民医連新聞

2024年6月18日

歯科を身近に 予防や保健指導で地域の健康づくり 高齢者・子育てサロンにとりくむ歯科衛生士 山口・協立歯科

 今年4月の歯科衛生士交流集会で完成した「民医連歯科衛生士の基本となるもの」。予防処置と保健指導を多職種連携ですすめ、積極的なアウトリーチで地域社会が抱える問題を掘り起こすことを提起しています。6月3日、山口・協立歯科でのとりくみを取材しました。(長野典右記者)

口の健康を意識

 「あいうべぇ」、「あいうべぇ」と、福祉サロン「にじの家」から声が聞こえてきました。今回の「高齢者サロン」は入職2年目の金重はづきさん(歯科衛生士)が講師デビュー。「だ液は魔法の水」をテーマに、だ液腺マッサージ、「あいうべ」体操を行いました。また舌ブラシは実物を示しながら、口腔(こうくう)ケアの大切さを説明しました。「とても緊張した。参加者の反応も見ながら、うまく伝えられるように、これから勉強」と金重さん。参加者は、「虫歯になりやすい生活がよくわかった」「口の健康を意識するようになった」「数多くある歯ブラシの選び方がわかる」と好評でした。
 「高齢者サロン」は月に1回開催しています。これまで「高齢者サロン」を4年担当していた木村香朋(かほ)さん(歯科衛生士)は歯科衛生士の奨学生出身で、今年入職9年目。子どもの頃から虫歯と無縁だったこともあり、歯科衛生士をめざしました。「高齢者サロン」は「自分で学習テーマを決め、自身も勉強することで成長につながった」とふり返ります。「防災持ち出し品のなかにはかならず歯ブラシを」とも訴え、災害時の関心の高さを感じたと言います。

助産師とコラボ

 炭鉱で働く人が暮らす地域に1974年9月に誕生した山口健康文化会(現医療生協健文会)は、今年で設立50年。設立3年後にできた見初(みぞめ)こども歯科には当時、子どもやその家族が広範囲から受診していました。その流れをくむ協立歯科。少子化のなかでも「小児歯科を復活させたい思いがあった」と語るのは、同生協理事で元職員の山崎郁代さん(助産師)。
 山崎さんは、助産師と歯科でできることはないかと、助産師による子育ての悩み相談と歯科衛生士の歯の相談という内容で「子育てサロン」の実施を考えました。妊婦、3歳児までの保護者を対象に、1時間で3組。機関紙「健康のひろば」や法人のホームページ、SNSも活用し、参加を呼びかけました。会場は、現在、協立歯科の待合室のキッズスペースとし、2カ月に1回、これまで7回開催し、のべ18人が参加しました。
 同法人「地域福祉室メロス」室長の森山美千留さん(看護師)は「地域の実態を知り、歯科を通してSDH(健康の社会的決定要因)の視点をもった活動をひろめることは大切」と語ります。

連携の中心に

 2022年12月、第1回「子育てサロン」を開催しました。当時はコロナ禍だったのでWEBで実施。その後、育児の悩みや食習慣の改善、成長相談や栄養指導、歯磨きや仕上げ磨きの練習、歯磨き粉や指しゃぶりの指導をしながら質疑応答を行っています。
 同法人歯科部の歯科衛生士総士長の牧野吏恵(りえ)さんは、「1回目を実施した時、今後の課題が見えたが、『次はいつですか』と参加者に聞かれた時、改善しながら続けていきたいと思った」とふり返ります。参加した母親同士のつながりにもなり、当日の写真を参加者に渡すなどの工夫も。「育児経験があってもなくても、ここは専門職の仕事」と歯科衛生士全員がかかわりました。木村さんは育児の経験を生かして、「歯科を身近に感じられる時間を過ごせた」と言います。
 事務長の永安英典さん(事務)は、「子育てサロンの開催頻度などを検討したい。医科・歯科・介護の連携の中心になってほしい」と言います。所長の尾中浩文さん(歯科医師)は「活躍の場は多岐にわたるので、よりいっそうの活躍を」と期待を語りました。

(民医連新聞 第1808号 2024年6月17日号)

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