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民医連新聞

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相談室日誌 連載570 人生の達成感を学んでいく 本人や家族に寄り添う意味(京都)

 Aさんは80代男性。アルツハイマー型認知症の増悪で、ADL低下が顕著、体動困難にて他院に救急搬送。短期入所後、次の短期入所まで2週間のレスパイト(介護者の負担軽減)として当院へ入院しました。妻は入院時、大柄で介護拒否もあるAさんの介護は難しいため、長期の施設入所を望み、介護医療院を申し込むことになりました。急速な認知症の進行で、会話もかみ合わなくなり、発語も減少しました。食事量にムラがあったことに加え、食事介助の拒否が強く、まったく食事摂取しないことも増えてきました。自己抜去リスクもありましたが、補液を開始しました。
 妻は短期入所中の食事について、食べられるだけで構わないとの意向で、受け入れ先も了承していましたが、急速に変化するAさんの状態は認知症の終末期であり、看取り場所を家族間で相談することに。
 担当ケアマネジャーから「自宅退院を希望した場合は全力でサポートします」との心強い発言もあり、妻より「家族で話し合い、自宅で看ることにしました」との電話がありました。在宅サービス調整のため当初のレスパイト期間は超過しましたが、自宅へ退院。退院前カンファレンスで、「補液も延命治療にあたるのでしょうか」との家族の問いに、「何を選んだとしても後悔は生まれるでしょうが、Aさんに寄り添い選択したことに間違いはないので、退院後も相談していきましょう」と返した往診看護師の言葉が深く心に残っています。
 私自身も延命について考えさせられ、本人や家族に寄り添うこと、カンファレンスの大切さを学んだケースとなりました。
 その後、「緩和ケア・終末期医療における患者の意思決定支援を学ぶ、深める」という研修に参加し、“もしバナゲーム”というカードゲームを体験しました。レクリエーションを通し、「もしものための話し合い(=もしバナ)」をするきっかけをつくるゲームです。人生の大切な価値観を知ることで、自分自身にさまざまな気づきを得ることができました。
 自分自身の価値観をカードで示して気軽に話し合え、他者の価値観も認め合う、そんな時間が増えれば、人生の納得感も得られるかもしれません。

(民医連新聞 第1816号 2024年10月21日号)