声明・見解

2024年6月24日

【声明2024.06.11】原告・被害者の願いにかなう、公正と正義に基づく判決を強く求める -旧優生保護法下での強制不妊手術国賠訴訟・最高裁大法廷審理の結審にあたって

2024年6月11日
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)
会長 増田 剛
同 人権と倫理センター
センター長 加賀美 理帆

 5月29日、旧優生保護法下で行われた強制不妊手術に対する5件の訴訟の上告弁論が最高裁大法廷で行われた。不法行為から20年を経過すると損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用するかどうかが最大の争点とされ、最高裁は7月3日に判決を言い渡し、統一判断を示すとしている。

 審理の対象とされたのは、大阪2件(うち1件は神戸訴訟)、東京、札幌、仙台の高裁判決である。いずれも旧優生保護法の違憲性は認めながらも、除斥期間の適用については判断が割れ、大阪2件、東京、札幌の各判決では、「除斥期間の適用を認めることは著しく正義と公平に反する」とした上で、除斥期間の適用を制限し国の賠償責任を認める一方、仙台高裁判決は、除斥期間をそのまま適用し、原告の請求を棄却した。

 最高裁大法廷での公判では、原告から、「判事のみなさんは原告の姿を、目を見ながら聞いてほしい」、「子どもを捨てられ、子どもを産まない手術もされ、差別に苦しんでも辛抱するしかなかった人生をどうか理解してほしい」、「幸せか不幸かは自分が決めることであり、自分で自分の人生を決めたかった。それが出来なかったことが悔しい」、「国が障害者を差別し、尊厳を否定してきたことが認められなければ被害は終わらない」、「幸せな結婚や子どもというささやかな夢を全て奪われ、人生は狂わされた」など、不妊手術を強制された怒り、悔しさ、悲しみが次々と語られるとともに、「被害者全員の人生を救う判決を書いてほしい」という強い希望が表明された。

 原告被害者は高齢化し、39名の原告のうちすでに6名が亡くなっており、存命している原告も次々と心身の状態を悪化させている状況にある。原告に残された時間は極めて少ない。除斥期間という時間の経過を理由に国が免責され、被害者救済の道が閉ざされることがあってはならない。最高裁として、原告の願いに正面から向き合う、公正と正義に基づく判断を示すことを期待する。

 また、議員立法として制定された一時金支給法の認定者は、2024年4月末時点でわずか1200名にとどまるなど、不妊手術を受けた2万5000人の多くは自ら受けた重大な人権侵害に対して声をあげられないままの状態におかれている。

 旧優生保護法は、障害者の存在を否定する優生思想に基づき、子どもを産むかどうかを意思決定する個人の権利を「公益」を理由に国が一方的に剥奪する許されざる人権侵害をもたらした。

 最高裁には、人権を守る最後の砦として、国賠訴訟を提訴した原告の救済に留まらず、旧優生保護法下で不妊手術を強制されたすべての被害者に対する補償と尊厳の回復を実現させ、いまだ社会に根づく優生思想の根絶に向けた規範となる考え方を示すことを強く求める。

以上

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