【声明2023.11.09】長期収載品等の薬剤自己負担の在り方の見直しに反対する
厚生労働大臣 殿
2023年11月9日
全日本民主医療機関連合会
増田 剛
薬剤委員長
金田早苗
国民の命と健康を守るために日夜奮闘されている貴職に敬意を申し上げます。
現在医療機関ではインフルエンザ等の感染症の流行が拡大している中で、医薬品供給に関して国としてメーカーへの増産支援の策定は決定しましたが、不安定な状況は引き続き改善されておらず、必要な薬剤を処方できない現状が続いています。また物価高騰の影響もあり病院・保険薬局をはじめとした多くの医療機関の運営と経営は今まで以上の苦難を強いられています。このような状況で私たち民医連は「安心して住み続けられるまちづくりをめざす」という理念のもと、地域の医療・介護・福祉の充実に向けて邁進しています。
2024年の診療報酬・介護報酬・障害サービス報酬のトリプル改定にむけて、「経済財政運営と改革の基本方針2023」が示される中で11月9日の社会保障審議会では「長期収載品の自己負担の在り方の見直し」の検討が行われました。
長期収載品を選択する際に後発医薬品との差額を本人負担にすることは、①患者本人の意思ではない経済的理由が医師の処方より優先されることになること、②未だ続く医薬品供給不安定の中で、長期収載品から変更する後発医薬品が入手できない事態が想定されること、③公費受給者では患者の意思が尊重されず、今まで以上に後発品に誘導されてしまうこと、④将来的に薬剤の3割を超す自己負担につながることなど医療保険における自己負担に関する根本に関わるものであり、見過ごすことはできません。
社会保障費を削減するために自己負担が増やすことは、受診抑制や治療を自ら制限することによって重症化につながることは容易に想定されます。ましてや自己負担を増やし生み出された保険財源で、企業のイノベーション促進に活用することは 健康保険法第一章第一条(この法律は業務災害以外の疾病負傷若しくは死亡または出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする)に反するものであり到底認められません。日本が誇る皆保険制度による人権として医療を受ける権利が脅かされものでもあり、すべての国民のいのちと受療権をまもるためにも薬剤自己負担を増やすことについて撤回を要望します。
以上
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