Dr.小池の国会奮戦記 「保険証の取り上げ許さず」の世論で 滞納世帯からの一律取り上げにストップが
日本は「国民皆保険」の国でした。「でした」というのは、今、その大原則が揺らいでいるからです。33万を超える世帯から「保険証の取り上げ」がおこなわれているのです。
「生存権」実現のために
日本では60年代はじめまで、農業や自営業者など、人口の3分の1にあたる約3000万人が、医療保険に加入していませんでした。こうしたなかで、医療 を受ける権利を保障するため、全国民の加入を義務づける新しい国民健康保険法が制定され、1961年4月から全国すべての市町村で国保事業が開始されま す。日本国憲法25条に定められた「生存権」を実現するためでした。
国民健康保険法の第5条では「市町村又は特別区の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする」とされています。住所がある人はすべて加入する。これが国保の仕組みなのです。
保険証取り上げが激増し
その後、失業者や非正規雇用の労働者が、企業の健保からはじき出され、大量に国保に加入するようになりました。こういうときこそ国が財政的に支えなけれ ばならなかったのですが、逆に国庫負担は削減につぐ削減。その結果、保険料は支払い能力を超えて引き上がっていきます。
そして97年に介護保険法が制定されたときに国保法も改悪され、保険料を滞納した世帯からの保険証の取り上げが市町村の義務とされます。当時の自民、民主、社民などが賛成し、その後の自公政権で実行されました。各政党の責任は重大です。
保険証の取り上げが自治体の義務になってから、滞納世帯からの保険証の取り上げ=「資格証明書」の発行が激増します。資格証明書になると、窓口での医療 費支払いは10割負担になります。とても払えないと受診をあきらめ、民医連の調査でもあきらかなように、病気を悪化させて亡くなる人まで出ています。
高すぎる保険料こそ「悪質」
1月20日、政府は私の質問主意書に対する答弁を閣議決定しました。住民が病気で医療費の一時払いが困難であることを申し出れば、短期保険証を発行で き、そういう場合は「保険料を納付することができない特別な事情に準ずる状況にある」という考え方をふまえ、保険証取り上げの是非を検討すべきだとしまし た。
前の国会では、滞納世帯であっても、中学生以下の子どもには短期保険証を発行できるとする国保法の改正も実現しました。「保険証の取り上げは許さない」という、国民の世論と運動が、政治を動かしています。
もとはといえば、国保の保険料が高すぎるのが大問題です。政府は「払わないのは悪質滞納者」であるかのように描きますが、07年度の滞納は実に453万世帯です。加入している5世帯に1世帯が払えないような保険料こそが「悪質」なのです。
日本国憲法の「生存権」を実現するために、払える保険料、窓口負担で、安心して医療を受けられる国民健康保険をつくりましょう。
■こいけ・あきら 1987年東北大卒業後、東京民医連で小豆沢病院、代々木病院などに勤務。内科医。1996~2004年全日本民医連理事、1998年から参議院議員。
いつでも元気 2009.4 No.210