日本の負担 3兆円で「米軍再編」 基地強化、恒久化はやめて!
財政赤字を理由に医療や福祉を削っている政府が、3兆円をポンと出す「米軍再編」費用。今国会で審議中の「防衛『省』関連法案」 も危険な内容です。「地球規模の日米同盟」の政府合意による、世界に刃を向ける軍事基地づくりは、基地被害を拡大し、国民の負担を重くします。沖縄・横須 賀・岩国から住民運動のレポートです。
日米安全保障条約によって日本に置かれる米軍基地は、一三五カ所(一〇万ヘクタール)。首都や人口密集地にもあり、爆音・墜落事故・環境破壊を引き起こし、米兵犯罪の温床になっています。そこから、イラク侵略など米国のする戦争に出撃しています。
五月に日米両政府が合意し、閣議決定した「米軍再編」は、(1)世界規模の司令・出撃基地として強化し、(2)自衛隊との共同訓練・演習を強め、(3) 古くなった基地施設を日本の負担で更新する、内容です(図参照)。
日本政府が今後六~七年間に負担するという額は三兆円。その中身は、沖縄の新基地建設をはじめ国内の米軍基地の再編・移転の費用が約二兆三〇〇〇億円 (二〇〇億ドル)、米海兵隊が沖縄からグアムに移転する費用が約六九〇〇億円(六〇億ドル)です。グアム基地の司令部棟・兵舎・住宅・学校・上下水道・電 力など全部が日本負担。いま、グアム住民も反対の声を上げ、非難はお金を出す日本にも向けられています。
自衛隊はいま、米軍の指導を受けイラク戦争を模して訓練をしています(『いつでも元気』一二月号参照)。政府が今臨時国会で成立させようとしている防衛 「省」関連法案は、自衛隊を「国際平和協力活動」の名で「本来任務」として海外派兵し、防衛庁を「防衛省」に昇格させるもの。自由法曹団は、「日本に実質 的に『軍部』を設けるに等しい」と批判しています。
〔参考資料〕2006年日本平和大会パンフレット
岩 国
地域振興の名で住民の安全は売れない―吉岡光則さん(住民投票を力にする会)
米軍再編で岩国は「なぐりこみ部隊」の一大拠点となり、中東やアジア諸国にとってもっとも危険な存在になります。
爆音や米軍犯罪など、岩国市民にもはかりしれない被害をもたらすでしょう。艦載機移設計画の撤回を求める市長に対し、国や県が「妥協せよ」と「地域振興 策」とひきかえに圧力をかけています。しかし市長は「地域振興策と住民の生活を引き替えにはできない」とがんばっています。
米軍再編は、日本をアメリカの戦争の出撃基地にするとともに、自衛隊を米軍に融合させて戦争に狩り出す態勢をつくるものです。おまけに、米軍再編の経費 を三兆円も日本国民に負担させようとしています。基地のあるなしにかかわらず、これは全国民に対する攻撃です。「福祉・教育を切り捨て、庶民から税金を とって、何のための基地強化か!」と全国津々浦々から怒りの声をあげる時です。
八日から岩国で行われる平和大会をぜひ成功させたい。また、来年の県議選では党派を超えて、住民投票に示された市民の思いを、県政にきっちり反映させる候補を勝利させねばなりません。
沖 縄
県民の7割は「新基地ノー」たたかい続ける―前沢淑子さん(東京民医連)
一一月、沖縄県知事選の支援に。気温二七度、明るい太陽、しかし、ここには全国の基地の七五% が集中しています。米軍の犯罪・事故は数え切れず、沖縄国際大学への米軍ヘリコプター墜落事件のように、命の危険と隣り合わせの暮らし。沖縄タイムスや琉 球新報は一面で、「辺野古の新基地のV字型滑走路を、アメリカが約束に反して『双方向を離発着に使用』と宣言した」と伝えていました。失業率は七・九%と 全国最悪、所得も全国最低です。「沖縄の百年先は、基地に頼らず地元産業や観光産業の発展で」、糸数けい子さんの訴えは説得力がありました。私も大阪民医 連の仲間と、街頭で訴え続けました。
立ち止まって聞いてくれたおばあは、「収入は増えないのに、出て行くお金が増えて暮らしが厳しい」と嘆きました。沖縄協同病院の高齢者生活実態調査にも 「医療費が高くて、食費を切り詰めても苦しい。風呂の水を洗濯に使ってからトイレの水につかっている」との声。一五〇〇人の演説会は、「沖縄から日本を変 えよう!」の熱い思いであふれました。
投票日の夜、沖縄から電話が。「負けた。みんなショックで声がない」。きたないお金と公明党のきたないデマ宣伝と自民党のおどかしに県民の票が動いたの は残念だけれど、三一万の票は力強い。たたかいはこれから。あきらめない! 県民七〇%の声は「新基地はいらない」なんだから! 新基地をつくらせない第 二ラウンドの始まりです。
横須賀
原子力空母の母港化を住民投票でSTOPしたい―巴ふささん(神奈川みなみ医療生協)
「住民投票をやろう」と呼びかけられたとき、心から嬉しくなりました。黙ってたら空母が来てしまう。市が開いた「市民の声を聞く会」は申し込み制で人数制限し、自衛隊関係者の発言が時間を占めてしまい、市民の声を出す場がありません。
「原子力空母を考える市民の会」が集めた署名は全国で五二万筆、シール投票では八~九割が反対です。住民投票をしたくても、条例がない。制定を求めて、 市民の会や医療生協、土建、ネット、新婦人などが、横に手をつなぎました。「空母が来たらいやだ」の思いで一致したのです。
いま、署名の受任者は二〇〇〇人以上に。「家族分しか取れない」といっていた人が用紙を埋めてきたり、胸をどきどきさせながら地域を回ったり、新しい経 験がたくさん生まれています。「九条の会」の活動経験も生かして、紹介を受け、一人一人訪ね、共感と連帯を広げています。
医療生協でも、健康づくりと平和・政治の問題が結びつくよう、学習で深めたいと考えています。