くすりの話 予防接種の健康被害に対する救済制度
執筆/野崎 拓史(埼玉西協同病院、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
今回は「予防接種の健康被害に対する救済制度」についてです。
予防接種は病原体に対する免疫をあらかじめつくることで、病気を防いだり重症化しないようにする重要な役割を担っています。ところが、予防接種のワクチンに含まれる成分によって、体内で炎症やアレルギー反応が起きることがあります。
予防接種の副反応は発熱や接種部位の痛み・腫れなどが大半を占めますが、極めて稀に脳炎や神経障害など、入院治療が必要な症状や障害が残ってしまうことがあります。このような副反応をゼロにすることはできないため、医療費や障害年金などを給付する救済制度が設けられています。
定期接種の場合
定期接種とは、予防接種法にもとづいて公費(一部で自己負担あり)で受けられるワクチン接種です。定期接種の副反応による健康被害に対しては、予防接種法にもとづく「予防接種健康被害救済制度」があります(資料)。
定期接種のうち、「A類疾病」は主に集団での予防や重い症状の予防に重点を置くもので、接種の努力義務が定められています。「B類疾病」は主に個人の予防に重点を置くもので、接種の努力義務はありません。
厚生労働大臣が「定期接種を受けたことによる健康被害」と認定すれば、救済制度の対象になります。その審査にあたっては、厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、予防接種以外の原因で起こったものでなければ補償を受けられるとされています。
緊急に感染症の蔓延を予防するために行う「臨時接種」も、健康被害が起きた際には予防接種法にもとづく救済を受けられます。
任意接種の場合
任意接種とは、予防接種法に定められておらず、本人または保護者の希望で受けるワクチン接種です。費用は原則として自己負担ですが、ワクチンの種類や自治体によっては助成制度があります。
任意接種の副反応による健康被害は、「医薬品副作用被害救済制度」の対象となる場合があります。ただし対象となるのは、国が医薬品として承認したワクチンに限られます。
ご不明な点や分からないことがありましたら、遠慮なく医師や薬剤師にお尋ねください。
いつでも元気 2024.12 No.397