民医連新聞

2024年7月16日

会長声明 旧優生保護法国賠訴訟最高裁判決を受けて

 全日本民医連は7月4日、以下の会長声明を発表しました(詳細はホームページ参照)。

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 7月3日、旧優生保護法下で不妊手術を強制された被害者が国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は、旧優生保護法の規定を憲法違反と判断し、国の賠償責任を認め、「除斥(じょせき)期間」規定は被害者には適用しないという統一判断を示した。
 最高裁は、旧優生保護法の規定は立法時に個人の尊厳を保障する憲法第13条、平等原則を定めた第14条1項に違反するとした。最高裁が法令を違憲と判断したのは13件目となるが、立法時点で違憲としたのは初めてである。また除斥期間について、20年という期間の経過で賠償請求権は消滅し、国が賠償責任を免れるとすることは「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない」とし、国の除斥期間の主張は「信義則に反し、権利の濫用として許されない」とのべ、過去の判例を変更する判断を示した。二審で原告が勝訴した4件に対する国の上告を棄却し、原告が敗訴した1件は審理を高裁に差し戻した。
 旧優生保護法は、障害者の存在を否定する優生思想にもとづき、子どもを産むかどうかを意思決定する個人の権利を「公益」を理由に国が一方的に剥奪(はくだつ)する許されざる「戦後最大の人権侵害」である。2018年の仙台地裁以来、各地で国賠訴訟が提訴されてきたが、原告は高齢化しており、39人のうちすでに6人が亡くなっている。一方、一時金支給法の認定者は2024年4月末時点で1200人にとどまっている。不妊手術を受けた2万5000人の多くは、自ら受けた重大な人権侵害に対していまだ声をあげられないままの状態におかれている。
 今回の判決は、すべての被害者の救済に道をひらくものである。国会と政府は、最高裁判決の内容を重く真摯(しんし)に受けとめ、すみやかに被害者に謝罪し、原告当事者をふくむすべての被害者・家族の尊厳の回復と救済をはかる法的措置を早急に講じるべきだ。旧優生保護法が現行憲法下で制定され、半世紀近くにわたり不妊手術が続けられ、さらに法改定後も被害者が放置されてきたことに対する深い検証と総括を行うことは、再発防止と優生思想を払拭する上で不可欠な作業である。当事者が参加した第三者機関を設置して開始することを要請する。
 全日本民医連は、当事者と連携し、旧優生保護法問題の全面解決に向けてとりくむとともに、個人の尊厳と多様性が尊重される社会、障害があっても生きやすい社会の実現をめざし、ひきつづき力を尽くしていく。

(民医連新聞 第1810号 2024年7月15日号)

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