副作用モニター情報〈604〉 ベサコリンによる薬剤性房室ブロック
ベサコリン散5%(成分名:ベタネコール)は、低緊張性膀胱(ぼうこう)による排尿障害などに用いられる副交感神経亢進(こうしん)剤です。以前、当モニターでもベサコリンが原因と考えられる誤えん性肺炎の症例を紹介しましたが、今回は薬剤性房室ブロックが起きた症例を紹介します。
症例)90代女性 体重28kg
神経因性膀胱に対してベサコリン45mg/日で内服継続中、発熱、徐脈の精査加療目的にて受診。CTで肺炎、心電図で完全房室ブロックを認め入院となった。ベサコリンによる薬剤性完全房室ブロックと診断され、入院日からベサコリン中止。その後、シロスタゾール100mg/日開始(適応外使用)。第1病日目では脈拍は40bpm台だったが、第5病日目には洞調律に復帰。その後も洞調律を維持し、第16病日目には脈拍は60bpm台で安定した。
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房室ブロックとは、心房から心室への電気的な興奮伝導が部分的または完全に途絶する状態を指します。本症例のような完全房室ブロックは、心拍数が減少、より重度の場合は失神や心不全がみられることもあります。
原因が薬剤によるものである場合は、被疑薬の中止により改善します。薬剤の長期服用中にも発症することや自覚症状がないこともあるため、脈拍数の確認は有用な手がかりになります。特に高齢者は副作用が起こりやすく、コリンエステラーゼ阻害薬であるジスチグミンや認知症用剤(メマンチンを除く)を併用している場合は、ベサコリンの作用がより増強される可能性があるため、注意が必要です。
また、これら以外にも、抗不整脈・β遮断薬・カルシウム拮抗(きっこう)薬などでも房室ブロックが起こる場合があるため、留意しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1792号 2023年10月2日)
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