副作用モニター情報〈612〉 フェブキソスタットによる血清甲状腺刺激ホルモンTSH値の上昇
フェブキソスタットは、痛風および高尿酸血症に対してひろく用いられています。アロプリノールと同様に尿酸の主要な生成酵素であるキサンチンオキシダーゼ(以下、XO)を阻害し、尿酸生成を減少させます。今回は、フェブキソスタットによると思われるTSH値の上昇を認めた症例を紹介します。
症例)60代男性
開始日:アロプリノール100mgからフェブキソスタット20mgへ変更、甲状腺機能に関する検査はなし。
開始4年8カ月後:TSH79.08μIU/ml(基準値:0.500~5.000)、TSH値の上昇を認めたため、フェブキソスタット中止、投与9週後に改善した(表)。
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国内臨床試験では、フェブキソスタット群のTSH上昇割合がプラセボ群およびアロプリノール群と比べて高いことが確認されています。海外臨床試験でも、甲状腺機能に関連する有害事象が報告されています。医薬品リスク管理計画書(RMP)には、「甲状腺機能に関する事象」が重要な潜在的リスクとして記載され、添付文書にも甲状腺関連所見の確認と異常時の検査を実施するよう記載されています。国内市販後調査では「TSH異常」と「F-T3異常」の重篤な症例が各1例報告されています。
海外の観察研究では、フェブキソスタット服用中の痛風患者約5.5%でTSHが5.5μIU/ml以上に上昇。一方で、対照群のアロプリノール服用者でも同様のTSH上昇が約5.8%確認されています。このメカニズムは不明で、フェブキソスタット特有の作用かXO阻害薬に共通する作用かは明確ではありません。ただし、TSHの上昇はF-T4の値に影響を与えないことが確認されており、臨床的に重要な影響がないかもしれません。本剤投与中は甲状腺機能の変化に注意を払う必要があるでしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1803号 2024年4月1日号)
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