民医連新聞

2024年6月4日

相談室日誌 連載561 医療的ケア児支援の課題 未来を閉ざさない声あげる(東京)

 2021年、医療的ケア児支援法が成立し各都道府県に医療的ケア児支援センター設立が義務付けられました。しかし、サービスを利用できない場面が多々あります。
 Aちゃんは2歳9カ月、31週での早産・極低出生体重児で生まれた女の子。生まれつき両大血管右室起始症、肺動脈弁下心室中隔欠損、大動脈弁狭窄(きょうさく)症、両側上大静脈、動脈管開存症の心臓の障害があり、生後一週間で手術を行いました。その後も3度の大手術を経て、退院するまでに1年半近くかかりました。退院後も胃瘻(いろう)、腸瘻(ちょうろう)、人工呼吸器管理は継続中。週5日、訪問看護で入浴やバンドの交換などを手伝ってもらっていますが、夜間のケアでお母さんは「掃除する時間がない、母に手伝ってもらっている」「睡眠時間の確保が難しい」と話していました。
 児童デイサービスの利用に向け、医療的ケアの内容、手技を、お母さんと事業所で確認しました。Aちゃんを単独で預かれるようになるまでに5カ月。両親のレスパイトのため短期入所先も見学。しかし「体重が10kg以下は受け入れ不可」「動ける医療的ケア児を受け入れた前例がない」「寝返り防止の上着の使用を了承するなら受け入れ可能」との返答。「受給者証は14日泊まれるようになっているのに全然使えない」「診察を受けるまでに2カ月待ちなら利用できるまで4カ月はかかりますね」と見学のたびに期待は落胆に変わります。
 医療的ケア児の支援を通して、地域課題が見えてきました。短期入所施設がない、レスパイト入院できる病院がない、児童の吸引ができるヘルパー事業所が少ない、事業者側に高リスク管理が求められ、家族が求めるケアの水準と現状のミスマッチが埋まらない状況があります。介護と障害の共生型サービスのひろがりも厳しい状況。また、医療的ケア児は心身状態が不安定な時が多く、体動があるなどの特性があります。小児対応経験者も少なく、医師の指示がない場面で、支援できる人が限られてしまう課題もあります。
 医療の進歩により救われるいのちは増えていますが、救われた未来が、ケアが確保できないために閉ざされてしまわないよう、声をあげる必要があります。

(民医連新聞 第1807号 2024年6月3日号)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ