第18回精神医療・福祉交流集会開催 ~格差社会・成果主義を超えて~
第18回精神医療福祉交流集会が11/7~8、弘前市にて「これからのメンタルヘルス~格差社会・成果主義を超えて~」をテーマに延べ156名(17県連、23法人、37事業所)の参加で行われました。
1日目は基調報告、全体講演、分科会および教育講座が行われました。松浦委員長の基調報告では、メンタルヘルスや高齢者医療の分野など精神医療の役割が 高まる中で他科との連携がますます必要になっていること、また今年3月に精神医療委員会が発表した「心理的負荷による精神障害に係わる業務上外の判断指 針」に触れ、社会的に発信していく活動を強めていくことも強調されました。
全体講演では生協さくら病院名誉院長の西脇巽医師が「最近の精神鑑定の動向について」と題して、過去の精神鑑定の経験と今後導入される裁判員制度にもふれ ながら講演されました。テーマ別に行われた分科会(全49演題)では、チーム医療や社会復帰等、各地の取り組みが紹介されました。教育講座は藤代健生病院 の石田薬剤師による「抗精神薬SSRIを科学する」、京都民医連中央病院の北村医師による「精神分析的精神医学入門」の2講座が行われ、いずれも大変参考 になる内容でした。
2日目はシンポジストにメンタルクリニックみさと所長の天笠崇医師、東京法律事務所の笹山尚人弁護士を迎え、「これからのメンタルヘルス~格差社会・成 果主義を超えて~」をテーマに、シンポジウムが行われました。天笠医師は1998年の自殺者の急増と1995年(「3つの元年」:リストラという名の整理 解雇、成果主義賃金制度の導入、労働者派遣法の改悪による非正規雇用の増加)に着目して、成果主義、ワーキングプア、格差の拡大とメンタルヘルスの関連に ついて話されました。展望を開く手がかりとして病気や障害を生活と労働の実態と関連付けて見ることや一次予防の重視、周囲の人や社会との「つながり」を大 事にすること、などが話されました。笹山弁護士は、職場におけるハラスメント事案の特徴を紹介しながら、ハラスメントが職場の「負」のエネルギーの止揚と してあらわれていること、連帯するべき労働者に成果主義導入や非正規雇用の拡大により差別と分断がもちこまれている構造について触れ、青年ユニオンの活動 を紹介しながら労働組合の役割を強調されました。フロアから、非正規雇用や職場のハラスメントの実態について発言があり、青森県でも成果主義を導入された 労働者が、心と体がむしばまれていることが浮き彫りにされ、シンポジストは、「疲弊している社会への展望として、職域の枠に留まらない連帯と主体性の広が りが重要だ」と述べました。また、集会を締めくくる文化講演は「中国の古典に学ぶ『いい加減さ』のすすめ」と題して、弘前大学教育学部の山田史生教授が ユーモアたっぷりに講演し、会場を笑いで包みながら、「これからのメンタルヘルス」についてヒントをいただきました。
現地実行委員会のご協力により、大成功に幕を閉じた第18回精神医療福祉交流集会。夕食交流会では各県の参加者が輪になって「ねぶた」を跳ね、困難な中 でも精神医療ネットワークが広がる息吹を感じました。次回はより多くの県連からの参加者が増えることを期待します。