いつでも元気

2012年10月1日

特集1 欠陥機 オスプレイを配備するな 事故多発、「後家作り」の異名持つ米軍輸送機 写真家・森住 卓

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岩国基地へのオスプレイ配備に抗議する住民たち(7月23日)

 七月二三日、瀬戸内の朝もやをついて輸送船「グリーンリッジ」が米軍岩国基地(山口)の岸壁に 接岸した。輸送船には、全国を不安に陥れている米軍の新型輸送機オスプレイが一二機積まれていた。米軍普天間基地(沖縄)への配備(一〇月)を前に、国民 の反対の声をそらすかのように岩国基地に持ち込まれたのだ。
 「オスプレイは岩国にも沖縄にも来るな」と陸から叫ぶ反対住民の声が輸送船にもとどく。チャーターした漁船に同乗したビデオジャーナリストの比嘉真人さ ん(35)は、沖縄県東村高江で米軍のヘリパッド建設反対の座り込みながら、たたかいを記録し続けている。比嘉さんは「岩国に運び込まれるところを見て 『これが現実だ。高江の森の上を飛び、本当に墜落するかも知れない』という恐怖がいっそう強くなった。原発と同様に『安全だ』『事故は起こらない』と言う 政府を絶対に許せない。普天間基地に配備させてはいけない」と唇をかみしめた。

全国を飛び回るオスプレイ

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海からも抗議。奥が、オスプレイを運んできたグリーンリッジ

 オスプレイは今年、すでにモロッコ、フロリダ(アメリカ)で墜落事故を起こした。しかも昨年九月までの五年間だけで、五八件もの事故を起こしている。
 オスプレイは離発着時、プロペラをヘリコプターのように上に向ける。上空でプロペラを前に向けて、通常のプロペラ機のように水平方向へ飛ぶしくみだが、 構造上の欠陥がある。通常のヘリコプターには、万が一空中でエンジンが停止してもプロペラが自動的に回転し、その浮力で安全に着陸する「オートローテー ション」機能がある。オスプレイにはその「オートローテーション」機能がない。エンジンが停止すれば、すぐに墜落する。アメリカでは事故続きのオスプレイ に「後家作り」というニックネームがつけられたほどだ。
 オスプレイは沖縄だけでなく、本州、四国、九州、奄美諸島付近の計六つの訓練ルートを飛行することになっている。中国山地上空も飛行すると見られてい る。オスプレイ配備に対し、沖縄の県議会や市町村議会はすべて反対、全国知事会も反対を表明している。八月五日に開催予定だった県民集会は、台風で九月九 日に延期されたが、これも沖縄の県・市町村をあげたとりくみとなっている。

オスプレイが来る村

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「ヘリパッド建設にも反対すべきだ」と東村村長に迫る、県内平和団体と高江の住民の会。左側手前が村長(8月7日、東村役場)

 東村高江では、米軍ヘリパッド建設反対のたたかいが続き、六年目を迎えた。ヘリパッド建設はオスプレイの訓練のためだという事実もアメリカの文書や、日本の政府答弁などによって明確になった。
 八月七日、「オスプレイ配備反対を表明するなら、オスプレイの訓練のためのヘリパッドにも反対するよう考えをあらためるべきだ」と高江の住民と国会議 員、県議会議員、支援団体が東村の伊集村長へ要請に赴いた。村長は「オスプレイ配備には反対だが、ヘリパッド建設は容認する」というこれまでの見解を変え るつもりがないと、要請を拒み続けた。
 村長が危険を承知でヘリパッド工事を容認するのはなぜか。住民の会共同代表の一人・安次嶺現達さん(52)は、背景に「協力度に応じて自治体に支給され る在日米軍再編交付金があるのでは」と指摘する。「東村役場は二階建ての近代的で立派な建物。維持するだけでもたいへんなお金がかかる。再編交付金に頼ら ざるを得ない。原発立地自治体と同じ構図でしょ」。

ママたちのたたかい

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最近は座り込みに県内の大学生も参加するように。座り込みの合間に、ヘリパッド建設について説明を聞く学生たち(8月4日、高江)

 八月六日夜、カフェ「山甕(やまがめ)」で「オスプレイパッドNO 高江座り込み応援ライブ」 が開かれた。原発事故直後に避難してきた家族や、歌手のUA(ウーア)さんらが開いた。このライブに集まった若いお母さんや小さな子どもたちの中にも、 3・11以後、沖縄に避難してきた家族が多い。
 その一人、神奈川県逗子市でカフェを経営していた根本きこさん(37)。夫のにしごおりじゅんじさん(38)、長男の哩来くん(6)、長女の多実ちゃん(4)とともに高江に家を借りて住んでいる。
 根本さんは移り住んでから、ヤンバルの自然と高江の人びとの繋がりはかけがえのないものだと感じるようになった。
 そんな根本さんが言う。「逗子にいるときには米軍の横須賀基地がすぐ近くにあった。原発事故から逃れて沖縄に来たら、今度はヘリパッド。どこに行っても基地の問題があることがわかってきた」。
 今、自給自足の生活をめざして、数人の仲間とともに安全な食べ物を育てるために農業をはじめている。

「私たちはあきらめない」

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森と谷川の最高の場所に住んでいる根本さんと家族。雨が降れば増水して道が水没するが、そんなときは読書。そう思えば不便が楽しい時間に(8月7日、高江)

 同じく高江在住の石原理恵さん(47)が勤める職場には、「県民大会を開いても時間の無駄だ」 という人もいる。だが「沖縄の人は、ずっとアメリカと日本に負け続けてきた。それでもあきらめずにたたかい続けている。監視テントに支援に来た人が『あき らめていなければ負けてはいないのよ』と言った言葉が印象に残っている。子どもたちに親があきらめたなんてかっこ悪い姿を見せられない」と石原さんは言 う。六年間たたかい続けてきた人の言葉には、重みがある。
 高江のたたかいは、原発事故から逃れてきた避難組の家族も巻き込んで、これまでにない幅広い人々が加わった粘り強いたたかいになろうとしている。

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UAさん(右)らの座り込み応援ライブ。ゲスト出演した元ネーネーズ・古謝美佐子さん(左)は「私たちは黙らされてきた。今、声を上げなければ」とウチナーの心境を語った(8月6日、高江)

 八月二日、高江に住み始めて六年目の森岡浩二さん(44)の家でピザパーティーが開かれた。有機農業で育てた野菜たっぷりの自家製ピザを、子どもたちが先を争ってほおばっていた。
 山の向こうからまん丸な月が昇り、谷からの風が心地よい。平和なときが流れていた。
 自然の中で平和な生活を破られたくないという当たり前の願いを、国はなぜ理解できないのか? 米軍基地建設は、日米安全保障上の義務だと国は言う。国民 の平和な暮らしを破壊する安全保障とは何か? 問われなければならない。

 

いつでも元気 2012.10 No.252

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