いつでも元気

2010年12月1日

民医連綱領 実践のゲンバを行く!!(5) 大学で青年職員が平和を語る 「つながり」をもっと広げたい 長野・中信勤労者医療協会

 いのちと健康、人権を守ろうと民医連ががんばるおおもとには、綱領に掲げられた理念があります。綱領の実践を紹介する連載。五回目は、平和運動や学習にとりくんだ青年職員の言葉が、大学生に驚きと共感を呼んだお話。

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5月、ニューヨーク行動に参加した柴田さん(写真右)

 「こんな病院、他にはないですよね!?」驚きを隠せない、松本大学の尻無浜博幸准教授。「これから一緒にどんなことができるか楽しみです」と声を弾ませます。
 七月、松本大学で開催された「バリアフリー・ウィーク2010」のプレ企画で、大学の一年生八〇人を前に、中信勤労者医療協会の青年職員が講演しまし た。講師は松本協立病院の柴田尚史さん(事務)と森芳恵さん(塩尻協立病院・事務)。
 きっかけは、五月にニューヨークで開催されたNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向けて集めていた「核兵器のない世界を」署名への協力を、病院の社保 委員会が大学に申し入れたこと。尻無浜准教授は、教え子と同世代の若手職員が平和学習や署名運動にとりくむ姿に感銘を受け、「ぜひ学生たちに経験を聞かせ てほしい」と提案し、講演会が実現したのでした。

平和活動は特別なことではない

 再検討会議に際して開かれたニューヨーク行動に参加した柴田さんは、「核兵器廃絶は可能か」というテーマで講演。
 昨年のオバマ演説から盛りあがった核兵器廃絶の国際世論。再検討会議では核軍縮に向けた行動計画にとりくむことを全会一致で可決したと報告。「核廃絶は 夢物語ではなくなった」と強調し、「平和活動は特別なことではなく、一筆の署名集めでも立派な平和活動だ」と訴えました。
 森さんは昨年、全日本民医連・平和学校の「韓国平和研修」に参加。元日本軍「慰安婦」が共同生活する「ナヌムの家」を訪問したときの出会いを中心に語りました。
 戦時下の女性が性奴隷とされた悲しい歴史の証言を紹介する一方で、「平和は、どこか遠くで力のある人が動かしているものではない。私たちの学びや出会い のなかで、歴史を乗り越えようと模索しながら創られていく。一人ひとりが新しい歴史を創っていく主人公なんだと韓国で感じた」と。「みなさんとの出会いも また、平和な歴史を創っていく出会いになることを信じています」と締めくくりました。
 学生からは、「それぞれの国が国民のことを考えれば、もっと早く核兵器をなくすことができる」「慰安婦の話は衝撃的だった。はじめて知った」などの感想が。

自分の言葉で民医連を語る

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「平和のとりくみをもっと広げたい」と話す、森さん(左)と柴田さん

 学生の共感を呼んだおおもとには、“民医連綱領”があります。綱領には「人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対し、核兵器をなくし、平和と環境を守ります」と明記。医療機関・介護施設などの職員が、平和運動や学習にもとりくむ姿勢が新鮮に映ったようです。
 柴田さんは、いきなり平和活動の話をしても難しいと思い、はじめに「民医連とは何か」「どうして平和活動にとりくむのか」を伝える工夫をしたといいま す。森さんも「民医連は『いのちを守る』仕事をしている。医療・福祉の営みは平和であってこそ。平和を守ることは医療人の課題」と、民医連の立場を語りま した。
 自らの体験・言葉を交えて平和活動にとりくむ大切さを語った二人の講演に、「戦争と医療・福祉は対極にあるという言葉に、その通りだと納得できた」「民 医連をはじめて知った。私の住んでいるところでも活動していると聞き、ビックリ」などの感想が、学生から寄せられました。
 長野県民医連は「ピースアクションプラン」を作成。「学んで行動、連帯し、育ちあう」を合い言葉に、平和を守る実践と、活動を担う人材育成をすすめています。
 入職した年に原水爆禁止世界大会に参加したことが、平和活動にとりくむ原点になったという柴田さん。日本はもちろん、世界から何千という人たちが被爆地 に集まる姿を目の当たりにし、「平和を願う」市民の大きな力を感じたのです。
 森さんも入職一年目に全日本民医連の「辺野古支援・連帯行動」に参加したことが平和を考えるきっかけ。「米軍基地に囲まれた沖縄の街を見て、基地問題を日本全体のこととしてとらえなければと強く感じた」と話します。
 講演をふり返り、「自分の言葉で、民医連のことや平和のとりくみを知らせることができた。貴重な機会だった」と柴田さん。森さんも「一生懸命聞いてくれ た。正面から受け止める感想ばかりで、感動した」と笑顔を見せてくれました。

つながりを広げ、まちづくりも

 尻無浜准教授も、学生たちの反応に手応えを感じています。
 「有名な専門家が話すのではなく、手の届く人というか、同じ松本にいる身近な彼らが、ありのままの言葉で話してくれたのが学生にも響いたのではないか。 ぜひ原水禁や韓国訪問などの平和活動にも学生を参加させたい。できれば森さんや柴田さんに連れていってもらえたら」
 今回の企画はあくまでもきっかけ、第一歩だとも話す、尻無浜准教授。
 「共感することが活動の広がりには欠かせないでしょう。いずれはこんな風にいきいき活動している病院に入りたいという学生も出てくるかもしれない。病院 にいながら『地域』のことを考え、『平和』の活動も実践できるなんて、素晴らしい。病院と大学がさまざまなかたちで連携し、お互いの得意分野や人材を活か しながら、つながりを広げ、まちづくりも一緒に考えていきたい」と夢を膨らませます。
文・井ノ口創記者/写真・酒井猛

いつでも元気 2010.12 No.230

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