アピール 肺がん、肺線維症、間質性肺炎の胸部CT再読影運動を提起するにあたって ―アスベスト関連疾患の掘り起こしをすすめよう―
2007年10月19日
全日本民医連医療部
同アスベスト対策委員会
アスベスト問題は、マスコミの関心も薄れていますが、今後20年、30年続く課題であり、「こ こで終わってはならない、終わらせてはならない」課題です。中皮腫による死亡数は1995年の500例から2006年の1050例と11年間で倍加してお り、引き続き増加傾向です。
旧国鉄では、現在全国で108名が労災認定を受け、さらに52人が審査中です。港湾労働者、造船労働者のアスベスト労災請求の動きや、香川では旧エタ ニットパイプへの損害賠償請求訴訟などの裁判が取り組まれています。こうした労災認定、企業への損害賠償請求を求める動きと同時に、アスベスト問題に対す る国の責任を追及する動きもこの間生まれています。クボタによるアスベストの環境汚染が判明している尼崎での国家賠償請求訴訟、大阪泉南での国家賠償請求 訴訟が取り組まれており、今後この動きも広がる可能性があります。こうした被害者救済の運動が各地で取り組まれていますが、アスベスト新法施行一年半が経 過していますが、新法では、特別遺族給付金の申請が法施行後3年間となっているなど、被災者の救済は隙間だらけであり、法改正は急務となっています。
埼玉の曙ブレーキ元社員のアスベスト患者会の立ち上げなど、各地で患者会を作る動きも生まれています。民医連は、他の団体とも協同して地域でのねばり強 い学習会や健診など患者掘り起こしの活動、建造物のアスベスト調査などへの自治体の補助を求める運動などを進めています。
第36期第18回理事会(05.7.15)アピール「アスベスト被害者の掘り起こしと救済にとりくみ、環境への拡散の防止と予防措置の拡充を求めてたた かおう」では、6つの取り組みを提示し、その中で「全国の病院で、中皮腫および肺がんについてアスベストの曝露によるものかどうか、カルテによる調査を一 斉に行いましょう」を提起しました。
この課題について北海道や石川などで肺がんについて再読影に取り組んだ県連もありますが、あらためてカルテの調査と胸部CT写真の再読影運動に全国的に取り組むために以下の提起を行います。
a)対象:過去5年間に通院歴のある肺がん、間質性肺炎、肺繊維症患者のCT写真とカルテ
b)調査・再読影運動の期間設定:07年11月から08年3月末まで
c)目標:全国で10,000件を目標とする
d)取り組み方法
(1)地協単位での読影会を計画する。各県連、事業所などでの読影作業や学習会を計画する。
(2)医師をはじめ放射線技師、労災等を担当する職員等チームで取り組む
(3)読影後の結果に基づき、救済制度に結びつけられる事例に積極的に対応する。
(4)報告会などを行い、共同組織を含めて認識が広がるよう取り組む。
(5)外部の研究者の協力も得て、科学的にも検証できるデータを出す研究的な取りくみをエントリー方式で行う。