副作用モニター情報〈624〉 アシクロビルによる脳症
アシクロビルを代謝物とする内服薬、「バラシクロビル」による脳症(意識レベル低下)は、何度かこのコーナーで取り上げました。今回、点滴静注のアシクロビルによる脳症が報告されたのでお知らせします。
症例)80代 女性
帯状疱疹(ほうしん)の疑いで、アシクロビル投与を開始。高齢者のため、250mg(点滴静注)を1日2回投与で開始した。血清クレアチニン値に異常はなく、計算上のCcr(クレアチニンクリアランス)は54mL/min、eGFRは50mL/min/1.73m(身長150cm、体重65kg)。
元々の治療薬として、DOAC(エドキサバン)、ビソプロロール、ロスバスタチンなどを服用していたが、アシクロビルと相互作用のある薬剤は見られなかった。
2日目にアシクロビルの投与量を、250mg(点滴静注)を1日3回に変更した。変更当日に、嘔気(おうき)・嘔吐(おうと)が発現。症状に対してメトクロプラミドで対応を行った。
投与3日目に、「イライラ感」「手指振戦」も発現。医師は、アシクロビルによる脳症と判断し、投与を中止した。帯状疱疹に対しては、アメナリーフ錠に処方変更で対応した。アシクロビルの投与中止1日後、手指の振戦、嘔気・嘔吐は改善傾向になった。
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アシクロビル脳症は、一般的に投与開始から3~5日での発症が多いと言われ、今回の症例に当てはまりました。
アシクロビルの添付文書上の投与量は、eGFR50以下で1日2回、50より多ければ1日3回になっています。今回の患者のeGFRは50ちょうどだったため、1日2回か3回か、非常に迷う状態だったでしょう。
高齢者の標準体重は、BMI22程度と言われています。その計算でいくと、身長150cmだと、体重は49.5kgになります。この患者の場合、標準体重より大きかったため、腎機能(eGFR)が多めに見積もられた可能性があります。今回のケースでは、投与量が1日2回であったのであれば副作用は起きなかったかもしれません。今後の教訓にしていく必要があるでしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1815号 2024年10月7日号)
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