副作用モニター情報〈616〉 漢方薬の長期投与には定期的に効果判定を
漢方薬は、自然界にある植物などの生薬を、原則として複数組み合わせてつくられた薬です。有効な成分を選んで用いる西洋薬と違い、1つの生薬に複数の有効成分が含まれ、さらにその生薬の組み合わせである漢方エキス製剤は、多種多様な成分が少量ずつ複合的に作用するという特性があります。1967年から保険収載され、医師の処方により多く使用されるようになりました。一方で、保険上の適応病名と本来の漢方薬の適応との間で齟齬(そご)が生じている実態は放置されたままです。
今回は、効果がはっきりしないまま服用を5年継続し、中止したことで症状が改善した症例を紹介します。
症例)80代 女性
主訴:食欲不振
吐き気あり、ランソプラゾール15mg開始。7カ月後、効果なく、タケキャブに変更。
食欲なくツムラ補中益気湯追加。改善なく、口のなかが苦いとの訴えでツムラ六君子湯に変更。吐き気に対しメトクロプラミド追加するも、食欲不振と悪心継続。補中益気湯と六君子湯の変更をくり返すが、症状改善せず。
5年間、漢方薬、胃酸分泌抑制剤を継続していたが、思い切ってやめてみたら、食欲回復、おいしさを感じるようになってきた。メトクロプラミドも減量を経て中止。
漢方薬による副作用と判断された。
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今回の六君子湯と補中益気湯は適応病名が違うので併用が可能と思われがちですが、6種類の生薬が重複しています。また六君子湯と補中益気湯は構成生薬に「朮(じゅつ)」が含まれますが、蒼朮(そうじゅつ)を使用しているメーカー(ツムラなど)と白朮(びゃくじゅつ)を使用しているメーカーがあります。漢方の原典である神農本草経にこの区別がないためです。白朮は虚証を対象としますが、蒼朮は実証を対象とするため、効果の切れ味はよくなる半面、漫然と投与すると副作用が現れる恐れがあります。
漢方薬の効果判定は、急性症状であれば数時間~数日以内、慢性の病態であれば2~4週間程度で行います。もし、効果が感じられない場合には中止してみることが肝要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1807号 2024年6月3日号)
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