宮城/十符・風の音 生活史を尊重する居心地のよい「いえ」づくり
法人の歴史
社会福祉法人宮城厚生福祉会は、高齢者福祉施設「宮城野の里」、介護老人福 祉施設 十符・風の音、乳銀杏保育園、柳生もりの子保育園、古川ももの木保育園を運営しています。この法人は、特別養護老人ホーム建設のために、財団法人 宮城厚生協会に属していた乳銀杏保育園を1997年に分離独立させてできました。以来、宮城民医連の支援のもと、市民団体の「みやぎ高齢者福祉の里をつく る会」や共同組織のみなさんと一緒に特別養護老人ホームの建設運動をすすめてきました。90年代最後の仙台市の特養施設計画に入ることはできませんでした が、2000年4月仙台市内に、ケアハウス、ショートステイ、デイサービス、在介、居宅介護支援事業所を持つ在宅複合型施設の高齢者福祉施設「宮城野の 里」が開所しました。2003年仙台市の北隣の利府町に、特養建設計画があり、建設運営をする法人を公募しました。当法人も含め4法人が応募、町の選考委 員会で指名されたのは当法人でした。私たちがめざす理念と、今までにない施設づくりをしたいという熱い想いが認められ、みんなで喜びあいました。
建設にあたって、私たちは「誰のためのどんな施設を作ろうとしているのか」「施設の理念をどうするか」から話し合いました。そして建設委員会で理念に 添った建物になるように、設計の段階から各方面の専門家や地域の皆さん、現場職員も含めて議論しました。この議論の結果を設計士が設計図に取り入れてくれ ました。総工費は、備品も入れて約10億5000万円。着工から7ケ月あまりで完成し今年4月8日開所しました。
施設の名前にこめた想い
十符とは、菅から作る敷物「菅薦」の通称で、この地はその産地ということで、「十符の里」と呼ばれていました。その名前をいただき「十符」。そして、こ の地にもご家族の皆さんの他にも、どこにでも吹くやさしい風が吹いてほしい、また、ここから新しい福祉の風を送りたいとの願いをこめて「風の音」といたし ました。
デイサービスセンターは、「木の実」と名付けました。大鷹が生息するという自然と、新しく発展していく住宅地という環職の中で、小さな木の実を大きく成 長させていきたいとの想いをこめました。
私たちの目指す介護
建物は、高齢者の住環境を研究している日本福祉建築家協会に認められるすばらしいものになりました。お一人おひとりを大切にできるハードがあり、これを どう生かしきるかが問われています。開所前の職員研修では、グループワークを多く取り入れ、自分たちがめざしている施設について時間をかけて話し合いまし た。これが現在の運営にも生かされていて、お互い忙しさで忘れそうになると、いやいやこれは私たちがめざすものではないと引き戻しの力が働くという具合 で、理念に戻ることができているようです。
≪基本理念≫~わたしたちの考え~
私たちは、皆様の今まで築き上げてきた生活史を大切にし、「自分時間」で過こせる居心地のよい「いえ」を共に創ります。一人ひとりのしあわせを考え、共に 過ごす時を大切にします。
【実現の場】~あるがままのあなたで~
◇生きてきた時代の歴史を学び、対話を大切にし、信頼の絆を築きます。
◇自分を表現できる、満足を実感できる生活を共有します。
◇一人ひとりのできること・やりたいことが実現できるまで、あきらめません。
【やすらぎの場】~からだもこころもほっとする~
◇安全、安心に過ごせる環境を創ります。
◇一人ひとりの立場に立ち、寄り添った「ゆとり」のある生活を共に過ごします。
【集いの場】~みんなと共に~
◇たれもが共に過ごす、心地よい憩いのいえ・まちをつくります。
絵に描いたもちにならないよう、誰からも「ここに来て良かった」と言っていただけるようにしていきたいと.思います。
(十符・風の音 施設長 小岩眞理子)
「民医連院所のある風景」 『民医連医療』2005年11月号.No.399より