民医連新聞

2023年10月3日

こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (2)非常時にはイモ尽くしの食生活

 農水省は今年8月7日、「2022年度食料自給率・食料自給力指標」を公表しました。カロリーベースの食料自給率は37・64%で、前年から0・37ポイント低下し、40%を下回るのは13年連続です。
 国内生産だけで供給できるカロリーを示す「食料自給力指標」も過去最低を記録。この指標は、輸入停止時などに国内でどれだけの食料を供給できるか、という潜在生産能力を表しますが、農水省は指標を「米・小麦中心」と「イモ類中心」の食生活の2パターンで示しています。米・小麦中心の場合に供給できるカロリーは、1人1日当たり1720キロカロリーとなり、イモ類中心の場合は2368キロカロリーで、ともに前年度より減りました。
 人が体重を保つために最低限必要なエネルギーは、1人1日当たり2168キロカロリーと言われますが、米・小麦中心の食生活ではこれを20%下回る飢餓水準です。カロリーの確保を優先したイモ類中心の場合でも、わずか200キロカロリー上回っているだけで、労働や運動も難しい飢餓寸前のレベルです。
 それではイザという時に、私たちの食生活はどうなるのか。農水省は、悪夢のような食卓像を示しています(図)。「イモ類中心の食生活」の場合、サツマイモとジャガイモが1日3食、朝に食パン半切れ、夕食にごはん1杯、副食は野菜炒め、サラダか浅漬け。みそ汁は見当たりません。牛乳は4日にコップ1杯、卵は1・5カ月に1個、肉は23日に1皿――。
 前回みたように、家畜の飼料はほぼすべて輸入のため、このような結果になるのです。畜産物はいわば“ぜいたく品”です。しかも、農地が減少しているいま、実際には、イモさえもつくれるかどうかあやしく、輸入がストップしてからあわててイモをつくっても急場をしのげません。
 現在の食料・肥料・飼料の自給率では、もし戦時体制=有事になったとしたら、軍隊にも、「銃後」を守る国民にも食料を供給できず、文字通り「兵糧攻め」にあい、たたかう前に飢え死にさせられてしまうことは必至です。
 次回は、政府・農水省は有事の際に日本の食料政策をどうしようとしているのか、詳しくみることにします。


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1792号 2023年10月2日)

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