いつでも元気

2012年2月1日

民医連綱領 実践のゲンバを行く!!(13) 仮設住宅で初めての班会 入居者つなぐ架け橋に 宮城・坂総合病院友の会

 いのちと健康、人権を守ろうと民医連ががんばるおおもとには、綱領に掲げられた理念があります。綱領の実践を紹介する連載。第一三回目は、東日本大震災の被災地・宮城で、仮設住宅に友の会の班が誕生したお話。

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談話室に集って和やかに語りあう友の会員と職員たち

 一二月六日、宮城県多賀城市の山王地区にある仮設住宅で、坂総合病院友の会の初めての班会が開かれました。この仮設住宅では四五世帯が暮らしていますが、現在半数近い一七世帯が友の会に入会しているというから驚きです。
 この日、仮設住宅の談話室に、九人の友の会員が集まりました。坂総合病院の看護師や友の会担当の職員七人も参加。
 「この前、初めて乗ったよ」と、一二月から市の西部を走りはじめた循環バスのことが話題にのぼりました。仮設住宅の入居者も呼びかけ人に名を連ね、近隣の住民といっしょに市に要望した署名運動の成果です。
 お茶を飲みながら、和やかに近況を語りあううちに、話題は自然と震災当時のことに。「大型スーパーの屋上から、まちが津波に飲み込まれていくのを見た」 「避難するのが一〇分遅かったら、私も助からなかった」との生々しい体験が次々。「来年こそはいい年にしたいね」と語りあいました。
 「今日はおしゃべりできて、すっきりした」と参加者の大場京子さん。「家に一人でいると、ふさぎこんでしまうこともあるからね。次回の班会も楽しみ」と話してくれました。

病院への厚い信頼

 仮設住宅に友の会の班が誕生した背景には、坂総合病院への厚い信頼があります。同病院はこの仮設住宅の談話室を利用して七月から隔月で健康相談会を開き、入居者の心身を支えてきました。
 友の会も継続的に支援にかかわってきました。坂総合病院友の会副会長の山内マチ子さんも健康相談会に毎回参加。病院有志による“縁日”などにも顔を出し、入居者と顔なじみになっていきました。
 「何度も顔をあわせるうちに、はじめは口が重かった入居者の方とも次第に打ち解けて、身の上などいろいろなことを話してくれるようになった」と山内さんは振り返ります。
 元職員から「同級生が仮設住宅に入居している」と聞きつけ、六月に最初の友の会員を迎えたのも山内さんです。山内さんのあたたかい声かけとねばり強い働きかけは、新しい班結成の大きな力になりました。

山積する課題に力をあわせて

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班会の前にひとりひとりの血圧を測った

 記者も班会のおしゃべりの輪に入れてもらい、「いま困っていることはありませんか」と聞く と…。「浴室がせまくて、家族を入れるにも苦労する」「お風呂が追いだきできなくて不便」「畳もなくて、地面からの冷気で底冷えする」「水はけが悪いの で、雨が降ると家の前が洪水のようになる」などの現状が次々。
 冬に入り、最低気温が氷点下になることもあるといいます。「これからますますたいへんになる」「暖房の電気代が心配」などの声があがりました。
 「山王地区の仮設住宅は、介護が必要な方や高齢者が優先的に入居してきたところで、それぞれの世帯が困難を抱えています。そうした困難に寄り添うために も、住民同士が手をつないでいけたら。実は、震災時のことをあんなに打ち解けて話しあったのは、初めてなんですよ」と山内さん。「友の会を通じて何でも話 せる関係をつくることで、孤立を防いでいきたい。班会で出されたような仮設住宅の不便も、みんなで運動して改善していけたらいいですね」。
 仮設住宅で友の会の班が入居者同士をつなぐ架け橋となり、成長していこうとしています。山積する課題を挙げながらも、山内さんは新しい班の誕生に笑顔を見せました。
文・武田力記者
写真・五味明憲

いつでも元気 2012.2 No.244

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