民医連新聞

2024年6月18日

未来つなぐ医学生とともに 地域を越えて学びあう長崎で県連合同奨学生ミーティング―埼玉民医連

 昨年12月に開かれた、全国医学生担当者活動交流集会の演題報告3回目は、埼玉民医連の報告です。(文・合六(あいろく)拓己)

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 埼玉民医連は昨年3月、広島で平和学習のフィールドワーク(以下、FW)を実施。その後、5年生の奨学生から「再度、平和学習を行いたい」との希望があがりました。これを受けて当県連の長崎大学出身の医師が、長崎でのFW開催を提案。長崎民医連に相談したところ、長崎の奨学生からも「外国人医療について学習したい」との希望があり、昨年11月、「埼玉の外国人医療と長崎の原爆被害」をテーマとした、両県連合同の奨学生ミーティング(以下、MT)開催に至りました。
 参加者は、埼玉が医学生5人、医師1人、医学生担当2人。長崎は医学生6人、看護学生3人、医学生担当3人の合計20人でした。
 合同MTでは発表の時間を設けました。その発表に向けた事前学習として昨年10月、「在日クルド人と共に」(埼玉県蕨市の外国人支援団体)主催の日本語教室に、1年生の奨学生が参加。支援団体の人の話も聞き、学生からは「クルド人が日本で直面する文化の違いや暮らしづらさ、生活支援の必要性を学ぶことができた」との感想がありました。

■被爆の実相を学んで議論

 1日目、長崎の原爆資料館を見学し、平和公園を散策しました。長崎の山がちな地形が広島より原爆の被害が少なかった要因だったこと、長崎の原爆資料館の方が被害の悲惨さにフォーカスした展示だったことなど、広島と比較した感想も出ました。
 次に被爆体験講話です。講師の長野靖男さんは被爆当時2歳でしたが、16歳で被爆した渡辺千恵子さんと出会い、音楽作品を通して被爆体験を語り継ぐ活動をしています。学生からは「唯一の(戦争)被爆国・日本に暮らす私たちが、被爆体験を聞いて学び、二度とくり返さないための未来をつくることが義務」「胎児被爆や被爆後遺症によって苦しみ続ける方たちを守っていかなければ」などの感想が出ました。
 続く長崎の奨学生の発表でも、被爆者は「医療費がタダだから」との厳しい視線にさらされたり、「『後遺症が遺伝する』と差別された」などの話が。当県連の奨学生からは「社会的弱者がいかなる背景や問題を抱えていても、それを理解し受け止めることが大切」との感想があり、医療従事者としての人権擁護の考えが身についていることに成長を感じました。
 その後、SGD(スモールグループディスカッション)。「平和のために医療従事者にできることは戦争に反対することと、すべての人に医療が行き届くように活動すること」との力強い意見がありました。

■在日外国人の実情を報告

 2日目は、当県連の医学生担当、奨学生、医師が発表し、クルド人の歴史と日本での教育や支援の状況、受診した外国籍の人の事例を報告。特に現場の医師の話を聞けたことは、自分たちが対応する際のイメージやできる支援、治療を考える機会になったようです。
 学習の後は、グラバー園まで坂道を歩きました。道が急勾配で、学生たちはヒーヒー言っていましたが、道中、長崎と埼玉の学生が会話したり、いっしょに写真を撮る姿がたくさんありました。

■学習と交流の声に応えて

 1日目の夕食、2日目の昼食時にも交流会を行い、悩みや思いを語り合いました。「長崎の学生との交流はとても刺激的で、時間が足りなかった」との感想が出ました。
 学生たちの感想から、このFW、MTを通して得た学びは、医療従事者として当事者の背景を理解し、適切な医療と生活支援を行い、当たり前の生活ができるよう人権を尊重する活動をしていくことだと思いました。外国人と被爆者で背景は異なりますが、人権が守られていないという共通点を学生たちは見いだしていました。
 現地でしか得られない見聞と、地域を越えた学生との交流、学び合いから、さまざまな価値観に触れて、視野をひろげることが学生の成長につながる、と私たち担当者も学びました。
 学生からは「長崎の学生を埼玉に呼びたい」「もっと他県の学生と交流したい」との希望が。希望を聞き取り、学習と交流の場を設けていきたいと思います。

(民医連新聞 第1808号 2024年6月17日号)

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