いつでも元気

2024年5月31日

まちのチカラ 三重県菰野町 四季を巡るゴンドラと豪快な僧兵文化

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

伊勢湾や知多半島が一望できる御在所ロープウエイ(菰野町観光協会提供)

 三重県の北部、鈴鹿山脈の主峰をなす御在所岳で知られる菰野町。
 1300年の歴史を持つ湯の山温泉には、伝統を紡ぐ郷土菓子と、僧兵の歴史が息づきます。
 新しい旅のスタイル「菰ビリティ」も紹介します。

 名古屋駅から南西に車を走らせること45分、菰野町に到着しました。町の西側には標高1212mの御在所岳を代表とする山々が連なります。
 御在所岳中腹の湯の山温泉から伸びる御在所ロープウエイは、全長2161m、高低差約780mと日本最大級のロープウエイ。山肌にそびえる高さ61mの白い鉄塔は、ロープウエイ鉄塔の中で日本一の高さを誇り、通称「白鉄塔」としてその名が知られています。
 ゴンドラからは雄大な自然の大パノラマを眺めることができ、春はツツジ、夏はアカトンボ、秋は紅葉、冬はきらめく樹氷と、四季折々の景観が広がります。
 御在所岳は日本二百名山のひとつとして登山客にも人気。登山道にはキレット(山の尾根のV字状に深く切れ込んだ場所)やクサリ場などの難所があり、いたるところに巨岩がそびえ立ちます。5合目あたりにある地蔵岩は2つの岩の間に四角形の岩が挟まるように乗った奇岩。「絶対に落ちない」ことで有名なため、受験生に人気です。
ロープウエイに乗って山上散策を楽しむもよし、本格的に登山するもよしの御在所岳を、ぜひ堪能してください。

旅するお菓子 湯の花せんべい

 湯の山温泉で人気の土産物湯の花せんべいは、ほのかな甘さの炭酸せんべい。余分な添加物は使わず、シンプルな材料と鈴鹿山麓の伏流水に炭酸を加えた、サクサクと軽い食感です。かぐわしい香りに誘われて、日の出屋製菓を訪ねました。
 戦後間もない昭和20年代、現代表の千種啓資さんの祖父、千種一夫さんが、手焼きの炭酸せんべいをリヤカーで売り歩いたのが日の出屋製菓の始まり。工場では、職人歴41年の棚瀬正次さんがその日の温度や湿度によって材料を調節し、年季の入った機械に流して焼いています。
 70年以上地元で愛される味を「遠くの街まで届く、旅する菓子にしたい」と語る千種さん。県外のみならず、海外進出にも本格的に乗り出しました。「地場産業を身近に感じてほしい」と、工場見学も可能です。伝統の味を守りながら、次世代につながるお土産文化を開拓しています。

みなぎる力 僧兵鍋

 湯の山温泉は開湯1300年の歴史を持ち、情緒あふれる温泉街が魅力です。この地に建つ三嶽寺には、かつて300人以上の僧兵(武装した僧侶)がいたとされます。戦国時代に織田信長の焼き討ちで焼失しますが、江戸時代に現在の場所に再建されました。
 毎年10月上旬の僧兵まつりでは、僧兵装束をまとった住民らが凄まじい炎を巻き上げる重さ600㎏の火炎みこしを担ぎ、温泉街を練り歩きます。
 勇壮な僧兵のスタミナ源、僧兵鍋が湯の山温泉に伝えられていると聞き、鹿の湯ホテルへ。「温泉にゆったり浸かったあとは、湯の山にしかない門外不出の鍋をお酒とともに楽しんでください」と迎えてくれたのは、女将の伊藤寿美子さん。
 猪や鹿などの肉と地場野菜を酒粕と数種類の味噌で煮込んだ鍋は、体の芯から温まる至福の味。山いものすりおろしを付けると味はまろやかに変化し、さらにスタミナ満点です。
 テーブルには「僧兵鍋のおきて」が掲げられており、「僧兵鍋を食すとき信長の話はせぬこと」とあります。武家政治に抗った僧兵に思いを馳せて、お召し上がりください。

アクティブな旅 菰ビリティ

 最後にご紹介するのは菰ビリティ。菰野町観光協会が提案する新しい旅のスタイルで、電動アシストの自転車やバイク、キックボードなどの「モビリティ」をレンタルし、町内各所をアクティブに周遊できます。
 道の駅や温泉街、キャンプ場などの観光施設にレンタルスポットが設置されていると聞き、さっそく挑戦しました。
 初代菰野藩主土方雄氏の妻で、織田信長の孫娘でもある八重姫ゆかりの地をめぐる「おてんば姫の道草コース」は、町の中心地にある歴史の見どころをまわります。
 約3・9㎞の行程で、菰野城跡、見性寺、廣幡神社などをのんびりとした田園風景がつなぎます。どこか懐かしい景色の中を風を切って駆け抜けながら、八重姫の時代にタイムスリップした気分です。
 他にも、渓谷や山の景色を巡るコース、おいしい料理と買い物スポットを満喫するコースなど、さまざまなサイクリングコースが設定されています。子ども向け電動自転車も用意されているので、家族で自由な旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

■次回は熊本県山都町です。

まちのデータ

人口
40,931人(3月31日現在)
おすすめの特産品
マコモタケ、菰野茶、ニジマス
手延べ麺
アクセス
名古屋駅から湯の山温泉まで車で45分
近鉄湯の山温泉駅まで電車で1時間15分
問い合わせ先
菰野町観光協会 059-394-0050

いつでも元気 2024.6 No.391

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