いつでも元気

2012年9月1日

緊急連載(第2回) 消費税増税に「待った!」 「店を続けられない」が中小業者の声

genki250_04_01 前号に続く、消費税の増税に「待った!」をかける緊急連載。
 消費税は、ものを購入するとすべてにかかるため、どんなに景気が良いときであっても景気を冷え込ませると言われます。これほどまでに景気が冷え込んでい る今、消費税増税がさらに苦しめるのは――第二回目は、地域で工場や商店を営む商工業者の現場からです。

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従業員は、佐々木さんと息子さん夫婦を含めて4人とパート2人。「大田区は日本の工業の一番大事な場所なのに、これほどまでに衰退してしまった。町工場が今ほど意欲をなくしているときはないよ」と佐々木さん

 大手メーカーの下請け工場が集積する東京都大田区。ここで金属加工業を営む佐々木忠義さん(65)は「消費税の増税は、とんでもない。一〇%になったらどうやって払えばいいのか見通しはない」と、肩を落とします。
 佐々木さんの工場では、真空装置や医療機器の部品をつくっています。製品の材料はステンレス・鉄・アルミ・真ちゅう・銅など。親会社である大手メーカー は、中国や東南アジアに工場をつくり「いかに安くつくって安く売るか」という価格競争を続けています。
 親会社から一〇〇〇円と言われれば、材料費がどれだけかかろうが一〇〇〇円で納品しなければならない、それが下請けです。「材料費は約四年前から高騰 し、三倍に上がった。その事実を親会社に伝えても、『中国ではこの値段でつくっているから、同じ値段で』と要求される。ひどいときには月に三度も『もっと 値下げしろ』と工場にやってくる」と佐々木さん。二〇〇〇年頃は五割だった工賃は、今では二割ほどという過酷さです。

商品価格に転嫁できず、経営は限界

納品も納税も、身銭を切って

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佐々木さんの工場がある商店街(写真・編集部)

 身を削る経営に、さらに追い打ちをかけているのが消費税。消費税は、たとえ赤字であろうと「売り上げ」の一〇五分の五を納税しなければならない税金です。「利益」にかかるのではなく「売り上げ」にかかるこの消費税に、佐々木さんは苦しめられています。
 「納品するにも身銭を切り、消費税を払うためにも身銭を切っている」。親会社から言われるままの値段で仕事を請け負わなければならない下請け業者が、消 費税分全額を負担しているというのがいまの構図です。佐々木さん自身、八カ月無給だった時期もあったと言います。
 バブル全盛期、大田区内に九八〇〇社あった工場は、今では三分の一以下の三〇〇〇社に激減しました。町工場は、今や切る身銭すらないところまで追い込まれています。
 「ものづくりって、本当は人間が豊かに幸せに暮らすためにあるものですよね。でももう努力の限界です。消費税が増税されたら、われわれは息の根をとめられる。町工場はつぶれて、日本のものづくりは崩壊します」。切々と佐々木さんは話します。

増税は価格の値下げをせまるもの

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店頭にたつ小林さん。1枚90円の油揚げは1日約300枚売れる。「原価を考えると、値上げしたいところですけれどね…。できないですね」

 町の商店も身銭を切った経営を続けています。東京都文京区で豆腐製造販売を営む小林秀一さん (38)は、「消費税が上がると消費者の購買力が落ちるので、ただでさえ物が売れなくなります。だから、消費税分を上乗せするどころか商品の価格を下げな いと売れなくなるんです」と指摘します。
 昨年度の小林さんのお店の年商は、約二九三二万円。今年五月、小林さんの二カ月分の給与に相当する約四二万円を消費税として納税しました。約一〇〇万円 の赤字決算だったために貯金を切り崩し、「消費税を納めるために、五月と六月は僕の給料はありませんでしたよ」と小林さん。
 赤字になった原因のひとつは、材料となる油の値段の高騰。しかし、油の値段が上がったからといって、商品価格に上乗せすることはできません。景気が悪く 物価が上がらないなか、大手スーパーは値下げ競争をくりひろげているため、町の商店もこれ以上は下げられないというところまで値下げを強いられており、上 乗せするどころではありません。
 「商売の醍醐味っていうのは、いい商品をつくり、今後も商売が続けられるだけの儲けが出る適正な価格で売ることです。われわれは、いろいろ努力して商品 開発に力をそそぎます。本来ならば、その商品が売れて得た利益は、“経営努力”としてわれわれの利益になるはず。その利益分が消費税という税金でもってい かれる。これって、商売の醍醐味を奪われるのと同じですよ。経営努力の意欲が削がれますよね」と小林さんは憤ります。「本当にきついですよ。増税なんてさ れたら、消費税も払えない、店も続けられない」――現場の悲鳴です。
文・宮武真希記者/写真・五味明憲

いつでも元気 2012.9 No.251

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