副作用モニター情報〈618〉 ロキソプロフェンによる腎障害
非ステロイド性消炎鎮痛剤(略称:NSAIDs)は、体内で炎症を引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、痛みや炎症に対して頻用されています。NSAIDsのうち、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどの成分は市販薬にもなっています。
今回、既知の副作用ではありますが、ロキソプロフェン錠による腎障害の症例を、注意喚起のため紹介します。
症例)70代後半男性 身長160cm台体重50kg前後
高血圧、脂質異常症などで、アトルバスタチン錠、アムロジピン錠、カンデサルタン錠などを服用中。
副作用発現9カ月前:血清クレアチニン値(Cr)1.01mg/dl。若干の腎障害があると考えられる数値。
副作用発現5カ月前まで変化なし。
副作用発現3カ月前:腰痛で他院受診。ロキソプロフェン錠60mg3錠/日を処方され、副作用発現1カ月前に2錠/日に減量。
副作用発現日:血液検査の結果、Cr=1.87mg/dlと腎障害の急速な進行が判明。自覚症状は特になし。ロキソプロフェン錠は中止。その後、腰痛に対してはアセトアミノフェン錠500mg3錠/日で対応。ロキソプロフェン錠中止後2カ月でCr=1.25mg/dlに改善。
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今回の症例は、カンデサルタン服用中にNSAIDsが追加となり、腎臓にさらなる負荷がかかった結果と分析します。ロキソプロフェン錠の投薬中止により、一定の改善を示しています。
腎機能を血液検査でチェックせずにNSAIDsを投薬する場面は多く、難しい問題を含んでいますが、Crが通常より高い、蛋白(たんぱく)尿があるなど、腎機能障害の兆候がある場合には、患者の申告が非常に重要です。腎障害がある場合には、NSAIDsでなく、アセトアミノフェンの投与が推奨されています。
腰痛は、炎症が関与していることが多く、医師は第一選択薬としてNSAIDsを処方するケースが非常に多いでしょう。今回のケースは中止してある程度改善していますが、NSAIDsによる腎障害は、場合によっては不可逆的な場合もあることに留意しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1809号 2024年7月1日号)
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