民医連新聞

2023年7月18日

相談室日誌 連載544 成年後見制度手続きに時間 身寄りなき患者に柔軟な対応を(宮崎)

 Aさんは70代男性、一人暮らし。パチンコ店で意識朦朧(もうろう)としているところを公立病院に救急搬送され、脳梗塞の診断でそのまま入院。意思疎通もはかれないため、一人暮らしに戻るのは困難と判断され、退院調整目的で当院の地域包括ケア病棟に転院してきました。身寄りがないので成年後見制度を申請中で、次の療養先は療養型病院に決まっているという申し送りでした。当院への転院に付き添ってきた公立病院地域連携室の看護師長から、手持ちの現金11万円と通帳3冊の管理を引き継いだものの、年金額は不明。通帳を確認すると、想像を上回る貯蓄額と株取引の履歴があり、生活保護対象者ではありませんでした。
 ところが、成年後見制度は申請したばかりで、次の転院予定の病院からは「後見人が決まれば受けるが、決まっていないのであれば転院は受けられない」と断られてしまいました。また、成年後見人が決まるまでは通帳から現金の引き出しはできないので、未収を恐れてどの介護施設からも入所を断られ、どこにも退院できない状況になっていました。Aさんが住んでいた借家も家賃の滞納があり、家主より退去してほしいと言われていましたが、成年後見人が決まるまでは現状維持しかないと市は回答。前医では本人に承諾を得ながら、手持ちの現金から入院費を支払ってもらったようでしたが、当院に転院してからは本人と会話が成立せず、手持ちの現金から入院費を支払ってもらうのは遠慮せざるを得ない状況でした。
 このままでは当院で未収金を抱えたまま、どの施設にも退院できないため、市役所の成年後見係と担当地区の地域包括支援センターの職員を呼んでカンファレンスを実施。本人を保護する目的で、行政の措置制度による扱いとして特別養護老人ホームなどに入所させてもらえないかと交渉し、特養に入所。その後、成年後見人が決まり、入院費の支払いも完了しました。
 今後、身寄りのない患者は増えていくと言われていますが、成年後見制度は手続きに半年~1年かかるのが現状です。身寄りがなくても入院や施設入所ができるように、行政にも柔軟にかかわってもらいたいと願います。

(民医連新聞 第1787号 2023年7月17日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ