Dr.小池の世直し奮戦記 「消費税を上げないとギリシャみたいになる」?
ギリシャから始まった財政危機、経済危機がヨーロッパ全体に広がっています。「日本も消費税を増税しないと、ギリシャのようになってしまうのでは」と心配されている方もおられるでしょう。はたして本当でしょうか。
国債を持っている人が違う
日本とギリシャには、いくつかの大きな違いがあります。
まず、誰が国債を持っていたのかという問題です。ギリシャでは、国債の七割以上を海外の投資家(銀行、個人など)が持っていました。対する日本では、国債のほとんどが国内で保有され、海外投資家の割合は五%程度にすぎません。
ギリシャでは、政府による財政赤字の隠ぺいが発覚したとたん、海外の投資家らが損失を恐れて「われ先に」と国債を売り払ってしまったために、国債の価格が暴落して、国の財政が破たんしました。海外投資家の比率が低い日本では、このような事態は簡単には起きません。
国全体が赤字かどうかが違う
二つめは、家計部門や企業部門を含めた国の経済全体が赤字かどうかという違いです。ギリシャは国の経済全体が大赤字でした。そのため、海外投資家が資金を引き揚げると国の財政だけでなく、経済そのものが行きづまってしまったのです。
これに対して、日本では最近減ってきているとはいえ、貿易の経常黒字が続いており、巨額の海外金融資産と外貨準備を持っています。大企業(資本金一〇億円以上)の内部留保は二六一兆円(二〇一〇年度)もあり、体力はありあまっています。
「ユーロ」への参加が違う
三つめに、ギリシャがヨーロッパの共通通貨「ユーロ」の参加国だという違いです。
実は、ギリシャ国債を買っていた海外投資家は、主にドイツやフランスの銀行でした。言うまでもなく、同じユーロで取引している国々です。
もしも日本の銀行が外国の国債を買おうとすれば、いくら金利が高くても、円高になったら大きな損失が出て、金利のメリットなんて簡単に吹き飛んでしまいますから、慎重にならざるを得ません。
ところがドイツやフランスの銀行はそんな心配をせずに、日ごろ使い慣れたユーロでギリシャ国債を買うことができます。この結果、ドイツ企業などの余ったお金がギリシャに大量に流れ込んで、ギリシャは自国の返済能力をはるかに上まわる借金を抱えこんでしまったのです。
消費税増税はくらしも財政も破壊
もちろん、すぐにギリシャのようにならないからと言って、日本ものんびりしていていいはずがありません。財政危機を打開し、社会保障を充実させるために は、軍事費などを聖域とせずに、税金のムダを一掃しなければ。そして、富裕層や大企業に応分の負担を求める改革が必要です。
そして輸出ばかりに頼るのではなく、国内の需要を活発にするため、賃上げや正規雇用を増やして、国民の所得を増やす経済改革を進めなければなりません。
こんなときに消費税増税などもってのほかです。くらしを壊し、景気を冷え込ませ、国・地方の税収も減らしてしまう消費税の増税は、何としてもくいとめましょう。
いつでも元気 2012.4 No.246
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