くすりの話 グルコサミン
執筆/藤竿 伊知郎(元・外苑企画商事、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回はグルコサミンについてです。
歩く力をサポートするサプリメントのCMが目立ち、「膝が痛くて歩きにくい」「筋力が落ちて歩く速度が低下した」などの悩みを持つ高齢者を対象とした通信販売が盛んです。
関節痛は、軟骨がすり減り、骨同士が直接当たってしまうことが原因です。最近の流行は、足の筋肉と膝関節の両方に作用するという商品で、2019年ごろから機能性表示食品の新製品が増えました。その多くは、製品を使った研究ではなく、含有成分についての研究で効果があったとしています。
関節に働く成分として、軟骨を形成するグルコサミンとコンドロイチンが使われています。関節にある軟骨組織は、「ヒアルロン酸」の幹にタンパク質の枝が生え、その枝からコンドロイチン硫酸の繊維が広がる巨大な構造体です。勘違いしている方もいますが、関節成分は単なる潤滑油ではなく、たくさんの水を保持した組織が硬い骨同士の間でクッションとなっています。
グルコサミンは、このヒアルロン酸を構成する2種類の糖の1つです。本来、ヒアルロン酸などの構成材料は体内にたくさんあるブドウ糖を原料として合成され、摂取した成分が軟骨組織の修復にどこまで利用されるか、まだよく分かっていません。
消費者庁が2012年に業界団体に委託しておこなった「食品の機能性評価モデル事業」でも、グルコサミンの評価は限定的でした。変形性膝関節症の症状改善に「肯定的論文は多いが、否定的論文も見受けられ、一貫性が十分ではない」と、総合評価は4段階評価の2番目でした。
筋力をつける重要性
2000年代に大宣伝されたことで、グルコサミンは膝に良いというイメージが作られました。近年、膝関節を守るためには太ももとお尻の筋肉を鍛えることが大切という指導が広がり、「筋力をつけて歩く速度を維持する」ことが推奨されるようになってきました。
そこで筋肉を増強すると謳うサプリメントの販売も盛んなわけです。成分は各社特徴をもち、筋肉の血流を改善したり再生を促進するというものが入っています。ただし、これも少人数のヒトで試した研究や動物実験が中心です。筋肉をつけようと、たんぱく質など筋肉になる成分を食べても筋肉にならず、むしろ肥満につながることはよく知られています。十分な負荷をかけないと筋肉は育たないのです。
膝を守る運動として、いすから立ち上がって座り直す「いすスクワット」などお勧めの筋トレ方法が紹介されています。姿勢の良い歩行や階段の利用なども推奨されています。
歩く力が衰えたと思ったら、サプリメントだけに頼らず、生活の改善を心がけてみてはいかがでしょう。自己流のトレーニングは膝を痛める危険もありますので、健康教室などで専門家の指導を受けることをお勧めします。
いつでも元気 2025.1 No.398