民医連新聞

2004年8月2日

研修医も看護師も育つ〝総合診療病棟〟 あなたの職場におジャマしま~す(5)北海道・中央病院 総合診療病棟

 医師の初期臨床研修の場であり、救急を含めた内科の様ざまな患者を受け入れる「総合診療病棟」。民医連の中で先駆的に設置した北海道・勤医協中央 病院には、五階西と八階の二病棟、計七七床あります。指導医・研修医チームと看護師チームが、患者に深く関わるしくみで、研修医は生きいきと学び、働いて いました。教育病棟で大事にされているルールは「お互いを尊重した言葉使い」と知りました。(小林裕子記者)

 朝八時の五階西病棟、すでに医師たちはカルテの山を囲んでいて、すぐに回診が始まりました。

 今年入職した医師一四人中、この病棟には八人、八階に四人が配属されています。一年目研修医二人に対し、二年目医師+指導医+上級指導医がつく「クラスター」という組をつくっています。研修医が指導医に密接に相談できるこの組で、患者を受けもちます。

 九時二〇分、看護師のウオーキングカンファレンス。そのころ、病棟に三つあるカンファレンスルームでは、研修医たちが本やパソコンに向かっていました。指導医とマンツーマンの姿も。棚には先輩医師が寄贈した教科書がずらり。

どんな患者さんがいるの?

 普通の病棟と違って、ここには臓器別に分かれず、いろいろな疾患の患者さんが入院しています。その理由は…八階 病棟の指導医の一人、杉澤憲医師が説明してくれました。「研修医が経験すべき疾患が各病棟に分散していると、研修医はローテートしなければなりません。そ のたび、各病棟のやり方に慣れたり、患者の担当の交替が必要です。特殊な病気を除く様ざまな疾患を受け入れる総合診療病棟は研修医が移動する必要がなく研 修に集中できるので注目されているのです」。

看護師の苦労は?

 看護師のチームも、医師の「クラスター」に対応し、部屋ごとだった担当を患者ごとに変更しました。

 五階西病棟の澤田幸子看護師長が特に気を配るのは、研修医の担当する患者の安全と、研修医とのコミュニケーションです。指示の実施に当たっての約束事を守ること、変だと感じた時は、「指導医と相談を」「ミニカンファを開こう」と提案、素早く解決に動きます。

 また、研修医が悩んでいる時、終末期患者などを受けもって辛い時は、共感すること。さらに「看護師が使いがちな医師にダメージを与える言葉」を使わないこと。「だめだよ」「何で今ごろ言うの」など、攻撃的な言葉で、研修医を傷つけてしまった苦い経験もありました。

 八階病棟の浜谷綾子看護師長も「医師とのコミュニケーションの方法」をあげます。

 病棟学習会「研修医をどう受け止めるか」で、講師の杉澤医師が提案したのは「評価はハンバーガー方式で」…つまり「ほめる・注意する・ほめる」の形です。

 「これは看護師の新人と対応するときも使えます」と浜谷さん。

苦労の中のやりがい

 救急患者の受け入れ、様ざまな患者への対応、ベッド管理などで残業も多い、ハードな仕事の中でも、「看護師の力 量がついた」と断言するのは藤林百恵主任看護師。専門病棟で育った看護師には、初めて看る疾病の患者さんもいます。「この看護が最善だろうか?」などの不 安が、研修医といっしょに学習をする中で、自信とやりがいに変わったそうです。

 特に臨床倫理四分割法によるカンファレンスでは患者の意向を反映させる努力が、看護師の視野を広げました。「話し合うと、良い方針が生まれる。看護師は動きやすくなり、力量も上がる」と、この方法は、病院全体にも広がりました。

 浜谷さんも「受けもち患者制で患者を深く知ることが、仕事の楽しさにつながっている」「研修医が熱心なので、看護師もやる気をかき立てられる」と話します。

 研修医の声も聞いてみました。一年目の菅家智史医師は「もちろん患者さんのところには毎日行きます。イスを持って、家族のことなど、二〇~三〇分も話し込むことも」と、研修の充実感を語ってくれました。

 日々研修医に寄りそい、教育方法やコミュニケーションにも工夫を重ねる指導医や看護師たち。その熱意が伝わってきました。

(民医連新聞 第1337号 2004年8月2日)

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