Dr.小池の国会奮戦記 最低保障年金制度を世直しの旗じるしに
低すぎる受給額の底上げこそ急務
保険料引き上げ・給付引き下げの年金改悪案があまりに評判が悪く、小泉首相が苦し紛れに突然「年金一元化」をいいだしたり、一時は採択を参院選後にのばすかとまでいっていたのに、民主党の改革案が出てから、政府・与党は、急に強気になりました。
年金大改悪への国民の怒りがたかまるなか、自公民は消費税増税への方向を盛り込んだ「修正」で合意してしまいました。
消費税アップの民主党案
民主党案は「最低保障年金」を創設し、月額6万6千円を目安とするとしていますが、その財源は消費税。3%で7兆5千億円もの国民負担増になります。これでは政府案以上の負担がのしかかります。
しかも国民年金・厚生年金・共済年金を「一元化」し、同じ保険料率にするという。そうなれば事業主負担のない国民年金の人は、全額自己負担となり、大幅 な負担増は避けられません。また自営業者の「所得把握」のためと称して「納税者番号制度」を導入するとしています。
さらに、少子化や高齢化を理由に自動的に給付水準を切り下げる(マクロ経済スライド)のは政府案と同じという。これでは「消費税アップ」という財界の要 求に応えたという意味しかありません。
「5万円+上乗せ」の共産党案
いまの年金制度の最大の問題点は、暮らしていけないようなわずかな年金の人がぼう大にいることです。年金制度に入っていない人、入れない人も激増しています。国民年金の平均受給額は4万6千円。厚生年金でも女性の平均は10万円台ときわめて低額です。
年金のこの最大の問題点を解決し、憲法25条にもとづく国民の生存権を保障することこそ、いま必要な年金改革です。
こうした立場から、日本共産党は最低保障額を当面5万円とする「最低保障年金制度」にすみやかに踏み出そうという年金改革案を提案しました。一律5万円 ということではなくて、払った保険料に応じた額をそれに上乗せして支給する仕組みにしたところがポイントです。
いま無年金の人は、月額5万円が保障されます。国民年金4万円の人は5万円の上に、国民年金の保険料に応じた部分となる2万円が上乗せされて7万円に。 保険料を40年間納め続けた人は満額の6万6千円の半分が上乗せされて8万3千円になります。この結果、平均的な国民年金受給額は7~8万円になります。
納める意欲の出るしくみに
日本共産党が提案する最低保障年金の具体例 |
「月5万円」はあくまで当面です。ここからスタートし安定的な財源を確保しながら、さらに引き上げていきたい。
現在は25年以上かけないと国民年金は1円も出ません。非正規雇用がふえ、「どうせもらえない」と保険料を納める意欲をなくしてしまう人も増えていま す。短期間であっても保険料を納めれば5万円プラス上乗せ支給されるとなれば、納める意欲にもつながります。
底上げになるのは国民年金だけではありません。サラリーマンの厚生年金なども一定額までは同様に、基礎年金部分が底上げされます。うんと高額の年金をも らっている人は別ですが、比較的低水準の年金はすべて底上げされます。
大企業負担を欧州なみに
基礎年金への国庫負担を法律どおり2分の1に引き上げるために必要なお金は2・7兆円。5万円の最低保障年金への移行にはこれとは別に5兆円が必要です。
財源としては、大型公共事業や軍事費、政党助成金など税金のムダ遣いをさらに徹底的に見直すこと、大企業・大金持ち減税の流れをストップさせて90年代 後半の水準まで戻せば、十分まかなえます。
将来的には受給者が増え、年金財政がある程度ふくらみますが、国民負担を抑えつつ、大企業負担をヨーロッパなみに近づけていくことで十分支えることができます。
無責任政治を切り替えよう
年金財政を悪化させている最大の原因は雇用破壊です。リストラ、倒産などによる失業のほか、とくに20代の青年の厚生年金加入者が激減しています。不安定雇用を拡大していく政治を改めなくてはなりません。雇用を安定させて年金の支え手を増やすことは、政治の急務です。
政府の提案は、非正規雇用がいまよりも増え、少子化はいまと同じ水準がつづくと想定しています。とんでもないことです。雇用と所得をまもり、安心して子 どもを生み育てられる社会を目指すことは、日本の将来にとって重要な課題です。
小泉首相は「基本は自立自助。いざとなったらともに助けあうのが社会保障だ」といいますが、これでは国の責任はどこにあるのかということになります。
予算委員会でも追及しましたが、年金積立金を流用してつくられ、大赤字を出して閉鎖が相次いでいるグリーンピア。計画が出てから13カ所に建設されまし たが、うち7カ所は歴代の厚生大臣の地元につくられています。また積立金を株に運用し6兆717億円もの損失を出した。国民に痛みを押しつけながら、こう した不始末の責任は誰もとらない。
この無責任政治をおおもとから切り替えるときです。お年寄りにも、青年にも、希望のもてる「最低保障年金制度」を。これを世直しの旗印にしようではありませんか。
いつでも元気 2004.6 No.152