民医連新聞

2024年7月2日

連載 いまそこにあるケア 第7回 ケアは続くよ、どこまでも 文:斎藤真緒

 ヤングケアラーが注目をされるようになった2020年頃は、支援対象は「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを行っている18歳未満の子ども」(傍点筆者)とされていました。24年6月に支援が法律で明記されましたが、それは18歳未満の児童を対象とする「児童福祉法」ではなく、30代までの若者を対象とする「子ども若者育成支援推進法」の改正を通じてでした。
 政府が実施した調査で、大学3年生のケアラー割合は6.2%、「過去ケアをしたことがある」と回答したものと合算すると10.2%でした。詳しく見ると小学生から高校生までは、「幼いきょうだいの世話」がもっとも多いのですが、大学生は母親(35.4%)、祖母(32.8%)とケアの対象が変化しています。つまり、家庭とは断続的にケアが発生し続ける場なのです。22年からは成人年齢が18歳になり、若者は家族にとっても、社会にとっても、ケアを担う重要なマンパワーとしてみなされることが多くなります。またケアを理由として、高等教育に進学できない、あるいは経済的なささえ手に回らざるを得ない若者も多数存在すると想定されます。
 実は、ケアラーの周辺にはグレーゾーンが存在します。例えば、障害児のきょうだいの場合、親・保護者や他の家族がケアを担っている場合も多く、「きょうだい」という立場だけでは自動的にケアラーにはなりません。一方、彼らは将来ケア役割が回ってくる可能性の高い存在でもあります。日常生活でも親の相談役になったり、進学や将来の仕事にかかわって、「親なき後」のプレッシャーを感じるきょうだいもいます。しかし、法律で支援対象とされているのは「現在(すでに)ケアを担っている」子ども・若者のみであり、「きょうだい」は、行為としてはケアを担っていないために、支援対象とはみなされにくいのです。
 晩婚化・晩産化がすすむなかで、今や一人っ子家庭も珍しくありません。例えば大学生の場合、すでにどちらかの親が定年退職間近で、近い将来、自分が親の介護を引き受けなければならないことを前提に、進路や就職先を選択せざるを得ない学生もいます。少子高齢化のなかで、誰もがケアラーになり得る時代です。すでにケアラーになっている人だけではなく、こうした潜在的なケアラーにも配慮した支援が必要になってくるでしょう。


さいとうまお:立命館大学産業社会学部教授/子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト発起人

(民医連新聞 第1809号 2024年7月1日号)

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