いに応える医療機関の「使命」ですが、第三六回総会方針が提起するように「まだ緒についたところ」です。全国各地のすす んだ経験、痛恨の経験から引き出された「発信」を「自らの問題」として受け止め実践に生かしていくことに力を注ぎましょう。この分野で大いに県連機能、管 理機能を高めましょう。
来年度実施される「個人情報保護法」による患者情報の保護などは、医療機関にとってもきちんとした対応が求められる分野です。全日本民医連としての対応方針を準備しています。
○介護保険制度改悪を許さず、改善にむけて、実態を明らかにし、自治体、国にむけての要求をまとめ提言しよう
○各事業所における介護事業の到達点を踏まえ、介護の質の向上、事業の整備をすすめよう
○各事業所は積極的に「介護予防」活動にとりくみ、共同組織とともに「安心して住み続けられるまち」づくりを推進しよう
介護保険制度が発足して四年が経過しました。全日本民医連の各事業所は居宅介護事業所によるケアプラン作 成、訪問看護、ヘルパー派遣、デイケア、デイサービスなど在宅事業、老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホームなど様ざまな施設展開、さらには行 政や地域の他事業所との連携をすすめるなど、地域で地道に、力強く介護の事業と運動をすすめてきました。しかし、経済力の格差が介護の格差にそのままあら われ、もっとも介護を必要とする人が介護から遠ざけられるなど、介護保険制度がめざした「介護の社会化」とはほど遠い実態があります。
全日本民医連は介護の現状改善と改悪を止めさせるために、現場の実態と要求を持ち寄り、厚生労働省交渉を 行いました。また厚労省「福祉用具給付の新たな基準」(軽度要介護者に対する福祉用具の給付制限)は、「軽度者の保険はずし」の前倒し実施であり、保険給 付の縮小をもたらすものとして厚労省に対して撤回を求め、意見書を提出しました。制度見直しの論点となっている「障害者支援費制度との統合」について、障 害者団体との懇談・情報交換を行いました。
政府・財界は、来年度予算編成の基本的な考え方(二〇〇四年五月一七日財政制度審議会)で「歳出削減」の 中で、「年々増加する社会保障費の抑制を図ることは、我が国財政上、最大の構造問題である」として社会保障費削減にターゲットを絞り、「自立・自己責任」 を強調しています。そして「公的給付の抑制」と「保育、介護、医療等の分野における規制改革の推進、民間保険の思い切った活用」を打ち出しています。
中でも来年度、見直しの時期を迎える介護保険制度改革(「改悪」)においては、自己負担額二~三割へ、ホ テルコスト、食事代など介護保険からの除外、要支援・要介護Iなど軽度者を介護保険対象から外す、障害者支援費制度との統合、二〇歳からの保険料徴収、保 険者機能の強化、民間株式会社の参入・競争の促進などの方向も打ち出されています。介護を必要とする人の人権を軽視し、財政的理由からだけの介護保険改悪 を許すことはできません。七月末、厚労省(介護保険部会)から「介護保険制度見直しの意見」が提示され、二〇〇六年度実施に向け、二〇〇五年通常国会への 法案上程の準備がすすめられています。全日本民医連として、現在明らかにされている主要な「論点」に対して政策的検討をすすめ、第一回評議員会には「二〇 〇五年介護保険制度見直しに対する『たたかいと対応』の基本視点」を提案しました。
「見直し案」で介護保険の対象からはずすことが検討されている要支援、要介護Iの人は介護保険利用者の約 五〇%を占め、この人たちを保険から除外することは、介護をますます後退させることにつながり、極めて重大な問題です。山梨、長野民医連などでは軽度要介 護者の保険給付制限による具体的な影響の掌握を行い、もしそうなれば「どのような事態となるのか」、具体的にアピールしています。全国各地で具体的な実態 調査を行い、実態に基づいた運動を現場からすすめましょう。そして全国各地で旺盛にシンポジウムや学習会を行いましょう。
総会方針で提起した立場を踏まえ、ますます期待が高まる介護分野の運動と事業展開にむけてとりくみを強めましょう。すすんだ経験から大いに学び実践に生かしましょう。
各事業所に対する指導・監査が強まっています。あらためて法的整備を法人の課題として位置づけ、「事業所・担当者まかせ」にせずに必要な対策を講じること、法人内での内部監査や相互点検のとりくみ、県連や地協規模での情報交換や経験交流をすすめることが重要です。
03年度決算の特徴をふまえ、「全職員参加」の経営活動を強めるため、管理者のリーダーシップを発輝しよう
○経営をめぐる状況、 課題を全職員、 共同組織の中に明らかにし、 共有し、 経営を守るとりくみをすすめよう
○地域の医療・介護要求を積極的にとらえ、 患者・利用者増、 出資金・地域協同基金など総合的なとりくみを強めよう
総会で決定した経営困難組織支援規定は積極的に受け止められ、連帯基金は、様ざまな形態がありますが、こ れまでにほとんどの県連で資金準備がすすみつつあります。二〇〇三年度決算は、前半のきびしい経営状況(一二月まででモニター法人の六割が赤字)から、き びしい決算結果が予想されていましたが、七七・五%の法人が黒字となり、この数年の状況を維持することができました。医療収益が減少し、介護収益が増加、 全体では前年度事業収益を確保したものの支出抑制による効果が特徴です。医療・経営構造転換に伴う人員配置の見直しや労働効率を高めること、医師労働の適 正化は引き続き重視すべき課題です。パート医師などの力も借りて積極的な保健・予防活動を展開することや、介護事業の総合的展開を通じて増収をはかるとり くみを重視する必要があります。保健・予防活動、介護事業などでは全国のすすんだ経験から積極的に学びましょう。
福岡・健和会はじめ福岡県連各法人の経営活動のとりくみは教訓的です。健和会の民医連的再建を県連の第一 義的課題とし、医師、事務幹部の異動・交流促進、全国的支援、急性期と療養型展開、事業所の機能分担、地域連携など積極的・能動的な医療・経営構造の転 換、公認会計士の援助も受けた科学的な経営管理の推進、徹底した職員、職責の教育活動と主体的な参加のしくみなど、総合的なとりくみの成果といえます。そ のことが支援した法人も含めた各法人のレベルアップをかちとり、県連機能を強化させています。全日本民医連健和会再建対策委員会は再建の見通しがたったこ とを踏まえてその任務を終了しました。
全職員の中で経営に関する「目標と情報」を共有し、経営改善への主体的な参加をかちとることを重視する必 要があります。中でも健康づくりへの積極的寄与、受療権を守り患者増につなげる意識的なとりくみを強めましょう。「たたかう経営」の確立こそ、民医連経営 の真骨頂です。
一方、この間いくつかの法人で新たな経営困難が表面化し、全日本民医連、地協として援助を行っています。 経営困難の背景には、経営に関する目標と情報の共有不足、資金管理の問題など管理運営上の困難があるように思われます。我流を排し、民医連の持つ優位性 ((1)かかげる理念と医療・福祉活動への信頼、(2)職員と共同組織の結集、(3)情報の公開含む民主運営、(4)全国的な経験・教訓)を基礎に求めら れる管理水準を引き上げることに真剣にとりくみましょう。「全職員参加」の経営活動を組織することは経営幹部の大きな役割です。全日本民医連は経営幹部の 力量向上にむけセミナーなどの実施を検討します。
○04卒研修の到達点と課題を明らかにし、 研修成功に全力を尽くそう
○05卒、06卒受け入れにむけ、目標を持ってとりくみを強めよう
○低学年から高学年まで全学年、全学生への働きかけを強め、民医連の医療への共感を高めよう
今年度研修を開始した医師一六四人の研修を必ず成功させねばなりません。そのためにも指導医養成と研修条 件の整備を図り、さらに民医連の優位点である地域密着、人権や患者第一を貫く医療活動の特徴を、研修に大いに発揮させましょう。地協を中心に、指導医養成 講座の開催、外部講師を招いての教育回診などの実施、民医連内研修ネットワークづくり、地協研修センターの確立、研修医の交流が始まっています。すすんだ 経験から学びあい、成功させましょう。
今年度研修を開始した研修医に対し、少なくとも今年度内に三年目以降の研修の具体的な提示が必要です。民医連以外で研修中の医師にも呼びかける構えで、各地協、県連での準備をすすめましょう。
医師研修への情熱、しくみが来年度の研修希望者への大きなインパクトとなります。〇五卒の決意者は一一〇 人の到達です。マッチング日程が早まったことや大学の巻き返し等を考えると、民医連奨学生がこの一〇年最低の水準にとどまっている〇六卒(到達六三人)へ の働きかけとあわせ、この夏から秋のとりくみが重要です。医師の確保と養成に成功することは、民医連運動の根幹に関わる問題です。第三六回総会方針で提起 した管理の重要な柱として位置づけ、今年度一五〇人以上の研修参加をめざしてとりくみましょう。
私大医学部自治会の医学連加盟の機運、「憲法」問題を正面にすえる「医学生のつどい」など医学生運動の新 たな高まり、協力・共同、奨学生活動が強まっています。しかし、低学年、中学年への民医連としての働きかけが弱まっています。「医学生の民主的成長を援助 すること、そして民医連運動の後継者を育成すること」が民医連のこのとりくみの本道です。新入生から低・中・高学年まで全世代、全学生に対し、民医連の魅 力を熱く語り、実習や見学などをよびかけ、奨学生確保のとりくみを重視しましょう。民医連奨学生集団への働きかけを重視しましょう。九月、三年ぶりに医学 生委員長会議を開催します。一〇月には青年医師交流集会を開催します。多くの青年医師に参加を呼びかけ大いに成功させましょう。二〇〇六年度から実施され る歯科医師臨床研修制度への対応を地協中心に強めましょう。
第三六期理事会体制の再編整備を行いました。特徴は、病院管理・医師管理プロジェクト、医療・介護保険政 策プロジェクト、また医師養成・医学生委員会を四役会議のもとに設置し、この分野でのとりくみを強めていく体制をとったことです。第三六回総会方針で提起 した管理運営と医師問題打開に関する方針は積極的に受け止められています。同時にこの分野でなにか「うまい手」があるわけではありません。一つひとつの課 題を明確にし、具体化し、計画的にレベルアップしていくことが重要です。
こうしたとりくみの一環として七月に今期第一回病院長会議を開催しました。管理と医師問題で前進をめざす ための中心となる院長機能の確立にむけて大いに交流しました。また病院の管理組織・運営の水準を引き上げることが、医療安全、医療の質の向上や医師の役割 発揮の上で極めて重要であることがあらためて確認されました。それらを実践する上の課題として、トップ機能を構成する院長、事務長、総師長間の日常的な情 報および問題認識の共有、病院長の管理研修や管理業務の具体的保障、副院長との役割分担などがあげられました。この会議を受けてすべての県連・法人理事 会、病院管理部などで院長機能について議論を開始することを呼びかけます。全日本民医連として院長メーリングリストを通じた日常的な情報交換をすすめま す。今期、継続的に病院長会議を開催し、役割強化にとりくむ構えです。一一月、第三回トップ幹部研修会を開催します。