民医連新聞

2023年10月3日

止められた電気を回復 猛暑からいのち守った実践例 大阪民医連熱中症訪問調査から

 今年も各地でいのちにかかわるような暑さを記録しました。20年目を迎えた大阪民医連の熱中症訪問調査でも、あわや「いのちの危機」という事例がありました。(丸山いぶき記者)

 連日、真夏日や猛暑日を記録していた7月中旬、大阪市北区、昔ながらの商店街のなかにある、いきいきケアプランセンターに、高齢の男性が訪ねてきました。
 Aさん、70代後半。独居で生活保護を利用しています。まだら認知症がすすみ要介護2ですが、介護保険サービスの利用には拒否感が強く、福祉用具貸与のみの利用。携帯電話も紛失中でした。
 あいにく、Aさんが唯一心を許す担当ケアマネジャーの松山輝江さんは、不在。いつもは威勢のいいAさんですが、この日はヨロヨロと元気のない様子で、何も告げずに帰ってしまったといいます。
 翌日の午後、松山さんが熱中症訪問調査を兼ねて、あらためてAさんのワンルームを訪ねました。すると部屋は真っ暗で、「料金払ってんのに、4日前に電気止められた」とAさん。睡眠時に酸素を送る医療機器も使えない状況でした。気温36度超えの猛暑日で、「室内は風通しが悪く、体感では同じかそれ以上あるようにも感じた」と松山さんはふり返ります。

ケアマネの対応力を発揮

 松山さんはすぐに関西電力のフリーコールに電話。しかし、オペレーター対応は混み合い「翌日以降に」。たまらず、近くの関西電力の営業所に駆け込みました。
 事情を話して調べてもらうと、「関電以外の電力供給会社と契約されているが、接地番号がわかれば通電できる」とのこと。直ちにAさん宅へ引き返し、携帯電話の灯りを頼りに手もとにある郵送物のすべてを確認しました。
 午後5時の営業終了が迫るなか、なんとか関電供給部からの通知を発見。終了5分前に営業所に再度駆け込み、その日のうちに通電してもらうことができました。
 Aさんは涙を流して喜び、これを機に医療福祉生協おおさかの組合員にもなってくれました。
 発見した通知は、大阪ガスで契約していた電気とセットのプランの更新手続きが未了のため、契約を終了し通電停止する、という内容でした。「関電のフリーコールも電気料金を選べるセールスも、世の中全体が高齢者相手には非常に不親切でわかりにくい」と、松山さんは憤ります。

訪問きっかけに劇的改善も

 「高齢者が熱中症になると、回復してもADLがガクンと下がる。本当に怖い」と松山さん。その危険性への家族の認識も低く、時には「オムツ交換が大変だから」と水分摂取を減らす場合さえあることに警鐘を鳴らします。
 他方、松山さんは、昨夏の熱中症訪問調査をきっかけに在宅環境を改善し、生きる気力を取り戻したBさん(90代男性)にも出会いました。老衰で「余命3カ月」と言われていたBさんに、地域の開業医や介護事業所と連携してかかわり、自宅音楽会まで開催。そこには、長年の趣味の音楽やレコードのことを、いきいきと解説するBさんの姿がありました。
 松山さんは、「地域で暮らす高齢者にかかわる人全員で、熱中症への注意喚起をし続けることが必要」と強調します。

地域を守れと20年続く

 「地域から熱中症による死亡者を出さないために」と、大阪民医連は2004年から熱中症訪問調査を行っています。コロナ禍で電話聞き取りが中心でしたが、今年は訪問を再開。県連をあげ各事業所、職場で「気になる患者・利用者」を出し合い、それぞれ独自に工夫して訪問し、安否確認や注意喚起などを行いました。
 さらに今年は、熱中症リスクをより詳しく分析できるよう、質問項目を増やした調査票(自己記入用紙)と返信用封筒を訪問先で手渡し、大阪民医連に郵送してもらいました。寄せられた調査票は800通以上にのぼります。県連医活委員会などを通じて分析し、例年通り、行政交渉やマスコミへの発信に生かしていく予定です。

(民医連新聞 第1792号 2023年10月2日)

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