いつでも元気

2012年10月1日

緊急連載(最終回) 消費税増税に「待った!」 応能負担をたたかって勝ちとろう

genki250_04_01 八月一〇日、多くの国民の反対を押し切って、消費税増税法案が可決・成立しました。しかし、あきらめるのはまだ早い! 増税が実施される二〇一四年四月までの間に、衆・参両院の選挙であらためて消費税増税反対の意思を示し、実施をストップさせることは可能です。
 今後の運動を進める上で、大切な視点は何か。浦野広明・立正大学法学部客員教授(税理士)にうかがいました。

同意を得ない増税は“詐欺”

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撮影=五味明憲
浦野広明さん
立正大学法学部客員教授(税理士)。著書に『たたかう税理士の税務相談』『税民投票で日本が変わる』など。

―消費税増税法案が強引に可決されてしまいました。許せません。
 税金をどのように集めて何に使うかというのは、国民にとって最大の関心事です。その一番大切なところで嘘をついた民主党の政治家は詐欺罪、密室談合で増税に加わった自民・公明の議員たちは共犯者と言われても仕方ないでしょう。
 そもそも税金に関する規定は有権者が選んだ議会によって、法律で定めなければいけないことになっています(租税法律主義、日本国憲法八四条)。課税するためには国民の同意を得る必要があるというのは、市民革命以来の近代民主主義国家では当たり前の原理です。
 いまの日本の税制のもとになったシャウプ勧告(一九五〇年)には、直接税を中心とした応能負担(能力に応じた負担)の原則が書き込まれていました。しか し、それは国民のたたかいで勝ちとった原則ではないために、どんどん形骸化され、改悪されつづけてきました。これからは「たたかって国民の権利を守り、勝 ちとる」時代にしていかなければなりません。
―消費税を「広く薄く徴収する、公平な税金」と言う人もいます。
 とんでもない。消費税は“弱い者いじめ”の税金です。食料品などの生活必需品にも情け容赦なくかかり、収入を全部消費にまわさなければいけない低所得世帯ほど負担が重くのしかかります。
 また、中小企業ほど商品価格に転嫁できず、営業収支が赤字でも消費税は納めなければいけません。一方、輸出大企業は下請け単価を切り下げ、消費税を負担 してもいないのに、「仕入れにかかった消費税」の輸出相当分が還付される「輸出戻し税」などというしくみまである。よく言われるような「みんなで負担をわ かちあう」税金などではなく、弱い者から強い者へと吸い上げ、貧困と格差をよりいっそうひどくする税金なのです。

憲法の精神活かした税制に

―本来あるべき税制とは?
 私は税制において、日本国憲法の精神を活かすことが最も大切だと考えています。一三条(幸福追求権)、一四条(法の下の平等)、二五条(生存権の保 障)、二九条(財産権)などからは、「生活必需品には課税しない」という「生計費非課税の原則」や「応能負担の原則」が導かれます。税金の使い道にして も、平和や福祉を重視する憲法のもとでは社会保障最優先が当たり前です。すべての税金が“福祉目的税”と言ってもいい。「社会保障に使うから消費税増税を 認めろ」という主張は、その前提から間違っているのです。
 具体的には、税金の中心に法人税・所得税などの所得課税を据えて、下げられつづけてきた最高税率を元に戻しながら、能力に応じた負担を求めていく。株で儲けた不労所得にかかる税金がわずか一〇%というような優遇税制はすぐにやめるべきです。
 消費税については、すべての商品に一律にかける「一般消費税」はやめて、日用品以外のぜいたく品などに個別にかけるしくみにあらためるべきです。「品目 別税率なんて煩雑なことはできない」と言う人がいますが、例えばイギリスでは食料品や書籍、子ども服や医薬品などには消費税はかかりません。やればできる のです。
―低所得者対策として浮上している給付つき税額控除はどう見ますか。
 “低所得者対策”を口実に、国民のあらゆる個人情報を国が一括管理・監視する「共通番号制」に道筋をつけるのが本当のねらいです。所得や預貯金、保険料 の納付や病歴が一元管理されれば、国に個人のプライバシーが筒抜けになります。月一万円ほどのわずかばかりの給付のために、こんなおそろしい制度を導入さ せてはなりません。

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“税民投票”で増税中止を

―増税阻止のためにできることは?
 黙っていたら庶民の負担はどんどん増やされ、その見返りであるはずの社会保障給付も削られていくというのが、この間の日本の歴史で実証されているのでは ないでしょうか。日本経団連などは、提言で「二〇二五年までに税率を毎年一%ずつ上げて一九%に」と勝手に試算しています。「勤労性控除や概算経費控除を 主たる内容」として認められてきた給与所得控除(給与収入から差し引くことができる控除分)についても、どんどん縮小されて、「なくてもいい」という暴論 まで飛び出しています。
 しかし、あきらめてはいけません。消費税増税前におこなわれる衆・参両院の選挙で、消費税増税に反対する議員を多数派にして、国会で増税中止を決めさせればいいのです。
 マスコミはこぞって「消費税増税やむなし」という大宣伝を繰り返しましたが、「増税反対が多数」という国民世論をくつがえすことはできませんでした。これは私たちの運動の力の反映です。
 税金の取り方・使い方は、国民のくらしや経済全体にかかわる大切な問題です。多くの方々と税金のあり方について語りあいながら、引き続き運動を広げていきましょう。納税者の自覚と責任を発揮する“税民投票”を呼びかけ、必ず勝利しましょう。
聞き手・武田力記者

いつでも元気 2012.10 No.252

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