民医連新聞

2004年8月2日

被爆者への聞き取りと核廃絶へのとりくみを

全日本民医連被爆問題委員会委員長 聞間 元(ききま はじめ)

 民医連は、被爆者の原爆症認定を求める集団申請や認定訴訟支援のために昨年五月から三回、民医連医師団会議を開 いてきました。また併行して全国弁護団の依頼に応え、放射線との因果関係を立証する「統一医師意見書」の作成のために、これまで五回のワーキングチーム会 議を開き検討を積み重ねています。

 医師団として被爆者からの原爆症申請の相談には、現行の認定行政の実情や因果関係証明の限界についても話をします。その上で、被爆者の意思を尊重して、意見書の作成に協力することを確認してきました。

 七月一六日現在、全国一六都道府県で、計一四六人の被爆者が提訴しています。このうち、すでに亡くなられた人もいますが、約二割が民医連の医師の診断書(意見書)で申請しているものと思われます。

 これらの原告被爆者の申請病名は約三分の二が悪性腫瘍、三分の一が慢性肝炎や甲状腺疾患などの非ガン疾患です。 申請が却下された理由は、「原爆放射線との因果関係が認められない」というものです。最近では、長崎や京都の原爆裁判の敗訴をうけて国が急きょつくった、 「原因確率」が認定基準で用いられています。

 この新基準は、爆心地から一・七㌔以内の近距離被爆で、しかも特定のガンや傷病でないと認定しないという厳しい ものです。しかし、「原因確率」がゼロに近い遠距離被爆者や入市被爆者のなかに、下痢、脱毛、紫斑などの放射線被曝による急性症状が見られた例が多数あり ます。また、二〇〇三年一〇月になって、食道ガン、胆のうガンや直腸ガンは、統計学的にみると増加していることが公表されました。一〇年前までの統計にも とづく「原因確率」による申請却下を批判することが、私たちの中心的な課題になっています。

 来年で被爆六〇年。今でも被爆者の不安や苦しみは癒えることなく続いています。あの日のことは忘れたくても忘れられないという、平均七〇歳の被爆者は、全国で二八万人を数えます。私たち民医連の事業所にも、被爆者の健診などでその約一割の人が受診しています。

 職員のみなさんがあらためて、被爆者一人ひとりの生活史や病歴の聞き取りをすすめる運動にとりくみ、核兵器のもつ非人道性を告発する運動に参加するよう呼びかけます。


被爆者健診の充実求め厚労省と再交渉

 全日本民医連は七月二二日、被爆者健診の改善を求め、厚生労働省と交渉しました。一二月に続くものです。

 前回の「老健法の基本健診の水準に引き上げること」に加え、今回「寝たきり状態の被爆者のための、訪問健診制度」を要求しました。

 厚労省側は今回、「医学の進歩、新しい知見に見合った見直しをしていきたい」、と回答。現行の健診が貧弱であるとの認識を示し、各種癌健診については「医学的根拠があれば、財源を要求する」とのべました。

 交渉には被爆問題委員長の聞間元医師他二〇人が参加。次回は来年二月の予定です。

(民医連新聞 第1337号 2004年8月2日)

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