民医連新聞

2024年6月4日

私がここにいるワケ 多様な人がともに生きる世界をひろげるリハビリ 福岡・米の山病院 言語聴覚士 福島 衣理さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ11回目は、言語聴覚士の福島衣理(えり)さん(福岡・米の山病院)です。(丸山いぶき記者)

■人生に携わる責任

 福島さんは、入職8年目。新卒で急性期の米の山病院に配属後、みさき病院や老健くろさき苑で認知症や介護分野も経験し、この春米の山病院に戻ってきました。
 高校生の時、子どもに携わる仕事に就きたいと参加した大学のオープンキャンパスで、小児リハビリ支援もできる言語聴覚士のことを知り、めざすことを決意。就職活動の際、「小児リハと成人リハのどちらもしたい」と恩師に相談すると、「必要な人がみんな医療を受けられるわけではない。ひとり親や支援を必要とする人にもかかわれる」と、米の山病院を勧めてくれました。
 その言葉通り、医療にアクセスしにくい患者のニーズにも手厚く応える病院で、「毎日が充実している」と福島さん。病棟、小児、がん、心臓、外来といったチームで、さまざまなとりくみを行う同院リハ科で、現在、前3つのチームに所属して奮闘しています。
 戦争と平和について学ぶ機会も多く、「私たちでは到底耐えられない、戦争の時代を生きた高齢の患者さんからの“ありがとう”に、人生に携わる責任を感じる」と言います。

■機能回復だけでなく

 病院では「食べられるように」など、機能回復に向けた必要な訓練を行えます。しかし老健では、介護保険制度でのリハビリに「とても悩んだ」と。限られた時間のなか、在宅生活を見据え、ケアに近い役割も担います。認知症の利用者には、リハビリの意味を理解してもらうことも困難でした。
 そんな時、職場の先輩が「認知症の利用者には、“楽しい”“心地良かった”という、良い記憶を提供することが大切だよ」と教えてくれました。「リハビリ技術だけでなく気持ちを―。その言葉に救われた」と福島さん。老健に専従の言語聴覚士を配置できる強みも実感。その先輩を含め、「リハビリ技術や小児へのかかわり方など、憧れの先輩は各事業所にいっぱいいる」と笑います。

■背景あっての言動

 民医連の言語聴覚士として大事にしていることは、「患者・利用者の背景を知ること」。患者の言葉に傷つくこともありますが、「聞くと、背景あっての言動。それを知って接すると気持ちも変わる」と、SWや退院支援で家庭訪問した理学療法士からも、積極的に情報を得るようにしています。
 経鼻経管栄養の管や胃ろうが外れ、口から食べられるようになったり、失語症の患者が単語を言えるようになった時の、患者本人や家族の「うれしい」の声、リハビリに一所懸命にとりくむ患者の姿が、やりがいになっています。

■求められる小児リハ

 理学療法士や作業療法士に比べれば歴史が浅く、まだまだ不足する言語聴覚士。「特にいま、小児分野で求められていると感じる」と福島さんは言います。
 「3歳児健診や幼稚園などで発達特性を指摘され、受診する子どもが多い。ひと昔前は、発達が緩やかで、発声や発語、聞こえ方に困難を抱えていても見過ごされ、生きづらさを抱えたまま、生きる世界を狭められていた。でもいまは、リハビリで学校に通えるようになることもある。特性をもついろんな人が、いっしょに生きていける時代」と目を輝かせます。

(民医連新聞 第1807号 2024年6月3日号)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ