いつでも元気

2011年12月1日

民医連綱領 実践のゲンバを行く!!(11) 子育てママのよりどころ つながりあってささえあう 愛知・北医療生協「にじっこひろば」

 いのちと健康、人権を守ろうと民医連ががんばるおおもとには、綱領に掲げられた理念があります。綱領の実践を紹介する連載。第一二回目は、愛知・北医療生協がおこなっているファミリーサポートプロジェクトのとりくみです。

子どもとお母さんの“ひろば”

 一〇月二一日午前、あじま診療所の二階にある「ゆうゆうルーム」に、子どもを連れたお母さんたちが集まってきました。ここでは毎週金曜日の一〇時から一時間半、「にじっこひろば あじま」を開催しています。
 普段は組合員ルームとして使っているこの部屋。机や椅子を片づけた床には大きなカラーマットが敷かれ、ビニールプールや柔らかい滑り台などのおもちゃや 絵本が並びます。サポーターさんたちに「おはよう」と笑顔で迎えられた子どもたちは、ビニールプールに入ってカラーボールを投げたり、滑り台からジャンプ をしたり。サポーターさんが見守るなか、元気いっぱいに遊んでいます。
 一時間ほどたったところで「では、お母さんはお子さんをおんぶして、輪になってみましょうね」と、サポーターの丹羽久美子さんが呼びかけました。丹羽さ んのリードで「♪げんこつ山のたぬきさん」と歌いながら、リズムにあわせて右に回ったり左に回ったり。時折ジャンプしてくるっと半回転すると、子どもたち の笑い声は一段と大きくなりました。お母さんたちも笑顔です。

安心して子育てできる“環境”を

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にじっこひろばのサポーターのみなさん。エプロンシアターは手作り

 「にじっこひろば」は愛知・北医療生協が二〇〇八年からはじめたファミリーサポート事業で、〇 歳からおおよそ三歳までの子どもと、そのお父さんお母さんを対象にした子育てひろば「にじっこひろば」をおこなっています。子どもが楽しく遊べるよう地域 のサポーターさんたちが工夫を凝らし、親子で安心して集える「居場所」です。現在、名古屋市北区に三カ所、同市西区に一カ所の合計四カ所で、それぞれ決 まった曜日に診療所や介護老人保健施設内でおこなっています。
 この事業を発案したのは、北医療生協・組織担当課の川口美穂さんです。川口さんは指導員として児童養護施設で働いた経験から「親が子育てするなかで“孤独”

を感じるのではなく、“誰かとつながっている”と感じられる環境こそが、安心して子育てができる 環境ではないか。誰もがその人らしく安心して子育てできる、そんな環境づくりを」と模索し、いまの事業にたどりつきました。「子育てのことを身近に相談で きる人がいない」「自分の子育てはまちがっていないだろうかと不安」「夫に話を聞いてほしいけれど、多忙で深夜に疲れて帰ってくるので、なかなか話ができ ない」││ここは、そんな親たちの悩みにこたえる場となっています。
 もうすぐ二歳になる女の子と〇歳の男の子を育てる長瀬みかさんは、約一年前からここに通っています。「市が開催している子育てひろばに通っていたけれ ど、対象は一歳まで。長女が一歳をすぎて、どこか遊べる場所はないかなと探していたときにここを知りました。ここのサポーターさんたちはどんなことでも話 を聞いてくれる、母親のような存在」と言います。
 林春恵さんは、四歳と二歳の男の子のお母さん。「どうやって子育てしていいのかわからず、相談する人もいなくて一人で悩んでいたとき、サポーターさんに話を聞いてもらいました。いまも“金曜日になればここで話を聞いてもらえる”と思うと、心強い」と話します。

サポーターさんが支える事業

genki242_05_02  地域の子育て中のお母さんたちのよりどころとなっているこの事業は、ボランティアでたずさわるサポーターさんが大きな役割を果たしています。現在、「に じっこひろば あじま」に協力するサポーターさんは一四人。準備、あとかたづけ、そして毎回の終了後に振り返りをおこない、お母さんと子どもの様子を共有 しています。また次回はどんな遊びをしようか、クリスマスは何をしようか、と今後の企画の相談も。
 全員が子育て経験を持つサポーターさんたちも、かつては悩める“ママ”でした。「いい母親になりたいけど、なれない。そんな辛い思いをした」「ふりかえ れば自分の子育ては反省することばかり」と言います。サポーターのひとり辻野淳子さんは「いまの子育ては、情報はたくさんあるけれどサポートがない。悩み を聞いたり自分の経験を話したりすることで、おなじ地域に住んでいる若いお母さんたちの役に立てるなら」。そんなあたたかい目で地域の子育てを見守るサ ポーターさんたちの存在に、前出の林さんは「私も、子どもが大きくなったらサポーターになりたい」と話します。

そのままを受けとめる“居場所”に

 川口さんは、事業をすすめるうえで「地域の子どもたちの健康をどう守っていくか」「お父さんお母さん自身を受けとめる」という視点を大切にしています。
 「わが子と誰かを比較して“自分の子どもはまだ○○ができない”と悩む若いお母さんたちもいますよね。まずはお母さんたちに“ここに来たら自分を否定さ れず、子どもも自分も誰かと比べられることがない”と感じてもらえることが、悩みを打ち明けられる関係づくりにつながり、ホッと安心してもらえる場所にな る」と川口さん。「にじっこひろばに参加していない地域のお父さんお母さんにどんなサポートができるか、そして、子どもが対象年齢の三歳をすぎたあとにこ こでのつながりを生かせる親同士の関係づくりが、これからの課題」と抱負を語ってくれました。
文・宮武真希記者 写真・豆塚猛

いつでも元気 2011.12 No.242

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