いつでも元気

2024年6月28日

青の森 緑の海

2014年6月 座間味島にて

 「沖縄のおすすめの季節はいつですか?」とよく聞かれる。生きものが好きな人なら、冬でも夏でも興味のある生きものに合わせればいい。それ以外の場合は、〝夏〟をおすすめしている。
 確かにとてつもなく暑いのだが、都会のビル街の暑さとは異なり、強烈な太陽と潮風に自然の力をダイレクトに感じられる。そして、その光に照らされた海の青は問答無用で美しい。
 写真は2000年に始まった海上レース「サバニ帆漕(はんそう)レース」の様子。毎年6月下旬、慶良間(けらま)諸島の座間味島(ざまみじま)から那覇港まで風力と人力だけで走りきる。
 琉球古来の木造船「サバニ」は、製作に時間と資金、高度な手仕事も必要で、エンジン船の普及以来、廃れる一方だった。そこで、スポーツとしての側面からサバニの魅力を知ってもらい、伝統文化として継承していこうと始まったのがこのレースだ。
 帆漕レースと銘打たれた通り、帆を使うだけでなく人力で漕ぐ。総距離は約19海里(35㎞)。うねりも波も高い外洋だ。そこでは腕力や体力だけでなく、風や潮を読む経験値や帆を操る技術、呼吸を合わせるチームワークも要求される。
 朝8時すぎ、座間味島の砂浜で安全祈願を神人(かみんちゅ)が執り行ったあと、色とりどりの帆を掲げたサバニが合図と同時に一斉に漕ぎ出していく。速いチームは午後1時には那覇港に到着。エンジンを使えばあっという間の距離をあえて人力で渡る。そこには、自然と折り合いをつけてきた伝統文化への共感、尊敬がある。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/

いつでも元気 2024.7 No.392

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