(得)けんこう教室/口腔カンジダ症/治療の基本は抗真菌剤でのうがい
武田 理 宮城・古川民主病院歯科
カンジダ症とは、カビの一種である真菌による感染症で、おとなだけでなく、乳幼児もかかる病気です。口腔や消化管、皮膚など、決まった場所に集中して症状があらわれるのが特徴です。今回は、口内炎とまちがわれやすい「口腔カンジダ症」について紹介しましょう。
体の抵抗力がおちたときに
「口腔カンジダ症」は、口腔内に棲息するカンジダ菌(主としてカンジダ・アルビカンスという菌)が、過剰増殖、形態変化することにより発症します。
この菌は、口腔内にもともとある常在菌であるため、健康な人であれば発症することはほとんどありません。
高齢者や乳幼児など体力の弱い人や、糖尿病、がんの治療などで体の抵抗力が低下したときに、菌が増殖しやすくなります。
舌や粘膜に白いコケが
症状は、舌や口蓋(上あご)など口腔内の粘膜に、はがれやすい白いコケのような膜(白苔(はくたい))が付着します。はがすと赤く腫れたり、出血したりします。また、舌の表面に腫れと萎縮が強くみられる場合や、ただれをともなうものもあります。
さらに、舌が痛む、味覚がおかしい、違和感があるなど、患者さん本人が自覚症状を訴えてくることもあります。これは、自立度の低下した高齢者や、寝たきりの患者さんに多いといわれています。
口腔カンジダ症の分類
口腔カンジダ症は経過および症状の相違によって次の4つに分類されます。
(1)急性偽膜性カンジダ症
小児や老人に多く発症します。またHIV感染や糖尿病、腎不全の患者さんやがんの放射線治療や化学療法などによって体の抵抗力(免疫・感染防御機能)が低下したときにもおきやすくなります。ぜんそくなどでステロイド薬を使っている場合も注意が必要です。
白苔の状態や自覚症状をみて診断します。
(2)急性萎縮性カンジダ症
抗菌薬、ステロイド薬などの長期投与によって、口の中の常在菌のバランスが崩れたときにおきやすい。舌にあらわれることが多く、ヒリヒリした痛みや灼熱感を訴えるのが特徴です。
もともとの病気や服薬歴などによって診断します。
(3)慢性肥厚性カンジダ症
カンジダ性白板症とも呼ばれ、カンジダ症が長びいて、慢性になったものです。白い膜は粘膜に固着して粘膜上皮層自体がまだら状に厚く固くなります(白板症)。
おきやすいところは、口唇の両端や頬の粘膜です。頬の粘膜では、しばしば両頬におきます。ここまでくるとはがれにくく、悪性化しやすくなります。
真菌が粘膜の上皮層深層部に認められるかどうかが診断のポイントです。
(4)慢性萎縮性カンジダ症(義歯性口内炎)
義歯(入れ歯)を外さずに入れっぱなしにしている人に多く見られます。
通常は口蓋粘膜の総義歯が当たる面にできます。多くは無症状ですが、時に患部の浮腫や痛みを訴えます。また口角炎(口の端のただれ)もこの型のカンジダ症に関連して生じることがあります。
検査法
正確な診断は病変部のある部位を採取して、顕微鏡でみてカンジダ菌の有無を検査すればわかります。最も確実なのは培養検査ですが、検査結果が出るまでに48時間くらいかかります。
うがいやぬり薬でほとんど治る
口腔カンジダ症の治療には、抗真菌剤の入ったうがい薬、ぬり薬(軟膏)、内服薬を使います。数日間、うがいやぬり薬をつづければ、ほとんど治ります。
うがいの場合は、5分間、口の中によく含んでから、外に吐き出します。
難治性の場合には、うがいやぬり薬の外用薬だけでは不十分なことがあります。その場合は抗真菌剤の内服が必要になります。
抗真菌剤は、一般的に腎臓に障害をおこす作用があるため、総投与量や期間にそれぞれ配慮しながら治療することが大切です。
口の中を清潔に
治療とともに重要なのは、常在菌であるカンジダ菌を増殖させないことです。
再発予防には、何といっても口腔内を清潔に保つことです。義歯の方は、こまめにはずして清掃をおこない、口腔内環境を整備します。
義歯の材質(レジン)には、カンジダ菌が非常に付着しやすいため、水だけでなく、ブラシを使って洗い、義歯洗浄剤も使うと有効です。口の中の衛生状態をよくしておくことが必要です。
基本的に検査、治療ともにそれほどむずかしい病気ではありません。舌に違和感を感じたり、白いものが付着していると思ったときは、早めに専門医に足を運び、診察されることをおすすめします。
イラスト・井上ひいろ
いつでも元気2009年4月号