民医連新聞

2023年9月5日

診察室から 大型「歯科往診車」 20年の軌跡①

 私が明和会に就職したのは1997年10月ですが、その年の4月に行われた歯科診療報酬改定は、歯科往診を大幅に奨励するものとなっていました。
 就職先の中通歯科診療所では本改定に合わせて、当時県人口の高齢化が全国一に向かってひた走っていたことにより、新設ラッシュであった介護老人保健施設や特別養護老人施設の入所者を対象とした歯科診療を行うべく、観光バスを改造した「歯科往診車」を購入していました。車両内部はほぼ一般歯科診療が可能な設備が搭載され、歯科ユニット1台、車いすの患者用の設備1台、デンタルならびにパノラマX線がありました。その大型車両を歯科医師1人、歯科衛生士1人、歯科技工士1人、事務1人の4人編成で、週5日のフルタイム、最盛期には10施設以上に往診していました。診療所のシフトの関係で、3人の歯科医師が各曜日を分担しつつ診療を行っていて、大型車両での移動のため、大型車両免許を有する事務が配置され、歯科技工士2人が新たに大型の運転免許を取得して、分担して運行していました。
 報酬改定から数年は、歯科診療報酬においてまれに見る高配点であったこともあり、全国でさまざまな医療法人や歯科診療所が、それぞれその規模はまちまちではありましたが、「歯科往診車」を仕立てて往診するという「歯科往診ブーム」とでもいう時代でした。
 その中にあって、観光バスサイズの往診車は全国でも珍しく、さらに大型免許を取得した歯科技工士の一人が女性であったことから、『いつでも元気』をはじめさまざまな地元メディアの取材を受けました。また、バスの両サイドには診療所のマスコット、「ティースメイト」という歯ブラシを持ったワニがデザインされていました。施設に向かう際には市内を走行するのですが、子どもたちにはカエルに見えたらしく、何度か「カエルのバス見せてください」という問い合わせがあったことを思い出します。(次号に続く)(東海林克、秋田・大曲中通歯科診療所、歯科医師)

(民医連新聞 第1790号 2023年9月4日)

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