北海道/宗谷医院 厳寒の地で熱い想いを…
宗谷医院は1995年5月に開院し、今年5月で丸15年になります。開院当初は有床診療所でスタートし、介護保険施行時に訪問看護ステーションを併設。居宅介護支援・デイサービスを開始しました。2005年には医師体制の困難もあり無床診療所となりました。
2009年4月からは家庭医コースの後期研修を行い、現在は医師2人で診療を行っています。
宗谷医院開院の歴史
1970年代、当時の北海道教職員組合宗谷支部の要請により北海 道勤医協が離島健診を開始しました。このときが健診団の世話をしてくれた教職員と、勤医協との初めての出会いでした。そこで教職員が見たのは、事務よりも 一生懸命に机を運ぶ医師の姿や患者と同じ目線で説明してくれる看護師の姿でした。教職員の皆さんはその姿に感動したそうです。
健診に参加した職員は、この健診を通して宗谷の深刻な医療事情を肌で感じるとともに、そんな中でも島を愛し、明るく元気に頑張っている島民の姿に感動したのです。
この離島健診を契機に宗谷に勤医協の事業所をつくる運動が始まりました。市民は、「おばけと勤医協は見たことがない」と、本音とも冗談ともつかずに言い ながら、それでも自分たちがつくる病院の開設を信じ、地道に医療懇談会を開いて地域の夢や要求を聞き、建設のための資金を集めました。
そして1995年、宗谷住民の熱い想いを受けて宗谷医院が開院したのです。
宗谷医院開設後、市民ぐるみの運動へ
市民のみなさんと共につくった宗谷医院が一番大切にしてきたのは、「患者の立場に立った医療をめざす!」「住民・患者と共に歩む医院になろう」でした。
日常の医療活動はもちろん、健康保険法の見直しの際には、「病気になっても安心して病院にかかりたい、お金のあるなしで医療に差別があってはならない」と呼びかける市民ぐるみの運動が広がりました。
一万人を超える市民の声が署名に託され、「医療と介護保険充実をもとめる」市議会意見書が国に届けられました。
2002年には、特別養護老人ホーム建設運動も行いました。宗谷地域はオーバーベッドで特養建設は無理と言われていましたが、市民ぐるみの運動の中で行政も特養の必要性を認識し、稚内市内に特養が建設されました。
2006年にも医療・福祉・教育を充実する請願運動を行い、稚内市議会で全会一致で採択されました。
地域とともに育ちあいを
宗谷医院には、医学生実習や初期研修医の地域保健研修でも多くの 医学生や初期研修医が訪れます。「患者の立場に立つ医師になってほしい」という思いから、医療機関と地域が一緒になってその地域の医療を支える運動にとり くんでいることなどを感じてもらうよう心がけています。
稚内市内の「進路探検医師講座」は、稚内の教職員と北海道民医連の青年医師が連携して、中学生に「医師の仕事のすばらしさ」を感じてもらう企画です。生 徒に将来の夢を持ってもらうこと、その夢にむかって頑張る大切さを伝え、その医師講座の参加者が10年後に稚内で医師となり、後輩たちに同じように伝えて もらいたいとの願いが、教職員だけでなく宗谷医師会長や稚内市長にも共通のものとなりました。参加した青年医師も生徒から元気をもらえました。
昨年中学生に総合学習の一環として授業を行った医学生は、この春北海道民医連で研修を始めます。
宗谷医院は、これからどんな医療を行うか、どんな医師研修を行うか、地域と共に夢を語りあい、一歩一歩とりくみを進めていきます。
(宗谷医院 事務長 三瓶 峰智)
「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2010年3月号.No.451より