医療研究室 難病・頚椎後縦靭帯骨化症の手術療法
【川崎協同病院・整形外科医師】
神経症状の術後改善がすばらしい 前方骨化巣浮上術を開発!
図1 OPLL:後縦靭帯骨化 OYL:黄色靭帯骨化 |
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表 |
図2 |
図3:骨化巣 |
頚椎後縦靭帯骨化症とは
頚椎由来で、箸使用や書字が困難となり、歩行不能となる四肢麻痺の原因の一つに厚生省認定の難病である頸椎後縦靱帯 骨化症があります(図1)。後縦靱帯とは椎体後面に付着して脊椎(骨)を構成するもので、しかも脊髄の前面にあります。これは時に肥厚し骨化すると脊髄を 圧迫して脊髄症を生じます。靭帯骨化の原因はなお不明です。
治療方法は、後縦靱帯骨化に対する内科的治療が不可能なため、脊髄症に対する外科的治療が主体となります。箸を持ったり、歩いたりする動作は人間にとっ て大切な生活の基本的活動です。もし脊髄が頸椎で障害されると四肢が思うように動かなくなりスプーン使用や車イス移動になる可能性があり、日常生活が著し く制限されてしまいます。これを現在では手術療法で救うことができるようになりましたが、いまだに手術手技は大変困難です。
手術療法は、一昔前には後方椎弓切除術が行われていましたが、術後かえって頸椎が不安定となり症状が悪化する例が発生したので行われなくなりました。次 に、脊髄除圧を優先する後方脊柱管拡大術(図2-c)が行われました。手術手技が簡単でしたが、脊髄を後方へ逃がす方法であるため、術後の脊髄症改善には 限界があり改善しない場合もあります。
頚椎前方固定術の試み
そこで、土屋により日本で初めて頚椎前方固定術(図2-a)が試みられ、驚くほど良好な治療成績が得られました。こ れは、脊髄症と椎間不安定性の関係を重視した方法(表)で、術後10年以上にわたって良好な成績を維持できています。これをきっかけに、さらに神経症状の 術後改善をめざし前方からの除圧と固定術が開発されました。
その手術方法の一つである前方骨化巣浮上術(図2-b、図3)は、骨化巣を浮上させ、前方から除圧固定を行う方法で、手枝的に難易で熟練を要し、より大 変な手術手技です。しかし、術後に手指の動きや歩行能力が正常に近いくらいに戻るほど脊髄症の術後改善がすばらしかったため、最近では可能な限り積極的に 選択しています。
この難病に対する研究はますます盛んになっており、我々もその一助となり、さらに発展させていきたいと日夜努力しています。
Medi-Wing 第7号より
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