各地で訪問介護報酬引き下げ影響調査 ふるさとで暮らす権利奪うな 宮崎に事業所ゼロの村
訪問介護の基本報酬が引き下げられて半年。民医連外の事業所向けアンケートや記者会見、要請行動を実施する動きが、ひろがっています。宮崎医療生協のとりくみを聞きました。(松本宣行記者)
■市内の同業者の思いは?
宮崎民医連は、他県連の動きを参考に、5月7~22日にかけて宮崎市と延岡市の、民医連外の訪問介護事業所を対象に、介護報酬改定の影響に関する緊急アンケート調査を実施。同県連の訪問介護事業所は2カ所。同業者が今回の介護報酬改定をどう考えているのか、把握する必要があると考えました。61事業所から回答を得ました。
■国の矛盾に怒り
県連介護担当の秀亜紀子さんは、次々に届く返信内容に加え、書き直した痕跡、欄外の書き込みから、現場の切実な思いを感じたといいます。
秀さんは「国は脱施設、在宅シフトと言ってきましたが、施設介護に戻そうとしているのでしょうか」と、国のやりかたに憤りを隠しません。
■施設に入らざるを得ない
宮崎医療生協の介護次長でケアマネジャーの落合邦博さんは、アンケートの結果は、報酬引き下げの理由とされた、収支差率を浮き彫りにしたとみています。
「施設併設の訪問介護事業所は『なんとかなっている』という回答が目立ちました。一方でいわゆる訪問介護は、移動時間、経費の上昇、人材不足の状況です。ヘルパーがささえれば在宅で生活できる人が、施設に入らざるを得なくなってしまいます」。落合さんは、今回の報酬改定は、国の方針に対して逆行していると指摘します。
■保険給付に地域差はありえない
法人看護部長の小牟田佐知子さんは、地域差による介護保険制度の崩壊を懸念します。
「県内の諸塚(もろつか)村、西米良(にしめら)村は訪問介護事業所がゼロです。その地域の高齢者は要介護になった時、訪問介護が提供されるなら、もう少し自宅で過ごせるのに、選択肢は施設だけになります。保険と言いながら、給付に地域差があるのは絶対に許されません」と語気を強めました。
宮崎民医連では、アンケートに協力してくれた介護事業所と連携しながら、次の運動を考えていきます。秀さんは「声をあげられない事業所のために、声をあげていくのが、民医連の役割ではないでしょうか」と力強く語りました。
各地のとりくみ
【北海道】介護に笑顔を!北海道連絡会として、7月11日~8月27日にかけて、道内全事業所を対象にアンケートを実施。548件の回答を得て、9月12日に記者会見。
【新潟】3月7日~4月12日にアンケートを実施、139件の回答を得て、現在はアンケート第2弾を実施中。
【山梨】4月8日~5月31日にアンケートを実施し、89件の回答。8月3日に上野千鶴子さんを講師に招き、リレートークを含む学習会を開催。
【長野】県社保協とともに、4月4日~5月15日にかけてアンケートを実施。213件の回答を得て5月31日に記者会見。
【滋賀】大津社保協とともに、アンケートを実施。8月20日までに42件の回答を得て、10月に大津市と交渉する計画。
(民医連新聞 第1815号 2024年10月7日号)