副作用モニター情報〈608〉 抗アレルギー薬ルパフィン錠による肝障害
症例)卵巣腫瘍・肺がん術後の60代女性。全身の掻痒(そうよう)感に対してルパフィン錠(ルパタジンフマル酸塩)10mg、1錠、1×寝る前で服用開始。
11日目:ルパフィン錠を1回2錠へ増量(症状に応じて1回20mgまで増量可能)。
20日目:症状増悪のため、皮膚科受診。オロパタジン錠5mg1錠を追加。
37日目:掻爬(そうは)は軽減する。傾眠傾向にてオロパタジン錠を中止。
38日目:採血にて肝機能値悪化がみられ、ルパフィン錠中止(AST:175 ALT:124)。
52日目:肝機能値正常化(AST:24 ALT:17)。
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今回の症例患者は、がん患者でしたが、肝臓へのがん転移はなかったため、ルパフィンによる肝障害と考えられました。
ルパフィン錠は、抗ヒスタミン作用と抗PAF作用を併せ持つ薬として発売になった抗アレルギー薬です。PAFとは血小板活性因子で、炎症反応にかかわっていると考えられるケミカルメディエーターで、この付加作用により他の抗アレルギー薬と差別化されています。
この薬剤は、肝代謝酵素CYP3A4により代謝され、活性代謝物デスロラタジンへと変化します。添付文書上、重大な副作用に「肝機能障害、黄疸」が頻度不明で報告されています。
当委員会へのルパフィン錠の副作用報告は3年間で4件と多くはありません。しかし、花粉症の大流行や一部薬品の供給不足などによりルパフィンの使用頻度は増えていると感じます。ルパフィンを含め、新しい世代の抗アレルギー薬(ビラノア・デザレックスなど)は、眠気などが軽減されており、どうしても副作用が少ないイメージがついています。それでも、添付文書の副作用記載では肝機能障害や黄疸などがあがっているため、油断は禁物です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1796号 2023年12月4日・18日合併号)
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