長野/上伊那生協病院 共同組織の熱意に学びながら民医連運動を展開
南アルプスと中央アルプスに囲まれた伊那谷、標高700mで天竜川沿いに広がる農村地帯に上伊那生協病院はあります。上伊那地方は人口約20万 人、精密機械などの工場進出もあり、人口が増加している住みやすいところです。また、戦前から農民運動・労働運動など民主的風土が強いことも特徴です。
医療過疎地域に県連の力を結集して
1987年に医療生協設立運動がはじまったころは、地域医療計画1500床に対して500床ものベッド不足地域でした。当時は開業医の高齢化や各医療分 野の不足も顕著で、この「医療過疎を何とかしたい」「安心してかかれる自分たちの医療機関をもちたい」「住民の医療機関を住民の手でつくろう」という運動 がすすみ、長野県民医連の強い援助を得て診療所を開設したのが1990年です。この17年余りで1病院・1診療所・老人保健施設(100床)・2訪問看護 ステーション・2ヘルパーステーションの法人に成長してきました。
地域のベッド不足は2004年でも364床と依然深刻ななか、県外の病院が300床の病院をつくるという計画が明らかになりました。当時19床の有床診 療所で医師不足の状態でしたが、病院化を実現するにはこの時期にしかないと、県連的事業の位置づけとして方針をもち、臨時総代会をひらいたり、地域の医療 機関との連携をはかるなかで県外病院の計画は撤回され、私たちは125床の病院計画を具体化して、2006年4月にオープンさせました。
リハビリテーションを特徴とする病院
今までこの地域にはリハビリテーション病院がなく、脳卒中などで急性期が過ぎると、70km以上離れた地域外か県外の病院に転院することが流れになって いました。あるいは遠くでの療養はできずにリハビリを充分できないまま自宅へ帰らざるを得ない人が多くいました。私たちは、診療所時代から在宅医療や訪問 看護・デイケア・老人保健施設などリハビリテーションを重視してきましたので、病院の医療構想の大きな柱の一つとしました。昨年12月からは地域唯一の回 復期リハビリテーション病棟の基準をとり、役割を広げてきました。急性期の公立病院からの紹介患者が8割を超え、在宅復帰率は7割になっています。入院当 初に本人・ご家族としっかりカンファレンスを行い、入院中に自宅への外出・外泊・訪問指導などを積極的に行っています。
組合員に支えられ
医療改悪の嵐の中、回復期リハビリテーション40床、療養病床40床、一般病床45床の当病院には、とりわけ療養病床・リハビリテーションの改悪が経営 に大きな影響を与えています。数年前の病院構想時に療養病床削減の流れが明確であったら、病院建設に踏み込めなかったかもしれません。しかしチャンスを生 かして開設したこの民医連の陣地を何とか守り抜こうと職員は奮闘しています。
頼もしいことに地域の共同組織である医療生協組合員が元気です。病院の建設運動も、病院運営も組合員に支えられてきました。「送迎互助会レインボー」の 活動がはじまって、2年半になりました。毎日20人以上ご自宅から病院玄関までの送迎です。車両も3台に増え、運転手さんも交替で10人、毎日フル稼働で す。また待合室やデイケアでの話し相手、病棟のシーツ交換など、なくてはならない頼もしい存在です。
若い職員が多いなか、組合員の熱意に学びながら、医療活動・民医連運動をすすめていきたいと思っています。
(上伊那生協病院 事務長 山崎 健志)
「民医連院所のある風景」 『民医連医療』2007年10月号.No.422より